「名探偵 荒馬宗介」は、学研の学年誌「学習」4〜6年で1975年〜1983年、1997〜1998年までの長きに渡って連載されていた推理学習まんが。当時の読者が「○年の学習」を懐かしむ話題でも必ず名前があがるほど、根強い人気をほこっている作品のひとつだ。
復刻・単行本化を望む声も多く、これを受け学研では、電子書籍で復刻する「もう一度見たい! あのころの学研」シリーズで、「名探偵 荒馬宗介」を現在までに2巻配信。以後も順次、配信予定だ。
ところで、主人公の荒馬宗介といえば、トレンチコートにボサボサ髪、ブタッ鼻にくわえタバコという、ハードボイルドなイメージが強いキャラ。おそらく当時の読者のみなさんも、そんな記憶があるのではないだろうか。
しかし! 漫画のキャラクター・デザインが、連載の過程で変わっていく(長期連載であるほど)というのはよくある話。荒馬宗介も例外ではないのだ。そこで、当コラムでは、荒馬宗介のキャラクター・デザインの変遷をたどってみよう。題して「荒馬宗介のデザイン、あらま〜そうかい」。
1971年「6年の科学」では、そうかい!
まずはこの画像を見ていただこう。
ブタッ鼻じゃない! トレンチコートじゃない! これは自分の記憶と違う! ……そんな声も聞こえてきそうだが、実はコレ、「○年の学習」で連載される4年前の1971年、姉妹誌「6年の科学」で5回にわたって連載された『名探偵★荒馬宗介』(星マークが付く)なのだ。「学習」連載前の、いわばプロトタイプといえるだろう。
なお、この作品は『名探偵 荒馬宗介』1〜2巻に「おまけコンテンツ」として収録している。
1975年「4年の学習」では、そうかい!
それでは、プロトタイプから4年後、本格的に連載が始まることとなった「4年の学習」4月号での荒馬宗介は、どうだったのか……。それが、この姿!
プロトタイプのそばかすは踏襲されているものの、ダークスーツはコートに変更、鼻もブタッ鼻と、一般にイメージされる荒馬宗介に少し近づいたが……なんだか野暮ったいし、出っ歯。これではちょっと人気が出なさそうな印象だ。
ちなみに、荒馬宗介の職業といえば、漫画家で兼業探偵だが、この連載第1回では刑事という設定。作品タイトルは「怪盗ガンモドキ」だ。「名探偵 荒馬宗介」というタイトルになるのは、10月号から。職業も探偵になり、出っ歯もない。転職を機に歯も矯正したのかもしれない。
1976年「4年の学習」では、そうかい!
翌年連載では、口のまわりに1975年版の雰囲気を残してはいるが、かなり定番のイメージに近づいてきた。見知ったあの荒馬宗介に脱皮するのはもうすぐという感じだ。
1978年「4年の学習」では、そうかい!
そして、完成〜! やっぱりこのデザインが一番しっくりくる。これぞ荒馬宗介。
1997年「6年の学習」では、そうかい!
ちなみに、『名探偵 荒馬宗介』は1983年に連載終了してから、いったいどんなサプライズが起こったのか、1997年に復活。内容は過去の作品の焼き直しで、すべて新たに執筆されている。
その姿は、一見すると全盛期のままの姿だが……お気づきだろうか? そう。くわえタバコで煙プカプカだったヘビースモーカーの荒馬宗介だったが、学年誌ではタバコはコンプライアンス的にNG。時代の流れには逆らえなかったのだ。
……というわけで「人に歴史あり」、キャラにも歴史あり。荒馬宗介の変遷を駆け足で見てみた。もちろん他のおなじみのキャラも、初登場ではデザインや名前が違うなどの歴史がある。
今後も「あのころの学研」シリーズでは、「名探偵 荒馬宗介」の続刊が配信予定だ。ぜひ、あなたの目でしっかり確認していただきたい!
文=こざきゆう
<書籍紹介>
「名探偵 荒馬宗介①~②」
絵:山口太一
原案:桜井康生
「○年の学習」の連載まんがが、40年振りに電子書籍で復活!トレンチコートとくわえタバコがよく似合う、名探偵荒馬宗介(あらまそうかい)が難事件をスパッと解決する、山口太一先生の大人気作。1巻は1978~80年、2巻は1979~81年の「4~6年の学習」に連載された作品と、貴重な初期のプロトタイプ作品を収録。
<関連サイト>
「あのころの学研」公式サイト
(http://ebook.gakken.jp/manga_hukkoku/)