2月12日、日本の家電メーカー・バルミューダが、空気清浄機の新モデル「BALMUDA The Pure(バルミューダ ザ・ピュア)」の発表会を開催した場所は、韓国・ソウルでした。100人以上の地元メディアほか、IT先進国である韓国では欠かせない存在である、インフルエンサーやブロガーも多数呼んでの大々的な催しで、このような大規模な製品発表会自体、韓国では珍しいことだったとか。製品も翌日、日本に先駆けて韓国で発売されました。
高級トースターのヒットで話題を集める存在ながら、“家電ベンチャー”であるバルミューダが、このようなサプライズ尽くしのイベントを展開した製品「BALMUDA The Pure」には、どういったサプライズが込められているのか? いよいよ日本での発売を直前に控え、現地で取材したイベントの模様と、寺尾玄社長へのインタビューによって迫ります。
バルミューダの空気清浄機は日本より韓国で売れている!
バルミューダは、2003年に寺尾玄社長が東京の自宅で起業。社員たったひとりからスタートした会社です。2010年に発売した高級扇風機「GreenFan(グリーンファン)」が大ヒットとなり、その後の“DCモーター搭載高級扇風機”ブームを作り出したのは、記憶に新しいところ。そのバルミューダが、最初に進出した海外市場が韓国でした。初進出は2012年、翌’13年に中国のPM2.5問題が世界的に注目されたことで、韓国でも同12月に発売した空気清浄機「JetClean(ジェットクリーン)」が爆発的にヒットし、今では日本の10倍を売るまでの人気商品となっています。つまりバルミューダにとって、今回のような大々的な発表会を催し先行発売するほど、韓国は特別な市場なのです。
空気をきれいにする動作を“光の柱”で表現している!
「コンセプトは、“空気をきれいにする光の柱”です!」と寺尾玄社長は壇上で、高らかに宣言。新モデルの「BALMUDA The Pure」は、2012年発売の「JetClean」、その後継機「AirEngine」で採用したタワー型のデザインはそのままに、流路やフィルターなど内部構造を一新し、性能も大幅にアップした全く新しい空気清浄機です。
コンセプトである“光の柱”の名のとおり、下部の開口部分がブルーの涼し気な色で光ります。上部から覗くとファンの間からこの光が漏れ、幻想的な雰囲気。
「数ある家電製品の中で、“今何をやっているか”が最も分かりづらいのが空気清浄機。つまり、空清(空気清浄機)は“その性能を体感できない”という大きな課題を抱えていた。そこで、機能を見える化することを考え、光を採用したのです。実際に、最大風量の『ジェットモード』で運転中に大きなホコリを吸い込むと、そのホコリが光に照らされて見えます」と寺尾社長。
光によって空清がたしかに働いていることを実感することで、購入後の満足感、また機能している安心感を得られるのです。また、「光」は機能面だけでなくデザインの一部としても設計しており、そこを強調すべく、本体デザインはできる限りシンプルにしたとか。
この吸気部の光は、運転モードによって照度が変化する仕掛けが施されています。ジェットモードを最大の明るさとし、風量3(強)・2(中)・1(弱)の順に暗くなっていきます。照度センサーとも連動しており、周囲が暗くなると明るさを絞って運転。ちなみにジェットモードとは、15分間最大風量で部屋の空気を循環させるモードで、「部屋の掃除中や掃除後、花粉の時期の帰宅後など急いで部屋の空気を清浄したいときに使って欲しい」(寺尾社長)。なお、通常は『オートモード』にしておけば、各種センサーにより部屋の中のニオイやホコリの量に応じて風量を自動で切り替えてくれます。
業界トレンドのスマートフォン連携をカットオフ
機能の可視化を、運転強度を“光”で示す、という方法で実現した「BALMUDA The Pure」。気になるのは、スマートフォンと連携させ、専用アプリ上で運転状況を確認できるようにする家電が増えているという業界のトレンドに、背を向けていること。
その理由について、寺尾社長は「(バルミューダでは、)2013年に加湿器とスマートヒーターでIoTの取り組みをしたが、思ったほど効果がなかった(から)」としています。「今の家電製品レベルでネットワークにつながっても、あまり意味がないと正直思っています。スマホで操作するより、空気清浄機まで歩いていってスイッチを押したほうが早い。それなのに、Wi-Fiのチップを搭載するだけで価格が跳ね上がってしまう。それはユーザーの利益にならないですよね」。空気清浄機としての基本性能とデザインを突き詰めた、シンプルな作りとした理由を説明しました。
“TrueHEPA”を活かすためにジェットエンジンの技術を採用!
フィルター性能も大きく変わりました。前モデルは“準HEPAフィルター”を搭載していましたが、新製品では“TrueHEPAフィルター”を採用、これにより、0.3μmの微粒子を99.97%キャッチすることに成功。韓国でも問題になっているPM2.5も、およそ30分で99.9%除去できるようになりました。加えて、サッカーフィールド6面分の表面積を持つ活性炭フィルターを搭載し、部屋の中のニオイを強力に除去します。
このTrueHEPAフィルターを新搭載するために、“風”も再設計されることとなりました。
「微粒子の捕獲量に勝るTrueHEPAフィルターが良いのは分かりきっています。しかし、集塵性能が高い分、空気抵抗が高い。しかも、“光の柱”というコンセプトを実現するためにフィルターの面積は小さく、その中で集塵性能を出すためには、フィルターに厚みを持たせて全体面積を稼ぐしかない……。この構造で大風量を作り出すことが、なかなか難しかったんです。それを解決したのが、新開発の“整流翼”です」(寺尾社長)
“整流翼”とは航空機のジェットエンジンに使われている技術で、それ自体は回転しません。下部のファンが回転して作り出した風を整え、まっすぐ上方に強力に吹き出すことを手助けするもので、これにより風量が15%アップ、ジェットモードで毎分7000Lもの空気を清浄することが可能になったといいます。
日本では3月14日から店頭販売スタート
「BALMUDA The Pure」は、日本では2月21日から予約を開始しており、3月14日からは店頭販売を開始。価格は5万2000円(税別)。本体寸法は幅260×奥行き260×高さ700mm、本体重量約7.4kg(フィルター含む)、清浄時間は8畳8分、最大消費電力72W、運転音19〜64dB、適用床面積(目安)36畳まで。カラーはホワイトのみ。交換用の集じんフィルターが7000円(税別)、脱臭フィルターが3000円(税別)、集じん・脱臭フィルターセットが9500円(税別)で、フィルターの交換目安は約1年。
バルミューダ「BALMUDA The Pure」
5万6160円(税込)