歴史が昔から苦手だ。過去の人々がいたからこそ、今の自分が存在することはわかっているのだが、○○時代とか○○の乱とか、さっぱり頭に入ってこない。
最近は、名探偵コナンの日本史本など、子どもがとっつきやすいものが多々出ている。そんな中で、一風変わった歴史本を見つけた。
『恋するせつない歴史人物事典』(大石学・監修/学研プラス・刊)だ。
子どもたちの歴史に対する苦手意識を払拭すべく、これまでにない観点でまとめられた歴史人物事典シリーズ。歴史上の偉人たちの「スゴイ!」部分をフューチャーした『あっぱれ歴史人物事典』、「ポンコツ…」な部分に特化した『しくじり歴史人物事典』に続く第3弾である。
偉人たちの恋愛事情にドキッ!
そもそも恋バナってやつは、いつの時代も話題になる。特に女子は、ツンデレのギャップにギュッときたり、好きな人の前だけで見せる意外な姿にキュンとなったり、なにかとワーキャーヤイヤイ忙しいのだ。
『恋するせつない歴史人物事典』は、そんな女子たちの恋バナを覗いているかのような、実にユニークな視点で歴史上の人物が描かれている。
たとえば、二人三脚で鎌倉幕府を成立させたおしどり夫婦・源頼朝と北条政子のラブストーリー。基本的な人物像はもちろん、二人の出会いから結婚のきっかけとなったエピソード、またそれぞれの素の姿に迫るために寄せられた、静御前や僧・分覚、鎌倉幕府の御家人らのコメントも興味深い。週刊誌で言う「関係者談」ってやつか。
二人のやりとりがLINEの画面風に表示されているのも一興。世が世なら、こんなふうにやり取りをしていたのかも。
天才女流歌人と2人の皇子の三角関係!?
特に印象的だったのが、額田王と中大兄皇子&大海人皇子の三角関係を描いた章だ。
皇族・鏡王の娘として生まれた飛鳥時代を代表する歌人・額田王。彼女は、大海人皇子の后となったが、大海人皇子の兄・中大兄皇子が美しさと才能を兼ね備えた額田王に惹かれたため、兄の権力を恐れたのか、大海人皇子は身を引くことに。額田王は中大兄皇子の妻となる。
しかし、お互いのことが忘れられない二人。中大兄皇子もいる宴の席で、額田王は大海人皇子への歌を詠み、大海人皇子もまた額田王への愛を詠んだ歌を披露した…という、木10ドラマもビックリな展開だ。こんな複雑な恋愛模様があったとは知らなかった!
ティーン向け雑誌のノリが新鮮!
ほかにも、「武将たちのときめき神セリフ対決」や「デートするならだれを選ぶ? ドキドキタイムスリップもしもデート」、「イケメンコンテスト」など、ティーン誌を覗いているかのようなページが並ぶ。この本を作った人たち、絶対楽しかっただろうな…。
イラストがいかにも少女漫画! といったテイストなので、男性陣はちょっと抵抗があるかもしれないが、小学生女子が歴史に興味を持つきっかけにはうってつけだ。ゴシップネタっぽい若干下世話な感じも、かえって興味深い。
巻末には、日本の歴史と恋の歴史年表が載っているので、歴史的背景も学べる。イマドキの歴史本はスゴイな、とのけぞった一冊だ。
【書籍紹介】
恋するせつない歴史人物事典
著者: 大石 学
発行:学研プラス
日本の歴史を動かした“すごい”偉人たち。そんな彼らが経験した“せつない恋”にスポットをあてて紹介。歴史上で見せる顔とは違う恋する彼らの素顔を知れば知るほど、魅力的に見えてくるから不思議。トキめいて、クスリと笑えて、じつはタメになる人物事典。