強打の捕手として千葉ロッテマリーンズで16年間プレーし、2度の日本一に貢献。2006年のWBCでは正捕手として世界一&大会ベストナインも受賞した里崎智也さんが、読者の悩みをズバッと解決する。第7回目は「守る」と「変える」の難しさについて。
【今回のお悩み】
先代である父から飲食店を受け継ぎました。自分なりの味にシフトしていきたいのですが、古参の客を失ってしまいそうで悩んでいます。
父から最近飲食店を継いで、店主をやっています。これまで修行してきたことを生かし、自分なりの味にシフトしていきたいのですが、古参の客が離れていくのが怖くてなかなか思い切れません。父は私の自由にやっていいと言ってくれますが、「守る」と「変える」との狭間で葛藤しています。どうすればいいでしょうか。
(40代・男性・自営業)
良いものを残すことでリスクを回避できる
店主が変わったいまも古参のお客さんが店に通ってくれるということは、きっと看板となる“エースメニュー”があるのでしょう。ならば、そのメニューを残しながら、自分なりの味といえるメニューを新しく作れば良いのです。例えば中華料理店だとして、しょうゆラーメンが古参のお客さんに人気のあるメニューであるならば、そのまま継続する。それに加えて、自分流のしょうゆラーメンも作れば良いじゃないですか。しょうゆラーメンが2品あってダメということはないはずです。
「元祖・しょうゆラーメンは昔ながらの味がウリです。新・しょうゆラーメンは最新のトレンドを取り入れました。ぜひ食べ比べてください!」
こうすれば、古参のお客さんを失うことなく、新規のお客さんを獲得できる可能性が出てきます。現在お店で出しているメニューは、すべてが好調というワケではないでしょう。人気メニューがあれば、週に数人しか頼まないメニューもあるかもしれません。不人気のメニューは、無理に残す必要はないでしょう。完全に刷新しようとするとリスクが高まりますから、良いものは残しつつ、悪いものから変えていく。この考え方は「リスクマネジメント」の基本です。
優先すべきはお店の利益になること
これは飲食店に限った話ではありません。どの世界でも、トップが変わったときにはそれまでのものを否定するところから入りがち。自分の権力や地位、能力をアピールするために、良い悪い関係なく、前任者が関わっていたものをすべて廃止してしまうケースは少なくありません。しかし、結果的にそれが企業や店舗の成長を妨げることが多いのも事実。プロ野球の世界でも、球団のオーナーやゼネラルマネージャーが変わるとファンの方から好評だったイベントや企画が理由もなくいきなり廃止されてしまうことがあって、そのたびに選手としては困惑したものです。従来からある良いものや制度は残しつつ、自身のオリジナリティをプラスするのがベター。それを地道に続けていくことで、いつの間にかすべてが自分のオリジナルになっているはずですよ。
新任者はどうしても自分をアピールしたくなるものですが、第一に考えるべきはお客さんの満足度と、企業や店舗の利益と繁栄。質問者さんも、そのことは十分に理解しているような気がします。だからこそ、現状のメニューを精査して、どれを残すべきか、どれをやめるのか、何を新しく始めるのか、あらためて考えてほしいですね。
「守る」ことと「変える」ことは相反しているようで、実は両立してこそ価値があるのです。
【これで下克上せよ!】
「「守る」ことと「変える」ことは両立させてこそ価値がある!」
今月の野球“知っ得”ネタ!!
ファンサービスを開拓したボビー・バレンタイン監督
ボビー・バレンタインは、2004年に千葉ロッテマリーンズの監督に就任(2度目)。ベンチで指揮を執るだけでなく、グラウンドで社交ダンスを踊ったり、長時間のサイン会を熱心に行ったりと、ファンサービスを精力的に開拓した。
【PROFILE】
里崎智也さん
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工、帝京大を経て98年ドラフト2位でロッテに入団。05~10年まで6年連続2桁本塁打を放つなど、強打の捕手として活躍した。現在は野球解説、講演活動、執筆などマルチに活躍中。
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文/山西英希 撮影/佐坂和也 ヘアメイク/宮田裕香子 スタイリング/佐々木誠 題字/道口久美子
衣装協力/ザ・スーツカンパニー 新宿本店