【きだてたく文房具レビュー】マンダラート思考法を実践できる付箋ノート
“意識高い系”の文房具使いこなし記事、というのをウェブでたまに見かける。よく出てくるのは「アイデアを創出するにはノートをこう使え」的なやつで、縦罫がいいとか方眼がいいとか、スケッチブックを広く使えとか紙面を9マスに分割して使えとか、まぁいろいろとあるものだと感心してしまう。
ぶっちゃけ、アイデア出しなんて個人の思考の都合なので、どれがハマるかは人それぞれなんだけど、ともかく皆さん、何かを思いつくということに苦労しているようだ。
で、そういう人にもしかしたら役に立つかもしれない“アイデア創出専用付箋”が発売されているので、ご紹介したい。(先に述べたように、ハマるかどうかは人それぞれだが。)
ぺんてるの「くみかえノート」は、リングノート型の台紙にセットされた3×3の9マス付箋だ。基本的には、ワークショップなど少人数でアイデアを持ち寄って討議するためのツールなのだが、この「9マス」と「付箋」の部分が、くみかえノートにおけるアイデア創出メソッド、ということになる。
使い方としては、まず中央のオレンジ色の付箋にアイデアの“起点”を書き込んで、そこから思いつきをグレーの付箋に“拡散”させていく。または、最初にグレー付箋に断片的な発想を書き込んで最後にオレンジに集約する、という方向でもいいだろう。いわゆる、アイデアの拡散/集約法というやつである。一般的には「マンダラート」と呼ばれる思考法に近い。
まず起点として「猫が最高に喜ぶおもちゃ」を考えてみよう。そうしたら、周囲のグレー付箋に思いついたこと、猫が喜ぶこと、従来の猫おもちゃのアイデア、などを書き込んでいく。
個人である程度の思考が進んだら、それをみんなで持ち寄ってホワイトボードや壁面にどんどん貼っていく。付箋なので、近いアイデアを寄せたり、実現が難しいものは遠ざけたり、という感じで積極的に貼り替え・貼り直しをしていこう。
……とまぁ、こんな感じですると、なんとなくアイデアのアウトラインが見えてくるのではないだろうか。
くみかえノートが面白いのは、こういった使い方がやりやすいように、製品としての機能をチューンしている、というところだ。
例えば、台紙中央にリングがないのは、ワークショップ中に立ったまま台紙を抱えて書き込みがしやすいように作られているから。台紙自体がしっかり硬めなのも、立ったままの筆記を前提にしているからだろう。
最も機能的に面白いのは、付箋の粘着部分。一般的に付箋の粘着部といえば上側になるが、くみかえノートの粘着部は、左右の両端に振り分けられている。これによって、壁面に貼り付けた時にカールせず見やすいようになっているのだ。
ちょっと特殊なかまぼこ形をしているのは、この左右粘着でも台紙から剥がしやすいように考えられているのだろう。
さらに、くみかえノートは専用アプリ(iOS専用)と組み合わせて使うこともできる。壁面に貼った付箋を撮影すると、自動的に付箋が切り出され、アプリ内で付箋の移動・再配置が可能になるのだ。
つまり、ワークショップ後にあらためて「このアイデアはこっちだな」「これは省こう」など、思考を進めることができる、ということである。また、別の画像から付箋を持ってきて結合させたり、配置した付箋をPowerPointのデータに変換することも可能だ。
ただ、実は残念ながら、このアプリの出来があまりよろしくない。付箋をタップして移動させるとやたらカクカクとした動きでもどかしいし、付箋同士が重なり合うと、下の付箋が完全に隠れて見えなくなってしまう(しかも重なりの上下は変更できない)。これでは思考が進むどころか、ストレスが溜まるばかりである。
PowerPointのデータにできるといっても、要は単なる個別のjpgデータを配置しただけのものなので、手書きの内容をOCRにかけてテキスト+枠のデータに変換する、といった実用的なものではない。
これまでに発売されているぺんてるのスマホ連動型文房具……「アンキスナップ」や「スマ単」は、どれもアプリがよく練られた実用的なもの揃いだったので、それと比べて正直な意見を言えば、バージョン0.3、ぐらいの感じだ。
付箋自体は、使い方に沿って機能面がよく考えられているだけに、これが残念。できれば一早くのバージョンアップを望む次第である。