突然だが、「出産」というとどんなイメージをお持ちだろうか。特に「出産など未知の世界だ!」という男性陣に、ちょっと想像してみてほしい。
痛い、しんどい、怖い、壮絶な戦い…おそらく、ネガティブなイメージがほとんどではないだろうか。
確かに、ドラマの出産シーンなどを見ても、もれなく妊婦が痛みに耐えている。苦しんでいる。「もう無理―!」などと叫んでいる。その様子が無意識のうちに刷り込まれているからこその、「痛い・怖い・辛い」イメージなのだと思う。
だがしかし。
世の中には、もっと穏やかで、楽しくて、心から満足できる、最高にハッピーなお産があることを、声を大にしてお伝えしたいのだ。
「世界で一番幸せなお産」をサポートするクリニック
私には3人子どもがいるが、それぞれの出産のときのことは、今でもよく覚えている。
初めての出産では、陣痛が始まってから丸一日、ほぼ24時間かかって、ようやく生まれてきてくれた。あのときの感動は忘れられないが、同時にあのときの痛さや辛さも忘れられない。あまりに痛くて苦しくて、本当に「獣のように」叫んでいたのだから。まさに、冒頭でお伝えした「一般的なお産のネガティブイメージ」そのものだった。
それが2人目のときは、一度目の経験を踏まえて、かなりうまく痛みを逃せたと思う。事前に励んでいたマタニティヨガの呼吸法も役に立った。分娩時間は、1人目の4分の1程度。けれど、いきみ始めてからが予想以上に時間がかかり、思っていたよりもうまくいきめなかったなと少々心残りだったのが正直な感想だ。
そして3人目。これで最後の出産のつもりなので、有終の美を飾りたい。けれど、過去2回経験しているとはいえ、やはりお産は怖い。言いようのない不安でいっぱいになっていた出産予定日間際、ふとしたことで出会ったのが『世界で一番幸せなお産をしよう!』(藤原紹生・著/ザメディアジョン・刊)という一冊だった。
著者の藤原氏は、広島市にあるフジハラレディースクリニックの院長。この院長、かなりユニークだ。妊娠中の母親学級時や、出産してクリニックを退院する際に藤原院長と記念撮影をする人が多いそうなのだが、そのほとんどが、着ぐるみ姿なのだ(院長自身が)。白鳥からハムスター、おにぎり、ケーキ、生ビール、イカなどなど…実にバリエーション豊か。野球ファンのママのリクエストだろう、阪神のユニフォームを着ている写真もブログで拝見した。そして何より、一緒に写っているママさんが、本当に皆いい笑顔なのだ。
事実、フジハラレディースクリニックで出産したママのほとんどが、「楽しかった!」「すごく幸せ!」「またすぐにでも産みたい!」という感想を持って、退院していくのだそう。
痛くない! 怖くない! 笑顔のお産のための4つの秘訣
『世界で一番幸せなお産をしよう!』に話を戻そう。この本には、そんなユニークな院長・藤原氏による「心から笑顔になれるハッピーなお産」へのアドバイスが満載である。
まずひとつめの秘訣は、「ソフロロジー式出産」。簡単にいうと、「陣痛の不安や恐怖を、わが子に会うための喜びの痛みとして捉えるイメージを持ち、日本の禅の作法やインドのヨガ式の呼吸を取り入れ、静かで穏やかな分娩に導く」方法である。
具体的には、いわゆる「ヒッヒッフー」の呼吸法ではなく、陣痛がきたらゆっくりとたくさん息を吸う。そして、「フーーーー」と細く長く息を吐くことに集中する。こうすることで体がリラックスでき、産道が緩んで広がるので、赤ちゃんがラクに通ってこられるのだそう。
ふたつめが、「胎内記憶」。赤ちゃんには、お腹の中の記憶「胎内記憶」と生まれたときの記憶「誕生記憶」、そしてまだお腹に宿る前の記憶「中間生記憶」があると言われている。もちろん、科学的には証明されていないが、これらの記憶のことを話してくれる子どもは意外に多い。
だからこそ、お腹の中の赤ちゃんの気持ちにまで配慮したお産を心がけることが大事なのだ。
みっつめが、「コーチング」。自分がこれまで持っていた価値観の枠組みを超えることで、本来持っているはずの自分の能力を発揮し、欲しい結果を得ることができる、これをコーチングの分野では「パラダイムシフト」と呼ぶのだが、これこそがお産に大切なのだと藤原氏。つまり、「陣痛は叫ぶほど痛くて辛いもの」と知らず知らずのうちに思い込んでしまっているからこそ、実際に獣のように叫ぶ、痛くて辛いお産になってしまう。まさに一人目を産んだときの私のように。でも、本当は叫ばなくても、落ち着いて穏やかなお産はできる。先入観を解放し、そう自分に許可することで、「良いお産」ができるのである。
最後に、「禅」の考え方。頭の中であれこれ思考や妄想を巡らすのではなく、シンプルに「落ち着いてやれば、大丈夫」と捉えることで、お産が本来持つ楽しさや素晴らしさが実感できるという考え方である。
これら4つを自分なりに取り入れることで、「世界で一番幸せなお産」に繋がる、というのが、藤原氏が唱える「つぐお式出産」なのだ。
100点満点のお産ができた!
さて、この「つぐお式出産」を参考に、陣痛が来てから赤ちゃんが生まれるまでを繰り返しイメージトレーニングした私。何より大きかったのは、「陣痛は痛い、怖い」という先入観から解き放たれたことだった。そういえば、産院で行われた母親学級の際に見た出産シーンは、とても穏やかだった。でも、当時の私は「こんなに静かに出産できるわけないやん!」とナナメに捉えていたのだ。
けれども、『世界で一番幸せなお産をしよう!』には、穏やかで楽しいお産をした例がたくさん載っている。赤ちゃんの頭が見えてきたら頭をなでたり、赤ちゃんと握手したり、自分でへその緒を切ったり。なかには、産みながら自分で出産の瞬間をビデオ撮影したというツワモノも。ああ、お産って楽しんでいいんだ!と自分の中の価値観が変わった。
そして迎えた、陣痛本番。
「痛い」はNGワードだと自分に課し、分娩室で夫が握ってくれていた左手、この左手に力を入れたら負け! とルールを決めて望んだ。とにかく、息を長く吐いて、産道を緩めて、赤ちゃんに酸素をたくさん送る。赤ちゃんができるだけラクに降りてこられるように。このことに意識を向けていたら、本当にわが子が産道を降りてくる感じがよくわかった。心から、楽しかった。宣言通り、「痛い」とは一度も言うことなく。自分で言うのもなんだが、100点満点のお産ができたと思う。
たとえ帝王切開になっていたとしても、藤原氏から学んだことは、お産をプラスに働かせてくれていたと確信している。本当に、この一冊に出会って良かった。
これから出産を迎える妊婦さん、また、奥さんが妊娠中の男性陣に、ぜひとも『世界で一番幸せなお産をしよう!』をおすすめしたい。きっと、わが子に会うのがもっともっと楽しみになるに違いない。
【書籍紹介】
世界で一番幸せなお産をしよう!
著者:藤原紹生
発行:ザメディアジョン
本来、出産はとてもおめでたい、幸せなはずのもの。けれど、不安や恐ろしさが前面に出てしまうと、「お産は痛い」「お産はしんどい」と思ってしまい、人生の記念すべき瞬間をネガティブな気持ちで迎えることに…。この本で紹介する「魔法のことば」でお産をもっと楽しく、素晴らしいものにしませんか。
あなたは、どんなお産がしたいですか?