本・書籍
2019/3/19 21:45

ヒクソンは勝つべくして勝った。グレイシー柔術の目線から見た髙田vsヒクソン戦

1997年10月11日。東京ドームにて世紀の一戦が行われた。そう「PRIDE.1」。髙田延彦vsヒクソン・グレイシーだ。

 

僕はその日、東京ドームにいた。リングから10何列目という、とてもいい席だった。たまたま、知り合いがスポンサーにいたので、チケットを用意してくれたのだ。

 

 

プロレス人気が凋落した歴史的な一戦

プロレス好き、格闘技好きな人ならば、この一戦がどんな意味合いを持つのか、そしてどんな結果になり、その後のプロレスと格闘技がどうなっていったのか、ご存じだろう。

 

簡単に言えば、純プロレスラーである髙田は、ヒクソンの前に破れた。しかも完敗だった。

 

現地で観戦していた僕は、特別髙田のファンであったわけではない。かといって、プロレスラーが弱いとは思ったこともない。とても複雑な気持ちで見ていたのを覚えている。

 

その後、プロレス人気は地に落ちていく。一方で、真剣勝負である格闘技人気が高まり、PRIDEをはじめ、K-1、UFCなどの格闘技イベントが盛んに行われるようになった。

 

もし、あの一戦で高田が勝っていたら、もし、髙田vsヒクソンが行われていなかったら、今プロレスはどうなっていたのだろうか。「たら・れば」の話をしてもしょうがないが、そう思うことがある。

 

ヒクソン戦への布石となったあの一戦の真実

プロレスが死んだ日。 ヒクソン・グレイシーVS高田延彦 20年目の真実』(近藤隆夫・著/集英社インターナショナル・刊)は、その高田vsヒクソンがどのような経緯で開催されたのか、その1年後の再戦に至る経緯などが記されている。

 

著者はプロレス週刊誌「週刊ゴング」の記者から、「ゴング格闘技」などの格闘技雑誌の編集長などを務めた人物。本書は、ヒクソンへのインタビューなどが豊富で、ヒクソン側からの視点で書かれているのが興味深い。

 

例えば、髙田vsヒクソン戦の引き金となった、安生洋二のグレイシー柔術の道場破りについても、記録用ビデオを元に詳細に書かれている。

 

顔面を中心にヒクソンが何十発ものパンチを振り下ろしていく。逃れることのできない安生はパンチを喰らい続け、彼の顔面は腫れ上がり朱に染まっていく。

(『プロレスが死んだ日。 ヒクソン・グレイシーVS高田延彦 20年目の真実』より引用)

 

試合時間は6分45秒。当時のプロレス週刊誌に載っていた安生の腫れ上がった顔は今でも覚えている。

 

 

ヒクソンは山ごもりで何をしているのか?

また著者は、試合前に行うヒクソンの山ごもりにも同行しており、そのときの様子も書かれている。結果、あまり特別なことはしてない。猛特訓をするというよりは、精神と肉体を戦いに向けて万全なコンディションにしていくという作業のためのもののようだ。

 

本書を読むと、ヒクソンは勝つべくして勝ったという印象が強い。勝負手となったヒクソンの鮮やかな腕ひしぎ逆十字は、今でも思い出せる。

 

なぜ、髙田は勝てなかったのか。なぜ、ヒクソンは勝ったのか。そもそもグレイシー柔術とはどんな格闘技なのか、そしてプロレスというスポーツがどんなものなのか。さまざまな要素が詰まった1冊。プロレスファン、格闘技ファンどちらでも楽しめるだろう。

 

【書籍紹介】

プロレスが死んだ日。 ヒクソン・グレイシーVS田延彦 20年目の真実

著者:近藤隆夫
発行:集英社インターナショナル

ヒクソンの圧勝、髙田の惨敗。あの日から、格闘技界の様相は一変した。リアルファイトである総合格闘技人気が爆発。昭和の時代から定着していたプロレス人気が消滅した。ヒクソンVS髙田戦は、いかにして実現したのか? 対戦の裏側には、何があったのか? そして、ヒクソンの決意とは!? プロレスの全盛期から、総合格闘技の黎明期、PRIDE全盛期まで第一線で取材・執筆を続けた著者が、20年間を詳細に振り返り、真実に迫る!

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