2008年に公布された「ふるさと納税」。国内の任意の自治体に寄付するこの制度は、地方の財政を助けることが期待されていました。しかし、この制度が始まってみると、世間は豪華な返礼品に注目。返礼品合戦が過熱したあまり、18年9月に野田聖子前総務相が同制度の法規制に乗り出す方針を発表しました。
どのように見直されるのか全国の自治体が注目していますが、ふるさと納税はもうやらないほうがいいのでしょうか? 税理士の木下勇人さんはそうではないと言います。ふるさと納税の問題点やスマートなやり方、おすすめの返礼品についてお話を伺いました。
ふるさと納税の問題とは?
――まず、ふるさと納税の仕組みから教えてください。
木下勇人さん(以下:木下) ふるさと納税とは、「自分の故郷や応援したい自治体など、居住地以外の都道府県・市町村区へ寄付することで、個人住民税の一部が控除される制度」(日本大百科全書)です。導入された背景には、都市部と地方との税収格差を是正する狙いがありました。
自治体は、ふるさと納税をする人に対して、寄付金額に応じてお礼(返礼品)を特典として設けることで寄付者を増やそうとしたわけですが、この返礼品合戦が各地で加熱し、この制度は当初の趣旨とかけ離れてきてしまっています。「任意の自治体を応援する」ことを通り越して、単に返礼品を目的とした納税の仕組みに変わってしまったんですね。
ただし、各自治体が悪いわけではありませんし、ふるさと納税者が悪いわけでもありません。私の見解では制度設計に問題があったと考えています。
――法規制が始まる原因は制度設計ですか?
木下 はい。わかりやすく言うと、100万円の納税をしなければいけない場合、このうちの50万円分の納税をふるさと納税にします。残りの納税額は50万円となるわけですけど、そこで得た返礼品が50万円相当の物だった場合、トータルの納税額は実質、当初の半額で済んでしまうわけです。
返礼品には牛肉やカニといった高級食材が多く、即換金できる物品ではないのですが、近年は金券なども出始めました。金券は転売すれば、すぐにお金になります。また、つい最近まで、返礼品の調達金額が5割を超えるケースもありました。地場産品と関係のないものを返礼品にしている所もありましたね。
これらが問題視され、総務省のお達し以降、大半の自治体は自主的に返礼品の調達金額を3割以内に抑え始めました。
それでもなお調達金額を3割以内にしていない自治体もあり、そういうところは国会でも批判されています。でも、納税者にとっては高価なものや調達価格が高いものが魅力的に映るわけですから、そのような批判がかえって宣伝みたいになり、たくさんの人たちがそのような自治体に殺到するという皮肉な流れにもなっています。
ふるさと納税のスマートなやり方
――ふるさと納税には、まだメリットがあるのでしょうか?
木下 そうですね。一時期ほどではないにしても、始めないよりはやったほうがいいでしょう。
――スマートなやり方はありますか?
木下 やはり返礼品が充実した地域をまず見つけることですね。私が毎年やらせていただく200件以上の確定申告のうち、その半数くらいの方たちがふるさと納税をされています。それを見ていると、ある特定の自治体へのふるさと納税がすごく多いということに気付きます。つまり、その自治体の返礼品が際立ってよいから、多くの納税者が同じパターンの行動を取るんですね。
こういった情報には皆さん敏感ですので、ふるさと納税をする方はまず各自治体の返礼品を見て、どこに納税するかを決めるとよいと思います。
あとは、返礼品がもともと欲しかった物か買うべき物だったかどうかも考えることが大切。返礼品が高価なものであったとしても、自分にとって不要な物であれば困るだけですから。