ミラーレスカメラに何を期待するかは人それぞれですが、なかでも「画質」を重視する人は多いはず。最近はどの製品も高画質といわれていますが、実際にどのくらいの差があるのか。いま人気のエントリー向けミラーレスカメラ5台を比較してみました。前回の「外観&基本仕様編」に続き、徹底比較の「実写編」をお伝えしましょう。
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※本記事内の価格は、2018年11月現在の税込み価格です
【テスト条件】晴れた日の屋外と室内で実写チェック
用意したカメラは、オリンパス「OLYMPUS PEN E-PL9」、キヤノン「EOS Kiss M」、ソニー「α6300」、パナソニック「LUMIX GF10/GF90」、富士フイルム「FUJIFILM X-T100」の5モデルです。発売時期はまちまちですが、いずれもローエンドからミドルクラスの間に位置する各社の売れ筋モデルです。
比較撮影のためのテストは2種類。ひとつは晴れた日の屋外風景です。レンズキットに付属する標準ズームを装着し、ズームをワイド端に、絞り値をF8に、ISO感度を最低感度にそれぞれセットし、そのほかの機能は初期設定で撮影しました。このテストでは、主に発色傾向や細部表現力をチェックします。
もうひとつは、室内での静物撮影です。同じくキット付属の標準ズームを使用し、35mm換算の焦点距離を約60mm相当の位置に、絞り値をF8にセットしたうえで、感度を1段ずつ変えながら撮影しました。ノイズリダクションなどの機能は初期設定の状態です。このテストでは、高感度の画質をチェックします。
なお、どのモデルでもカメラ内の仕上がり調整機能によって、発色傾向やコントラスト、シャープネス、ノイズ低減などの度合いはカスタマイズができます。またRAWで撮影し、現像時に細かく調整することも可能です。今回のテストは、あくまで初期設定でのJPEG画質の比較となります。
また、今回試した5台のセンサーサイズは、OLYMPUS PEN E-PL9とLUMIX GF10/GF90の2台が4/3型(約17.3×13mm)で、残りの3台がAPS-Cサイズ(約23.5×15.6mm)となっています。一般的には、画素数が同じである場合、センサーサイズが大きいほど高感度などの画質に有利といわれています。ただ今回は、4/3型のモデルは1600万画素クラス、より大きなAPS-Cサイズのモデルは2400万画素クラスであるため、センサーサイズによる画質の違いはあまり大きいとはいえません。
※本記事内の画像はリサイズしており、実データではありません
【その1】
クセのないナチュラルな発色傾向! オリンパス「OLYMPUS PEN E-PL9」
【実写テスト①晴天屋外】
屋外の風景撮影では、見た目の印象に近いナチュラルな発色が得られました。シャープネスは普通。レンズの解像性能については、周辺部はややソフトですが、中央部はくっきりと描写できています。
【実写テスト②室内】
室内の静物撮影では、まずまずバランスの取れた高感度画質を確認できます。ISO6400は、それ以下の感度に比べると細部がややつぶれていますが、ノイズは目立ちません。ISO12800や25600になると色ノイズが増え、細部はさらに甘くなります。
【その2】
クリアで見栄えのする青空を表現! キヤノン「EOS Kiss M」
【実写テスト①晴天屋外】
屋外の風景撮影では、青空の部分が明るく、ややマゼンタに寄った色合いとなりました。リアルとはいえませんが、クリアで抜けのいい印象を受けます。シャープネスはやや強め。レンズの解像性能は、周辺部が少々甘めです。
【実写テスト②室内】
室内の静物撮影では、全体的にノイズ低減処理が控えめであり、ISO6400でも暗部を中心にザラザラとした輝度ノイズが目立ちます。その代わり、ディテール描写は良好であり、被写体の表面にある小さなキズまで確認できます。
【その3】
暗部から明部までをなめらかに再現! ソニー「α6300」
【実写テスト①晴天屋外】
屋外の風景撮影では、暗部から明部までの滑らかな階調描写と、クセのないノーマルな発色を確認できます。シャープネスは控えめ。画像周辺部になるほど解像感は低下します。
【実写テスト②室内】
室内の静物撮影では、感度を高めるほどにノイズが増え、同時にノイズリダクションによって細部がつぶれていきます。その度合いは標準的。2年以上前に発売された機種ですが、他社の最新モデルに比べて高感度画質で見劣りする点は特にありません。
【その4】
メリハリを感じる高コントラストな写り! パナソニック「LUMIX GF10/GF90」
【実写テスト①晴天屋外】
屋外の風景撮影では、メリハリ感のある高コントラストな写りが得られました。青空は濃厚な色となり、晴天らしい力強さを感じます。レンズの解像性能については、中央部から周辺部まで精細に描写できています。
【実写テスト②室内】
室内の静物撮影では、ノイズリダクションが強めの傾向を感じます。ISO6400の段階ですでに細部がつぶれています。シャープネスも強め。ISO12800やISO25600は、ザラザラとした輝度ノイズは抑えられていますが、色ノイズがやや目立ちます。
【その5】
画面周辺部までシャープに解像! 富士フイルム「FUJIFILM X-T100」
【実写テスト①晴天屋外】
屋外の風景撮影では、全体にややマゼンタ寄りの色合いとなりました。実際の色に忠実とはいえませんが、青空はいっそう鮮やかになって見栄えがします。シャープネスは強め。画面隅までくっきりと再現できるレンズ性能も良好です。
【実写テスト②室内】
室内の静物撮影では、どの感度で比較しても、今回の5台のなかでは最も低ノイズの仕上がりとなりました。シャープネスは強め。ノイズ低減処理による細部のつぶれは最小限に抑えられています。
【まとめ】差はわずかだが、バランスの取れたX-T100に好印象
トータルとしては、厳密に見なければわからない小さな違いとはいえ、それぞれの機種の個性が反映された実写結果となりました。
屋外撮影では、画面全域で高い解像感を維持しているX-T100が個人的には好みです。発色については、X-T100のほか、クリアで見栄えのいいEOS Kiss MやLUMIX GF10/GF90が万人受けしやすい色といえます。OLYMPUS PEN E-PL9とα6300は、クセの少ない標準的な仕上がりです。
室内撮影に関しても、ノイズ低減と解像感のバランスが取れたX-T100に好印象を受けます。そのほかの4台は標準的な高感度画質です。室内スポーツの撮影など、光量の乏しい場所で被写体ブレを防ぎたい場合にはISO6400以上の画質に注目するといいでしょう。
次回は、各モデルの撮影機能を見てみましょう。
協力:楽天市場