ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、40年ぶりに復活したフランスのスポーツブランド・アルピーヌを紹介。肝心の走りはどうでしょうか?
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【登場人物】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。
安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在はフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。
【今月のクルマ】アルピーヌ/A110
SPEC【ピュア】●全長×全幅×全高:4205×1800×1250㎜●車両重量:1110㎏●パワーユニット:1798㏄直列4気筒ターボエンジン●最高出力:252PS(185kW)/6000rpm●最大トルク:320Nm(32.6㎏f-m)/2000rpm●JC08モード燃費:14.1㎞/ℓ●790万〜841万円
安ド「殿! 今回は久しぶりのスポーツカーです!」
永福「だな」
安ド「しかもフェラーリと同じミッドシップです!」
永福「うむ」
安ド「スポーツカー冬の時代なんて言われてますけど、アルピーヌに乗ってたら注目度がすごかったです! 特に輸入車に乗ってる人がジロジロ見てました!」
永福「クルマ好きなら誰もがアルピーヌに注目するだろう」
安ド「運転しててもすごく楽しいんですよ! なんとも華麗に曲がってくれるので、意味もなく車線変更したくなりました!」
永福「まったくだ」
安ド「さすがにフェラーリにはかないませんけど、アルピーヌ、最高ですね!」
永福「いや、今のフェラーリを買うよりも、絶対にアルピーヌのほうが楽しいぞ」
安ド「えっ! フェラーリを崇拝する殿が、まさかそんなことを……」
永福「私がいま乗っている古いフェラーリなら、それなりに性能を発揮させられるが、現代のフェラーリは、もはや速すぎてどうにもならない。しかしこのアルピーヌは252馬力。実にちょうどいいのだ」
安ド「馬力は多ければいいってもんじゃないんですね?」
永福「馬力がありすぎると、アクセルを全開にすることも難しくなる。先日、フェラーリ812スーパーファストに乗った際、高速道路でアクセルを全開にしたら、その場で一回転しそうになった」
安ド「それは怖いですね!」
永福「812は800馬力。一方、私のフェラーリ328は30年以上前のクルマなので、270馬力しかない。それくらいが公道で楽しめる限界ではないか?」
安ド「なるほど! アルピーヌの252馬力は、ちょうどいいんですね!」
永福「それだけではない。アルピーヌは1110㎏と非常に軽い。しかもエンジンがキャビン後方にあるミドシップ。鼻先が猛烈に軽いから、ハンドルを切ると瞬時に向きが変わる」
安ド「それが車線変更したくなる理由なんですね!」
永福「現在新車で買えるスポーツカーの中では、アルピーヌが最もクルマ好きのココロを打つ。もうフェラーリやランボルギーニのことは忘れていい! アルピーヌがスポーツカーの頂点だ!」
安ド「マジすか! でもアルピーヌにはしかATありません。その点が残念すぎます! 納得できません!」
永福「フェラーリにもランボルギーニにも、もはやATしかないぞ」
安ド「それはそうですが……」
永福「それより私が残念なのはスタイルだ。あまりにも元祖アルピーヌのデザインの再現にこだわり過ぎていて、微妙にバランスが悪い点がある」
安ド「僕は元祖アルピーヌにそれほど思い入れがありません!」
永福「これはしたり」
【注目パーツ01/ステアリング】男心をくすぐるニクい演出
変速用のパドルがついているだけでなく、ブルーのセンタートリムも精悍で、全体的にスポーティな雰囲気です。そして注目は、右下の赤いスポーツモードボタン。まるで戦闘機のようなイメージで、男心をくすぐります。
【注目パーツ02/カードキー】挿しこむことを忘れずに
アルピーヌの母体であるルノーでは、だいぶ前からこのカード型キーを採用しています。現在主流のカード型スマートキーと間違えてしまいますが、これは助手席前の穴に挿し込まないとエンジンがかかりません。
【注目パーツ03/デジタルメーター】珍しい表示のエンジン回転計
デジタルメーターを採用していますが、丸い円の中で針が動く従来のアナログメーター風の表示は、オールドタイプのクルマ好きの心を掴みます。左側の回転計は、内部にデジタル数字も表示される珍しいタイプです。
【注目パーツ04/シート】洗練されたスポーツシート
巷にバケットシートは数あれど、これだけ素材、形状ともに凝った造りのものはなかなかありません。なお、上級グレードの「リネージ」のレザーシートは、形状はスポーティながら、高さ調整とリクライニング機能も備えています。
【注目パーツ05/リバイバルデザイン】名車を現代風にアレンジ
下側が初代A110の顔です。今回、およそ40年の時を経てリバイバルされたわけですが、MINIやフィアット500同様、再現度は高いと思います。ただし、最新の安全性などを実現するためか、全体のバランスは微妙に悪くなっています。
【注目パーツ06/乗り味】運転する歓びを感じられる
やはりミッドシップなので走りがいい! 前後重量配分も44対56となっていて、非常に回頭性が高く、コーナリングが楽しいクルマに仕上がっています。足まわりもフランス車らしい優しさとスポーティさを両立しています。
【注目パーツ07/センターコンソール】洗練されたインテリアデザイン
運転席と助手席間のセンターコンソールは橋のような浮いた形状が特徴的です。さらに、赤いエンジンスターターボタンや3つのシフト切り替えボタンなども、とにかくスポーティ。量販車にはない洗練された雰囲気が最高です。
【注目パーツ08/ディスプレイ】大きめのオーディオ用表示板
内装正面にはディスプレイが埋め込まれています。日本車なら当然カーナビ機能が使えますが、A110のこれは、主にオーディオ操作のために存在しています。フランス人は日本人のようにカーナビを必需品とは思っていないのです。
【注目パーツ09/エンジン】見せないためのカバー
エンジンはキャビンの後方、このリアガラスの中に搭載されています。フェラーリはじめ現代のスーパーカーたちは、ガラス越しにエンジンの姿を見せる傾向にありますが、A110は奥ゆかしくも、カバーで隠しています。
【これぞ感動の細部だ!/ラゲッジスペース】最新スポーツモデルは使いやすさも重視
キャビン後方にエンジンを搭載するミッドシップ形式のスポーツカーというのは、後方にトランクを備えていないことが多いもの。しかしこのA110は、エンジンがコンパクト設計なこともあって、フロントだけでなくリアにもしっかりトランクを採用しています。フロント、リアともに、底は浅く、幅も狭いですが、あるだけましです。
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撮影/我妻慶一