平成を振り返ってみると、多種多様な掃除機や洗濯乾燥機が生まれてきたことがわかります。いまや誰もが知っている「ドラム式洗濯機」や「ななめドラム」「サイクロン式掃除機」などの誕生を今改めて振り返ってみましょう。
【解説する人】
家電コーディネーター
戸井田園子さん
大手ハウスメーカーで商品企画などを担当。性能やデザイン、価格を見極める技術と消費者目線を忘れない視点で、製品を厳しく評価します。
家事家電は平成期にその勢力図が激変!
掃除機と洗濯機(洗濯乾燥機)は、平成になってその勢力図が大きく変わった生活家電のひとつ。掃除機分野では、長いあいだ紙パック式が主流でしたが、平成10年代にサイクロン式が台頭してきました。
「火付け役がダイソンのDC12。7、8万円の高価格ながら大ヒットしました」(戸井田園子さん)
その後、同ジャンルではダイソンが牽引するかたちでコードレススティックがシェアを拡大。さらに、ルンバを筆頭にロボット掃除機も着実に勢力を伸ばしてきました。
洗濯機ジャンルではナショナル(現パナソニック)の〝ななめドラム〟発売が大きなトピック。腰を屈めずに洗濯物を出し入れできるななめドラムの登場が、ドラム式普及のきっかけとなりました。
「乾燥時の消費電力もヒートポンプ式の発達で低減。花粉症対策で外干しが減ったことも背景です。最近は、洗剤自動投入機能や天気情報とリンクした洗濯サポート機能など、クラウド連携の進化が目立ちますね」(戸井田さん)
<掃除機編>
【名機01/平成2年】ファジー家電ブーム到来
※写真なし
ナショナル(現パナソニック)
ファジー掃除機
MC-S72VPK
ファジー理論を応用した初の掃除機。管に吸い込まれるゴミの量を赤外線で検知、ファジー理論を使ったマイコンがゴミ量に応じて吸引力を約40〜260Wで自動制御しました。
【平成豆知識】
ファジー家電とは?
曖昧を意味する「ファジー理論」を制御に取り入れた家電。洗濯機の場合、光センサーで水が汚れる速さを検知。汚れの程度や質を見極めることにより、これまで人間が勘で決めていた洗濯時間を洗濯機自身が自動的に設定してくれました。
【名機02/平成19年】ロボット掃除機市場を作った大ヒットモデル
アイロボット
ルンバ500シリーズ
自動充電・スケジュール機能など主要機能を搭載し、人工知能AWAREを含むすべての性能が向上。現在のルンバの礎を作ったモデル。日本を含む世界中でベストセラーとなりました。
【名機03/平成23年】国産サイクロン式掃除機の市場を切り拓いた
東芝
トルネオ
VC-CG510X
サイクロン機構採用のトルネオ初号機。独自の集塵機構で吸引力を99%維持することに成功しました。ワンタッチゴミ捨て機能など使い勝手もよく、以降のシリーズ人気の礎となりました。
【名機04/平成25年】日本の家を意識しより小型化・静音化
ダイソン
DC48 タービンヘッド
日本の住環境に合わせ、前機種より本体を30%小型化、運転音を40%低減。コンピュータ制御の高性能モーターでパワフル吸引を実現しました。独自のボール型車輪で走行も安定しています。
【当時の印象】
ダイソンの大ヒットで各社が続々とサイクロンを投入
「まさにサイクロン旋風が吹き荒れた時期。ダイソンに負けじと国内メーカーがやっきになり続々とサイクロン式を開発したのが印象的でした」(戸井田さん)
【名機05/平成28年】当時、ダイソン史上最大の売り上げを残した名機
ダイソン
Dyson V8
V8モーターの新採用とフラフィヘッドの継続採用により高いゴミ取り力を発揮。最大運転時間も40分と、メイン掃除機として十分な性能を獲得した大ヒットモデルです。
<洗濯乾燥機編>
【名機01/平成2年】「ファジィ制御」で洗濯の加減を自動調整
東芝
インバーターファジィ制御
全自動洗濯機 AW-50FV2
日本で初めてDCインバーターモーターを採用。インバーター制御でモーターの騒音や振動を低減。ファジィ制御で水流や脱水回転数を変えることが可能で、デリケートな衣類も洗えました。
【名機02/平成9年】ついに登場した国産初のドラム式洗濯乾燥機
ナショナル(現パナソニック)
洗乾ランドリーム
NA-SK60C
「洗濯から乾燥まで全自動」という洗濯文化を提案し、業界で初めて日本で開発・生産したドラム式洗濯乾燥機。「マイルドもみ洗い」など、日本の洗濯事情に合わせた機能を搭載しました。
【当時の印象】
欧米の家電っぽい外見がオシャレ
「欧米への憧れもあり、当時、ドラム式洗濯乾燥機はちょっとオシャレな家電というボジションでしたね」(戸井田さん)
【名機03/平成12年】DDインバーターモーターが当時、究極の静音運転を実現
東芝
ホームランドリー銀河 21TW-F70
ベルトやギアのないアウターローター方式DDインバーターモーターを搭載。当時は業界で最も静かなドラム式で、外寸を大型化せず洗濯容量7kgも実現しました。
【名機04/平成15年】年間20万台売れた世界初のななめドラム
ナショナル(現パナソニック)
ドラム式洗濯乾燥機 NA-V80
世界初の「ななめ30°ドラム」採用モデル。ドラム槽をななめにして洗濯物の出し入れがしやすくなり、使用水量も削減しました。年間約20万台もの販売を記録!
【名機05/平成18年】空気で衣類を洗う独自技術が話題に!
三洋電機
AQUA AWD-AQ1
世界初の空気(オゾン)で衣類を洗う「エアウォッシュ」機能を搭載。毎日は洗いづらいスーツや学生服なども除菌・脱臭できることから、高評価を集めました。
掃除機・洗濯機以外ではコチラもチェック!
「クリーン家電」の筆頭格、空気清浄機は次第にスタイリシュに!
室内のハウスダストや花粉などを除去する空気清浄機は、平成に入り一気に普及。日本では加湿機能付きが人気ですが、ブルーエアやカドーなど、高性能でデザイン性も高い空気清浄特化型も“憧れ家電”として人気を博しています。
【平成22年】
ブルーエア
650E
空気清浄機の国際的指標となるCADR値(※)で最高値を記録。独自フィルターで高い汚れ除去率と高速清浄を両立。
【平成24年】
カドー
AP-C700
日本製品で初のCADR値(※)世界1位を認証。光触媒でフィルターに吸着したウィルスやニオイを分解、フィルターが制御。
【平成27年】
ダイソン
ピュアクール
同社の羽根のない扇風機に空気清浄機能を搭載。「360°グラスHEPAフィルター」でPM0.1レベルの超微粒子も除去します。
※:Clean Air Delivery Rateの略で、米国家電協会(AHAM)が定めた空気清浄機の集じん性能を図る国際基準。空気清浄機が1分間あたりに供給する清浄な空気の量を表します
文/湯浅顕人、平島憲一郎