3月20日、大手ベビー用品メーカーのピジョンは、未来のベビーカーについて考える学生コンテスト「ベビーカソン」(ベビーカーとハッカソンをかけ合わせた造語)を東京・神田で開催しました。IoTを導入することで育児環境をよりよくしたいと考えるピジョンが、「赤ちゃんやパパ・ママの毎日をもっと快適に楽しくするIoTを活用したベビーカー」をテーマに学生たちからアイデアを募集。イベントに参加した5大学の学生たちが「工学」という視点から斬新な考えを披露しました。これからベビーカーはどう変わっていくのか? その可能性が垣間見えました。
最先端テクノロジーを使ってベビーカーにディスラプションを起こすとしたら、どうすればいいでしょうか? ベビーカーの前提条件から考える必要があります。このコンテストに参加した日本大学のチームは「ベビーのカー、でいいの?」という問いを設定。3つの重要な点を指摘しています。
- 「みんな買う、でいいの?」ベビーカーの使用期間は一般的に2〜3年程度ですが、パパママのなかにはベビーカーを家族や友人から使わなくなったものをいただき、使う人もいます。ベビーカーは一家に一台、所有する必要が本当にあるのでしょうか?
- 「赤ちゃんだけ、でいいの?」公共の交通機関で邪魔者扱いされてしまいがちなベビーカー。その原因は赤ちゃんしか使わないことにあると日大チームは指摘。いろんなユーザーにとってメリットがある道具にならないのでしょうか?
- 「移動だけ、でいいの?」ベビーカーは赤ちゃんを運ぶためだけの道具でいいのか、と疑問を呈する日大チーム。移動以外の機能を持たせられないのでしょうか?
これらをもとに日大は「公共交通インフラとしてのモビリティ」「誰もが使えるモビリティ」「メディアとしてのモビリティ」という3つのコンセプトを作り、交通機関や医療機関、商業・公共施設など、様々な場所に応じたベビーカーの新しい在り方を社会的な影響も含めて説明しました。
例えば、医療機関。赤ちゃんがシートに座りながら検診などを受けることができるベビーカーがあれば、不用意な感染症の予防や子どもや親の不安やストレスの軽減に繋がるだろうと日大チームは言います。病院が「待合室のないクリニック」になるんですね。
また、公園ではベビーカーは運動の補助器具になります。走行距離に応じたマイルが貯まることでモチベーションの維持向上に貢献するという設計。ユーザーにとってお得なこのアイデアは実用的ですよね。
このような革新的なアイデアのなかでは「共有」がポイントとなります。近年、クルマ業界でカーシェアやライドシェアといった「サービスとしてのクルマ」が発展してきているように、ベビーカーにも同じことが起こせると、ベビーカソンに挑んだ若きエンジニアたちの一部は考えていました。
このコンテストで最優秀賞に輝いた東京工業大学のチームも、好きなときに好きな場所で好きな車種を借りる(または返す)ことができる「ベビーカーシェアリングサービス」を提案しました。東工大はその先行事例としてベルギーで2014年に誕生した「Buggy Booker」を紹介。最近では渋谷区でもベビーカーのシェアリングサービスの実証実験が行われていましたが、ベビーカーでもクルマ業界と同じ現象が見られるんです。