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2018/12/27 8:00

【西田宗千佳連載】「100億円作戦」の狙いと勝算

「週刊GetNavi」Vol.74-1

 

大きな買い物を誘発した大胆なキャンペーン

この12月に、家電などの大きな買い物をしたという人は意外なほど多いのではないだろうか。理由は、ソフトバンクとヤフーが合弁で展開する決済サービス「PayPay」が、大胆なキャンペーンを展開したからだ。PayPayはスマホアプリにバーコードを表示して決済するような、いわゆる「モバイル・キャッシュレス決済」のひとつ。LINEや楽天、NTTドコモなど多数のプレイヤーが入り乱れ、2019年にはメガバンクも乗り出してくる予定だが、その機先を制するように、PayPayは巨大なキャンペーンをしかけた。

 

まず、期間中、決済金額の2割がPayPayのアカウントに、無条件で還元される(還元される上限は1回につき5万円まで)。そして、利用者の状況に応じ、「10人に1人」から「40人に1人」の利用者は、その場で決済金額の全額(還元される上限は10万円)が戻ってきて実質タダになる、というものだ。こうしたことが、「100億円」とされる還元額に達成するまで続く。コンビニで100円のものを買っても、量販店で10万円のパソコンを買っても同じく「2割還元」で、しかも運が良ければ全額が返ってくる。ならばチマチマ使うのでなく、家電などの大型製品に使ったほうがいい。

 

というわけで、12月4日のキャンペーン開始時には、ビックカメラやヤマダ電機などの家電量販店に人があふれ、時ならぬ「特需」を生み出した感がある。「100億円」を還元したら、その時点でキャンペーンが終了してしまうという心理的な効果もあってか、日に日にキャンペーン利用者は急増した。

 

キャッシュレスの利便性を実感してもらうのが目的

しかし、PayPayのキャンペーンは本当にうまい。SNSには、PayPayで「全額キャッシュバックされた」人の決済画面が毎日のように流れてくる。それを見ていると、「自分も当たるのでは」「買うなら大きな金額のものを買わないと」という気分にさせられる。

 

だが確率論でいうと、全額キャッシュバックはおまけ程度に考えておきたい。もっとも当たる確率が高い、ソフトバンクやワイモバイルの回線利用者(当選確率10分の1)が10回買い物をしたら、何回無料になるだろうか? 「1回くらいは無料になりそう」と思うだろうが、それは間違い。確率的には、「10回買っても1度も当たらない人」が全体の約35%もいる。40分の1だったら約78%の人は一度も当たらない。とはいえ、額面の20%のポイント還元は平等に行われるので、過剰に期待せず、必要なものを買うのが賢明だ。

 

また、このキャンペーンで還元されるのは「現金」ではなく、「PayPayで使えるチャージ金額」なのもうまいところだ。結局、その金額分も最終的にはPayPayでの買い物に使われる。こうして買い物回数が増えて「キャッシュレスは便利」と思う人がいれば、そして、そういう人々向けにPayPayを導入する店舗が増えれば、彼らの目標は達成される。

 

では、なぜここまで大胆な策をとってモバイル決済に挑むのか? どうして銀行など多数の企業がモバイル決済で争うのか? そのあたりの解説はウェブ版で行うことにしよう。

 

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