自分だけに合うアクセサリーをそっと身につけたいという大人の男性は多いようですが、これがなかなか難しい。派手なモノを選べば一歩間違えると、ちょい悪みたいで下品になるし、逆に、地味過ぎるのもかえって貧相に見えたりすることも……。
今回は「肌に最も近いプロダクトデザイン」として、ジュエリーやアクセサリーを発表し続けるブランド・JAM HOME MADEのディレクター増井元紀さんに、お話をうかがい、ズバリ40代からの大人にピッタリに合うアクセサリーとは何かを聞きました。
実は、女性用よりも男性用としてのほうが歴史が長い装飾(アクセサリー)
――若いころならどんなアクセサリーでも身につける勢いがありますが、30代後半からのいい大人になると、なかなかうまくいきませんね。一歩間違えると、ただのダサい人みたいになりますし。大人の男性がどのようにすれば、適切なアクセサリーを選べるのかをお聞かせいただきたいです。
増井元紀さん(以下、増井) まず、そもそものジュエリーやアクセサリーの成り立ちをご紹介したいです。意外と知られていないことなのですが、実はジュエリーやアクセサリーの歴史は女性より男性のほうが古くからあるんです。
人類の歴史と合わせて装飾の歴史があり、これはすごく古いんですよ。紀元前の古墳から装飾品が出土した話もありますし。世界各地にいる先住民族のタトゥーも一種の装飾と言って良いかもしれないですよね。でも、なぜそんなに古くから装飾があったのかと言うと、大きく分けて3つあると言われています。
1つ目が自分の階級を表すためのものですね。あるコミュニティのリーダーが、立場をわかりやすくするために装飾をしたというもの。
2つ目が狩猟にまつわるもの。狩猟時代は男性が獣を採ってこないと食事ができませんでしたので、より強い獣を獲った者が尊敬される立場でした。そういった獣を獲った者は、例えばそれがライオンだったとしたら、その牙を抜いて、それをネックレスにするケースも多かったようです。「自分がもっと強くなれるように」「次戦うときに、獣に対して威嚇できるように」といった呪術的な意味合いも強かったようです。
3つ目が、自分たちのコミュニティや民族の意識を高めるために仲間同士で装飾をし始めたというものです。
メンズジュエリー、メンズアクセサリーも必ずこの3つのどれかに当てはまるものを選べば良いと思います。また、僕自身もずっとこういったストーリーを意識して作っています。
現代に置き換えてみれば、すごくわかりやすい例で、まだ若い人がロレックスの腕時計をつけていても、なんか違和感があるじゃないですか。自分の立場が上がっていって初めて似合うのが、こういった高級腕時計ですから、やっぱり今の自分をよく理解して、それに見合うものを選んでいくのが良いと思います。
――言い換えると、自分の立場や生活とリンクするアクセサリーを身につけるということですね。
増井 「どんなデザインの物が良いか」というのは人それぞれ違うと思うのでいったん置いておきますが、やはり自分に関連する誕生石がついたものだったり、仲間とお揃いのものだったり、何かを成し遂げた成果の証しだったりというものは思い入れも強くなるし、一番しっくりきて良いと思います。
――JAM HOME MADEのショップには若いお客さんも大勢来店されると思うのですが、こういったジュエリーやアクセサリーの背景のお話もよくされるのですか?
増井 若い方だと、見た目からスカルリングとかを選ばれるお客さんも多いのですが、実は見た目だけでなく様々なストーリーがありますから、JAM HOME MADEのアイテムに関してのストーリーは説明させていただくことがあります。
男性のオン・オフ問題をクリアするアクセサリーとは?
――ただ、男性にとってのジュエリーやアクセサリーとなると、オン・オフで使い分けるのが大変という問題もあります。仕事がオンのときは突飛過ぎてはダメだし、逆にオフのときは自由なものを身につけておきたいなど。この辺の使い分け問題はどう考えられていますか?
増井 それはJAM HOME MADEも課題の一つなんですよ。よくある話ですが、既婚者が夜のお店に行くときに、普段つけている結婚指輪はちょっとマズいからハズしてポケットの中にしまってしまう。でも、そんなことを繰り返していると、「いつかなくしそうで恐い」といった声もよく聞いていました。
そこで僕が考えたのが「一つでオン・オフの両方が使えるリング」です。
――どういうことでしょうか。
増井 仕事をしているオンの間は、目立ち過ぎない指輪なのですが、オフになったときはその指輪の上に被せるようにできるものです。覆面レスラーが覆面を脱ぐときと着けているときのオン・オフを指輪で表現したものですね。
個人的には「肌身離さずつけていただけるものを……」と思って作っているのですが、ときどきこういったものも作っています。わかりやすくオン・オフを使い分けることができる一例です。
究極の「自分に関連する」アクセサリー
――先ほど「自分に関連するものを選ぶのが一番」とありましたが、これに加え、選ぶ上で特にデザイン面で気にすべきところはありますか?
増井 「こういうものを」と言い切ることは難しいですよね。人それぞれ好みも違いますし、例えばそのリングが奥さまとお揃いの結婚指輪だったのだとしたら、また話が変わってきますし。
ただ、こういう面でも「やっぱり一つストーリーがあるリングだと、思い入れを強く持てるのではないか」と僕は思っていて、これも一つの課題となっています。
少し前に作ったのがリングの断面が血液型のアルファベットになっているもの。A型だったら断面が三角になっていて、B型だったらちょっとエクレアみたいな断面になっているというものです。お互いの血液型の指輪をペアでハメることで、お互いを思い合うというようなものですね。
あと、「自分に関連するアクセサリー」で言えば究極なアイテムとして「名もなき指輪」というものもあります。これはペアで指輪を作るキットで、歪んだ指輪をセットの中に入っているハンマーと芯棒を使って真円にして、自分たちで指輪を完成させていくというものです。
出来上がった指輪を原型にとって、ゴールドやプラチナに昇華させて、結婚指輪や記念の指輪にすることも行っています。
これはJAM HOME MADEの商品ですけど、このように自分に合うアクセサリーというものを、ご自身や大切な方の手で作り出すことも良いと思いますよ。
しかし、増井氏が考える大人が選ぶべきアクセサリーは別のものだった!
――お話を聞いていると、大人だからこそ付けるアクセサリーの妙や精神性がよくわかりました。
増井 ただ、ここまで話しておいてナンですけど、実は40代の男性に本当にお勧めしたいアクセサリーは別のものなんですよ。
――え? 別なんですか?
増井 はい。これは随分前に作ったもので、GetNavi webを見てくださった方から声が募れば是非復活させたいんです。
40代以降になると、人生の折り返し地点ですよね。どうしても健康が気になってくる年ごろですから、よくゲルマニウムなどの血行の流れを良くするための磁気ブレスレットを付けている方がいらっしゃいます。そいうしたものを付けている方を見て僕は「かわいらしいな」と思う反面、どうも自己愛が強過ぎるように思う場合もあるんです。
そこで考えたのがこのブレスレットです。本来の健康アクセサリーは自分の体の血行の流れを良くするために、ブレスレットの内側に磁気が付いているのですが、これは全部外側に磁気を付けているんです。
自分自身はいっさい健康的な効果がないんですけど、このブレスレットを付けて、満員電車の中などで隣にいる人になすりつけてあげたりすれば、周りにいる人たちが全員健康になります。つまり、自分のためじゃなくて周りの人たちを健康にしてあげるためのブレスレットですね。
――これは実際に売られていたんですか?
増井 売っていました。ただ、アイデアが早過ぎて、全く売れませんでした。なので、これはGetNavi webの力もお借りしながら、ぜひいつか復活させたいと思っています。大人の方ならわかってくれるはずの、外側に磁気がついたブレスレット、すごく良いと思うんですけどね。
あらゆる質問に答えてくださった増井さん。ありがとうございました!
終始クールで知的な増井さんでしたが、最後には本気なのか冗談なのかわからないアイデアも。でも、「名もなき指輪キット」は、「自分に最も合う」という意味では最適のように思いました。これからなんらかのアクセサリーを購入、またはプレゼントしようと思っている方は、ぜひチェックしてみてください!