2018年はワイヤレスオーディオ市場が急拡大した1年でした。なかでも、左右のイヤホンがケーブルでつながっていない「完全ワイヤレスイヤホン」は、市場拡大をけん引した注目アイテム。そんな右肩上がりのワイヤレス市場に、最新のテクノロジーを携えて参入する新規メーカーも続々登場しています。
今回は、新進気鋭のブランドMavinが発売した完全ワイヤレスイヤホン「Air-X」のレビューをお届けします。
この「Air-X」の最大の特徴は、クアルコムの最新チップ「QCC3026」を採用していること。これにより、イヤホンだけで最長10時間の連続再生を実現したほか、クアルコムのSoC「Snapdragon 845シリーズ」を搭載したAndroidスマートフォンなどと組み合わせることで、「Qualcomm TrueWireless Stereo Plus」(TWS Plus)という次世代のワイヤレス接続方式を利用することが可能になります(※)。
※:再生機のファームウェアの更新が必要。2019年1月7日時点では対応ファームウェアは未配信
次世代の通信方式で音が途切れない
このTWS Plusは何がすごいかというと、完全ワイヤレスイヤホンの弱点でもあった通信安定性が大きく改善されると見込まれていること。これまでの完全ワイヤレスイヤホンは、右か左のどちらかが親機となってスマホなどと通信し、親機からもう一方の子機にデータを送るというリレー方式をとっていました。つまりスマホ→親機→子機というようにデータが伝送されているのです。
完全ワイヤレスイヤホンを耳に装着したとき、親機と子機のあいだには人間の頭がありますが、水分を大量に含んだ人間の肉体は電波を通しにくく、通信安定性を阻害する要因のひとつにもなっていました。この問題を解決するため、親機→子機間をNFMI(Near Field Magnetic Induction/近距離磁気誘導技術)という、障害物に強い方式を用いて通信する機種も開発されています。
クアルコムが提案するTWS Plus方式では、スマホなどの再生機から左右のイヤホンそれぞれに音声データを伝送することができるため、親機と子機の区別が不要となり、ワイヤレス接続時の通信安定性も向上されるとしています。
「Snapdragon 845シリーズ」を搭載したAndroidスマホは、ソニーモバイルの「Xperia XZ3」やサムスン「Galaxy S9」、シャープ「AQUOS R2」など続々と登場していますが、まだTWS Plusに対応するためのファームウェアアップグレードが用意されておらず、現時点ではTWS Plus方式を利用はできません。しかし、近い将来にファームアップで利用できるようになることは間違いないので、いまのうちに「Air-X」を選択しておくのもアリでしょう。ちなみに、TWS Plusに対応していない機器でも、通常の完全ワイヤレスイヤホンとして使用できますのでご安心ください。
充電ケースは標準的なサイズもややチープな印象
本機はすでに国内のECサイトなどで発売されており、実売価格は1万9850円。完全ワイヤレスイヤホンは、安いものなら5千円台、オーディオメーカーのハイエンドなら3~4万円台のものまであるので、ミドルクラスの価格帯に属するといえるでしょう。ライバルとなるのは2万円前後の「EARIN M-1」やソニー「WF-SP700N」、オーディオテクニカ「ATH-CKR7TW」あたりでしょうか。
本機は一般的な完全ワイヤレスイヤホンと同様に、専用の充電ケースとワイヤレスイヤホンがセットになったもの。基本的に、イヤホンを使用しないときはケースに収納して持ち運ぶことになります。
付属の充電ケースは、2万円近いミドルクラス機種にしてはプラスチックの質感が少々チープな印象。完全ワイヤレスイヤホンはケースを必ずセットで持ち運ぶものなので、所有欲を満たしてくれるケースデザインかどうかは重要な要素だと思います。同クラスのライバル機はもう少し高級感を漂わせているので、ケースの素材やデザインはもっと頑張ってほしいところ。
サイズは手のひらに収まるコンパクトさで、シャツやジャケットの胸ポケットにも入れられます。ケースサイズは公表されていないようですが、手元の物差しで測ったところ、ざっくり横5×縦5.5×厚さ2cmくらいでした。重量はイヤホンを格納した状態で約65g。
イヤホンはサイズが公表されており、約17×18×15mmで、重量は1個約4.5g。際立って大きくも小さくもない、という感じでしょうか。ケース、イヤホンのいずれのサイズ・重量とも、完全ワイヤレスイヤホンのなかでは標準的なものだと思います。