Vol.75-4
コンビニのレジをなくしていく過程では、画像認識を中心としたAI技術の活用が必須である。単に「無人レジ」を実現するだけなら難しくないが、「快適で誰もが常用したいと思う無人レジ」を作るには、画像認識による商品認識と自然なキャッシュレス決済の仕組みが必要というわけだ。Amazonが強いと言われるのは、すでにこの両方を手にしているから、といっていい。
では、レジなしコンビニは、「省力化」以外の価値を産まないのだろうか? もちろん違う。むしろ、いまのコンビニが抱えている多くの問題点を解消する可能性を秘めている。
リアル店舗の抱える問題は、「顧客の購買行動を分析し、経営に生かせない」ことにある。レジでの販売数量と仕入れ数の変化は把握できる。だが、いまやオンラインストアにはより多くの情報が集まっており、リアル店舗は不利な立場にいる。
オンラインでは、人が購入する際にどのような行動をとったのか、というデータが取得できる。主だった情報は、商品を選ぶ時にどのような製品と比較したのか、買うまでにどのくらいの時間をかけたのか、といったところだ。こうした情報がわかっていると、競合製品を含めた仕入れやプロモーション戦略に役立つ。
これに対して、レジなしコンビニであれば画像認識から、「買う時になにと見比べたのか」「買うつもりで手にとってから、棚に戻したのか」「入店してから買うまでの時間や移動導線」といった情報が把握できるようになる。結果的に、リアル店舗でありながらオンラインストアと同じくらい「顧客の動きを分析して陳列や商品の説明」を充実させられるだろう。
このことは、特にコンビニなどの大手チェーン店には重要なことである。商品の廃棄ロスを減らし、ヒットの糸口を素早く掴むには、店舗のインテリジェント化が必須なのである。
一方、こうした技術の活用は、プライバシーの確保に最大限の配慮が必要になる。消費者の一挙手一投足を監視し、そこから広告などのビジネスに繋げるのは、消費者の側が「情報の広告利用」に同意していたとしても、あまり気持ちいいものではない。店舗の改善に制限し、「同意なく活用する」のは戒められなければならない。
とはいえ、「リアルで買うのもネットで買うのも、得られる情報に大きな違いはない」という状態を作ることは、大手チェーン店にとっては悲願でもある。プライバシーとビジネス効率、そして顧客サービスの関係性構築は、「無人コンビニ」成立と歩調を合わせ、慎重かつ急いで進めていく必要に迫られている。
●次回Vol.76-1は「ゲットナビ」4月号(2月23日発売)に掲載されます。
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