今年10月、消費税が8%から10%に増税となります。もちろん高価格な製品ほど増税の影響は大きいですが、必ずしも“駆け込み買い”が得とは限りません。本特集では、増税前に狙い目のカテゴリを抽出し、そのなかからプロがベストバイ製品をセレクト。今回はモータージャーナリスト・岡本幸一郎さんに「輸入車」を紹介してもらいました。
ついに自動車取得税が廃止され、新たに「環境性能割」が設定される
自動車の税制もいろいろ変わりますが、なにせわかりにくい。これまで問題視されていた消費税と自動車取得税の二重課税の悩みに対し、増税時のポイントとなるのが取得税の代わりに設定される「環境性能割」。ただし、エコカー減税は適用されなくなります。大まかな流れは下表のとおりで、さらに2020年10月に環境性能割の優遇がなくなり本来の税率に戻ってしまいます。
■クルマ購入時にかかる税金・税率変更一覧表
2019年3月まで | 2019年4月以降 | 2019年10月以降 | |
EV、PHV車など | 取得税非課税 | 取得税非課税 | 環境性能割、非課税 |
2020年度燃費基準+30%達成車 | 取得税80%軽減 | 取得税50%軽減 | |
2020年度燃費基準+20%達成車 | 取得税60%軽減 | 取得税50%軽減 | |
2020年度燃費基準+10%達成車 | 取得税40%軽減 | 取得税25%軽減 | |
2020年度燃費基準達成車 | 取得税20%軽減 | 取得税20%軽減 | 購入価格の1% |
2015年度燃費基準+10%達成車 | 取得税40%軽減 | 取得税33%軽減 | 購入価格の2% |
2015年度燃費基準+5%達成車 | 取得税20%軽減 | 軽減なし | 購入価格の3% |
上記以外の車 | 軽減なし | 軽減なし | 購入価格の2%(軽自動車は1%) |
新税制でもっともトクをするのは、自動車税の引き下げ幅の大きい、1.0ℓ〜1.5ℓ級のややエコなクルマといえますが、どんなクルマも基本的には2%上がるので増税前に買ったほうがトク。特に値引きキャンペーンが期待できない輸入車は早めの決断を。
コレが買うべき理由
10月から自動車取得税が廃止となり、新たに環境性能割が導入され損するケースもある
「環境性能割」とは、燃費基準達成度でかかる税。2015年度燃費基準達成車の「自動車取得税」と「環境性能割」で比べると“実質的に増税”となります。
増税後の値引きキャンペーンは輸入車ディーラーでは実施が不透明
国産車と比べて、輸入車は大規模なキャンペーンが期待できません。また、増税直前需要により、人気車種は納車の遅れが見込まれるので注意しましょう。
おすすめ輸入車5選
【ココをCHECK】
1 走行性能
該当グレードのエンジン性能をはじめ、乗り心地の快適さやハンドリングの良さ。足まわりの構造などフットワークの印象で評価しています。
2 内外装
デザインや装備について評価。エクステリア、インテリアともにその質感や先進性だけでなく、メーカーや車種が持つ独自性も加味してポイントを付けます。
3 実用性
乗員の居住性や乗り降りのしやすさ、トランクの広さや使いやすさなどをチェック。各種装備のレイアウトなど、利便性を総合的に評価しました。
4 安全性
安全運転支援装備の充実度を総合的に採点。最新の輸入車モデルは一様に充実してきていますが、そのなかでも特徴的な機能をピックアップしました。
【その1】日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した傑作コンパクトSUV
ボルボ
XC40
389万円〜
ボルボの既出モデルや他社のどれにも似ていない、ひと味違った個性が与えられた同社SUVの末弟。2020年度燃費基準を達成しておらず、増税の影響が特に大きい。COTY受賞の影響か発売から約1年経ったいまも受注は好調で、納車まで時間を要するため、早めの購入を。
SPEC【T4 AWD R-Design】●全長×全幅×全高:4425×1875×1660mm●車両重量:1670kg●エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC16バルブ(インタークーラー付ターボチャージャー)[ガソリン]●最大トルク:30.6kgm/1400〜4000rpm[ECE]●総排気量:1968cc●最高出力:190ps●カタログ燃費:13.2㎞/ℓ(JC08モード)
【1 走行性能:評価A】
力強いエンジンは扱いやすく意のままに走れる操舵性も◎
190psを誇る2ℓターボエンジンはパワフルで、ATは8速のため扱いやすい。快適性とキビキビとした走りを両立した足まわりも絶品。
【2 内外装:評価A+】
ブルドッグモチーフの外観と印象的なオレンジの内張り
ブルドッグをモチーフにした外観は親しみが持てます。内装のドア内張りなどにはオレンジ色を使うなど、これまでになかった挑戦が好印象。
【3 実用性:評価B】
シート設計の工夫により室内の狭さをカバー
室内長は大きくないですが、乗員をアップライトに座らせるシート設計で不満はありません。トランクの広さはW1000×H740×D890mmと必要十分。
【4 安全性:評価A+】
エントリーモデルでも安全性にぬかりなし
さすがは安全性で名高いボルボ。対向車対応機能や車線維持支援機能まで備えた、クラスを超えるシステムが全車に標準装備されます。
【その2】優美なサイドシルエットがラグジュアリーな印象を高めるメルセデスきっての万能SUV
メルセデス・ベンツ
GLC220d
621万円〜
GLC220dは、長めのホイールベースによる優美なサイドシルエットがラグジュアリーな印象を与えます。高性能版のAMGモデル以外はエコカー減税の対象。ディーゼルはそう遠くないうちに、マイチェンで新世代エンジンに換装される見込み。新型を欲しい人は購入を待つのもアリ。
SPEC【4MATICスポーツ】●全長×全幅×全高:4670×1890×1645mm●車両重量:1940kg●エンジン形式:DOHC直列4気筒ターボチャージャー付●最大トルク:40.8kgm/1400〜2800rpm●総排気量:2142cc●最高出力:170ps●カタログ燃費:16.2km/ℓ(JC08モード)
【1 走行性能:評価A】
2.2ℓ直4DOHCディーゼルターボエンジン搭載!
SUVであることを感じさせない俊敏なハンドリングも持ち味。2.2ℓディーゼルは、低回転域からフラットなトルク特性で力強い。
【2 内外装:評価A】
とっつきやすく高級感もあり、SUVらしい逞しさも併せ持つ
GLCはやや丸みを帯びた背が高いワゴンのようなパッケージ。メルセデスらしい高級感、品格と逞しさを併せ持ったエクステリアです。
【3 実用性:評価B+】
縦置きエンジンの影響で室内の足元がやや狭い
室内の居住性、トランクの広さは十分。ただし、運転席ではメルセデスの右ハンドル車に共通する左足の狭さがやや気になります。
【4 安全性:評価A+】
メルセデスらしい上級車種譲りの充実度
飛び出しや歩行者の検知、後方衝突の警告などを装備。強い横風を検知すると、その影響を減少させるという独自の機能まで備わります。
【その3】3種の駆動方式を持つプラグインハイブリッドMPV
BMW
225xeアクティブツアラー
538万円〜
車高を高めにしてスペース効率を高めた、海外ではMPV(マルチパーパスビークル)と呼ぶカテゴリー。プラグインハイブリッドである「225xe」は、前輪をエンジンで、後輪をモーターで駆動する仕組み。走行モードには通常のハイブリッド走行、可能な限り電気だけで走行、バッテリーの蓄電量を保ちながら走行、の3つが用意されている。
SPEC【iPerformance アクティブアラー Luxury】●全長×全幅×全高:4375×1800×1550mm●エンジン形式:直列3気筒DOHCガソリン●最大トルク:22.4kgm/1250~4300rpm[ECE]●充電電力使用時走行:42.4km●EV走行換算42.4km●総排気量:1498cc●最高出力:224ps●カタログ燃費:16.8km/ℓ(JC08モード)
【1 走行性能:評価A】
侮れない瞬発力と加速フットワークが良い
PHEVは1.5ℓガソリン直噴ターボとモーターによる加速力が武器。走りは軽快で、快適性にも優れています。6.7秒で0-100㎞/hまで加速。
【2 内外装:評価C】
躍動感漂うシルエットに実用性の高さも追求!
BMWが手がけたMPVを心待ちにしていた人も多く、販売は概ね好調。スポーティなイメージを保ちつつ背を高くしたフォルムで実用性を高めました。
【3 実用性:評価A】
BMWファンの期待に応え利便性を求めたトランク
後席が高めに設定されていて見晴らしは良い。ラゲッジスペースは床下にモーターを搭載しているため容量400ℓとそれほど大きくはないですが、実用上は十分。
【4 安全性:評価A】
最新モデルと比べるとやや見劣りするが必要十分
車線逸脱は警告のみで、車線維持機能はありません。停止や再加速も自動で行なうACCは渋滞時のみ反応。衝突被害軽減ブレーキは歩行者にも対応します。
【その4】個性的でハイクオリティ! 完熟の域に達したフレンチワゴン
プジョー
308 SW
308万7000円〜
これまでいくどとなく装備のアップデートと熟成が図られてきた308 SW。このほど搭載された直列4気筒1.5ℓのクリーンディーゼルターボは、いままでの1.6ℓのエンジンに比べ低回転から高回転域まで上回るパワー、トルクがあります。
SPEC【Allure BlueHDi】●全長×全幅×全高:4600×1805×1475mm●車両重量:1380kg●エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー付(ディーゼル)●最大トルク:300Nm/1750rpm●総排気量:1498cc●最高出力:130ps●カタログ燃費:21.6㎞/ℓ(JC08モード)
【1 走行性能:評価B】
1.6ℓに代えて新開発の1.5ℓ4気筒ディーゼルを採用
高い環境性能、燃費性能を誇るクリーンディーゼルBlueHDi搭載。従来からダウンサイジングしたにも関わらず、+10psの最高出力130psを誇ります。
【2 内外装:評価B】
無駄をそぎ落としたインテリアは革新的
スイッチ類を廃し、スマホのように操作できる7インチタッチパネルを設定。また、ステアリングの上にメーターを配したインパネも斬新すぎます。シートの質感も高いです。
【3 実用性:評価A】
ボディサイズからするとこれ以上はないほどの広さ
本車は、VWの現行ゴルフを超えることを命題に開発されました。リヤシート折りたたむと最大容量1660ℓと、クラストップレベルの実力の持ち主。
【4 安全性:評価B+】
先進的な危険回避機能運転手の負荷もやわらげる
レーダーと車載カメラにより前方の車両や障害物を検知し、自動的にブレーキが作動。さらに、運転手のストレスを軽減するアシスト機能も備えます。
【その5】136ps、290Nmのモーターで301km走行可能なゴルフのEV
フォルクスワーゲン
e-Golf
499万円〜
既存のゴルフをベースにEV化。ブルーの挿し色やC字型のLEDポジションランプで、フォルクスワーゲンの電動化車両であることをアピール。バッテリーは普通充電(3kWと6kWに対応)のほか、CHAdeMO規格の急速充電にも対応。
SPEC【e-Golf】●全長×全幅×全高:4265×1800×1480mm●駆動用バッテリー:リチウムイオン電池●最大トルク:29.5kgm/0〜3300rpm●交流電力量消費率124Wh/㎞●総排気量:1498cc●最高出力:136ps●一充電走行距離:301km(JC08モード)
【1 走行性能:評価B+】
評価の高いゴルフの良さをEVでも受け継ぐ
容量35.8kWhの駆動用リチウムバッテリーを搭載。一充電最大走行距離301km。0-100km/h加速は9.6秒。リニアな加速フィールです。
【2 内外装:評価B】
EVを特別視しない方針からあまり差別化していない
ゴルフの上質なデザイン性を維持。内外装に配されたブルーのラインやステッチ、灯火類、ディスプレイなどは、ガソリン車と比べ若干異なる。
【3 実用性:評価B】
ガソリン車より狭くなったトランクも大きな不満はなし
トランク容量は341ℓ〜1231ℓ。フロア下に走行用バッテリーを搭載するため、ガソリン車のゴルフよりも40ℓほど狭くなっています。
【4 安全性:評価A+】
運転手をサポートする充実の先進安全装備
レーンキープアシストシステムや渋滞時追従支援システムを装備。歩行者検知に対応したプリクラッシュブレーキなど安全度は高いです。
次の国産車は増税前に買うのがおトクか?
ここまでは輸入車の例を並べてきましたが、こちらでは気になる国産の人気車にクローズアップします! 結論から言ってしまうとほぼ増税前に購入するのがベターでしょう。
【その1】 悪路を走らなくてもデザインが好みなら検討する価値あり
スズキ
ジムニー
税制改定による恩恵の小さい軽自動車。しかもエコカー減税の対象でなく、2020年度基準も達成していないジムニーはひとまず増税前に購入できればOK。クルマ自体は快適性と安全性が前型より大幅に引き上げられています。
【その2】 まもなく予定されているマイナーチェンジのタイミングと相談
トヨタ
プリウスPHV
プリウスでも十分ですが、外部充電できる環境にある人は検討の価値あり。もちろんエコカー減税で諸税が免税となります。PHVの場合は車両価格は高いですが補助金が出るのもポイントです。マイナーチェンジの様子を見て決めたいところ。
【その3】ハイブリッドのみエコカー減税対象! グレードにより減税の程度が異なる
ホンダ
ヴェゼル
登場から時間が経過していますが2019年1月はクラス首位に返り咲く。最近加わったばかりの専用ボディまで与えられるターボの走りは既存車を大きくしのぐ仕上がり。ただし2020年燃費基準を達成しているのはハイブリッドのみ。