先日、Oculusから一体型VRヘッドセット「Oculus Quest」の国内発売が発表されました。現在予約中で5月21日より発売。64GBモデルが4万9800円、128GBモデルが6万2800円になります。今回は、ひと足先に実機を体験したレビューと共に、Oculus Questの魅力をお伝えしたいと思います。
Oculus Questは、VRヘッドセットとコントローラーだけで、場所を選ばずゲームが楽しめるのが特徴。Oculusには、同じくスタンドアローン型の「Oculus GO」、PC接続する「Oculus Rift」、Questと同時発表されたRiftのグレードアップ版「Oculus Rift S」が存在します。Oculus Questの位置付けを指すならば「Goより高次元、Riftより自由なVR体験」ができるデバイスと言えるでしょう。
Oculus Riftより自由とは、もちろんスタンドアローン型であることを指します。そしてOculus Goより高次元というのは、Oculus Questが対応する「6DoF」というトラッキング性能によるものです。
6DoFが叶える没入感
では、6DoFとは何か? 同じくスタンドアローン型のOculus Goと比較しながら解説しましょう。
Oculus Goは「3DoF」というトラッキングに対応しており、X軸・Y軸・Z軸の「頭の回転と傾き」を検知することが可能。VR空間内では頭を動かして周囲を見回す、というアクションが軸になり、前進・行進といった行動はコントローラーのスイッチングで行うことになります。
対してOculus Questの6DoFは、3DoFの「頭の回転」対応に加えて、同じ3軸の「移動」に対応しているのです。言い換えると、VR空間で自分がどこに位置するかをトラッキングできるということ。わかりやすいアクションとしては、Oculus Goではコントローラーのスイッチングで行なっていた空間内の移動を、「そのまま歩く」だけで果たせるということです。
一見すると、3DoFと6DoFの違いはただの性能差のように感じますが、Oculus Questを体験してみると少し違うように感じました。そちらの考察については最後にまとめたいと思います。しかし、少なからず6DoFによるVR体験の没入感は、3DoFよりもずっと高くOculusデバイスにゲーム体験を求める人なら、Oculus Questは強くおすすめできるものだと確信できました。
Oculus Questの細部をチェック
Oculus Questの細部をチェックしましょう。構成は、ヘッドセットと、センサーとコントローラーの役割を担う「Oculus Touchコントローラー」2個という形。
ヘッドセットの固定部は左右と上部の3点。布バンドのOculus Goよりも安定感はありますが、調整にはしっかりと3点を適正な位置で固定する必要がありました。
ヘッドセットには4つのトラッキング用カメラを設置。同じく前面のフチには電源ボタンがあります。
あとは、底辺部に音量調整ボタンと焦点調整ボタン、側面に充電用USBポートとイヤホンジャックを設置。ワイヤレスかつスタンドアローンで使えるように配置されています。コントローラーはストラップ付きになっていて、激しい動きでも落下の心配がありません。
実機を試用! 重さは気になるものの装着感はまずまず
最後に試してみた感想を述べていきたいと思います。まず実際に装着してみた感じは、想像以上にバンドでしっかり固定することが重要…というより、体全体でゲームプレイできることで必然的かつ想像以上に動きが激しくなるため、しっかり固定しないとゲームに差し支えが出るといった感じ。
最初少しゆるめに固定してしまったため少しヘッドセットが下がり気味になって、頬骨あたりが若干圧迫される感じがしましたが、あらためて深く固定するとすぐに問題は解消されました。
Oculus Goと比べると100gほど重いため、Oculus Goの装着時よりは若干重さは感じたものの、ゲームプレイ中に気になるものではありませんでした。重量感に関してもいかにきちんと固定するかが大事で、装着が甘いとヘッドセットが前下がりになるため自然と重さを感じるようになってしまうため、やはりきちんと固定することが大事です。
プリインストールされているゲームをいくつか遊びましたが、場所を固定しない「ダンスダンスレボリューション」とでもいうようなシステムの音楽ゲーム「Beat Saber」がかなり面白かったです。
というのも、ヘッドセットの音声がかなり立体的で、前後左右の音響効果を感じられたのが大きいと思います。まさに、FPSなどのゲームをしたら楽しいだろうなと期待感を抱かざるを得ないクオリティです。Beat Saberで遊べるEDMで気分良く軽快に体験できました。
他にもテニスゲームがあったのですが、驚いたのがコントローラーの微妙な角度変化に対応して繊細なボールコントロールが可能になっていたこと。何がすごいって、リアルな実力よりもちょっと上手な感じにアップデートしてくれるのでゲームをやる達成感に通じている点です。良い感じにリアリティを損なわずに、グッドテニスプレイヤー感覚を味わえます。
プリインされているゲームはどれもシンプルな設計なものでしたが、どれも熱中できたのはひとえに没入感とリアリティ。前述している通り3DoFとは全く操作感が異なり、「そのままVR空間にいながら遊ぶ」といった感覚ですので、単純にコンテンツの充実と認知度アップさえ図れれば「VRゲーム楽しみたいからOculus Quest」といった選択でオーケーとなるはずです。
β版として発表されているキャスティング機能を使えば、Oculusモバイルアプリやテレビへ、プレイ中の視界の映像をキャストする事も可能となるため、みんなで一緒にプレイする楽しさも共有できます。
意外とテクノロジー面で感心したのは、自分がいる空間をトラッキングする「ルームスケール」機能。遊ぶ空間を測定し定義する機能で、Oculus Questを使うための準備動作機能ですが、サイバーな網目の空間がリアルな空間上に現れ、その網目で囲われた空間に飛び込むことでOculus Questがスタートするという行為そのものに興奮させられました。周囲のものにぶつからないようにするOculusガーディアンシステムなるものも搭載しているそうです。
Oculus QuestとOculus Goの違いは?
率直な意見として、Oculus Quest買いなのどうなの?と問われれば、「VRゲームに興味あり」なら買いでオーケーだと思います。それくらい新鮮かつ、今後はベーシックとなり得るゲーム体験だと感じました。しかし、「VRってものに興味がある」という感じであれば待ちでもいいかも。
繰り返しかつ個人的な意見になりますが、これからのOculus Questの行く末を占うのは、間違いなくキラーコンテンツが出るかが鍵になると思います。大きな話になってしまうので割愛しますが、結局はみんながプレイしているゲームが生まれてから買っても遅くはない、ということです。
じゃあ、とりあえず価格もお安いしOculus Goでいいの?なんて意見もあるかもしれませんね。そういった考えでも良いとは思うのですが、まず本記事でレビューしたような「VR体験」はOculus Goでは味わえないことは念頭に置いておいてください。前述の通り、3DoFと6DoFで体験が全く異なるためです。しかし、3DoFのOculus GoがOculus QuestにVR体験として劣るか…というのはやや早計。
Oculus Goには、様々なユーザーと交流できる「ルームス」や、一緒にコンサートやスポーツ観戦ができる場と機能が用意されています。つまり、Oculus Questよりもユーザー同士のコミュニケーションをVRでよりシームレスかつタイムレスに行える装置がOculus Goなのです。また別の機会にあらためてOculus Goで出来うる未来については語りたいと思いますが、「VRを体験してみたい」また「VRを暮らしの中で活用したい」という人には、Oculus Goこそおすすめしたいデバイスです。
ゲームがVRの魅力を感じやすい入り口なのは確かなので、いっそのことOculus Questを存分に楽しんだ後に、Oculus Goで暮らしとコミュニケーションを便利にする活用法を試してみるなんて強欲な買い物もおすすめしたいところです。