デジタル
2019/6/27 22:00

アジア版CESでデジタル系ライターが見た「もうすぐやってくる暮らし」【鈴木朋子のCES ASIA探訪記】

私たちは普段、日本国内での新たな技術や新製品の発表にドキドキわくわくしています。でも、ちょっと海外に目を向けると、異なる文化圏での開発ならではのテクノロジーや、国内でも注目されている製品の一歩進んだ形など、国内では目にすることのない刺激的な世界が広がっています。

そこで、今回はあまり海外市場をご存じない方でも、世界のコンシューマー向け最新技術がのぞけるようなレポートをお送りしたいと思います。お出かけした場所は、中国・上海で6月11日から開催された「CES ASIA」。CES ASIAは、毎年アメリカで開催される家電技術展示会「CES」のアジア市場向け展示会です。

 

↑中国・上海で開催された「CES ASIA」

 

レポート1本めは、CES ASIAから真面目に未来を考察したいと思います。今年の注目ポイントは、「5G」「人工知能(AI)」「拡張現実(AR)/仮想現実(VR)」「スタートアップ」「自動車技術」。特に自動車ブースは会場を大きく取り、自動運転や電動自動車などの展示がありました。日産は電気自動車のコンセプトカー「Nissan IMs」を展示。自動運転時にはフロントシートを回転させ、後部座席との会話を楽しめるそうです。

 

↑115kWhの大容量バッテリーを搭載する「Nissan IMs」

 

スタートアップのブースには、SOMNIACSの「Birdly」が体験コーナーを用意していました。VRとロボティクス技術により、自由に空を探検することができる装置です。「鳥のように自由に空を飛び回りたい」という人類の夢がかなうときが来たのかもしれません。

 

↑前方に風を起こす装置も付いており、没入感が高い「Birdly」

 

「未来すぎてピンとこない」という人もいるかもしれませんね。CES ASIAを開催しているCTA(全米民生技術協会)によると、日本は2020年の東京オリンピックに向けて、5Gや自動運転、コネクテッドカーの実用化に進んでいくのではと推測しています。開催まで間もないとはいえ、日本も大きな変革の時期を迎えているのかもしれませんね。

技術力を誇るファーウェイの今後

今年のCES ASIAは、スマートフォンやパソコンなどを開発、販売する中国メーカー「ファーウェイ」の基調講演から幕を開けました。ITニュースに敏感な人は、ファーウェイといえばアメリカによる制裁を思い浮かべるかもしれません。しかし、登壇した邵洋(Shao Yang)最高戦略責任者は、その件に関して特に触れることはありませんでした。

 

↑ファーウェイ最高戦略責任者 邵洋氏

 

邵洋氏は同社の歴史を振り返り、ファーウェイに入社した20年前から社員が夜遅くまで会社に残り、一丸となって技術の向上を取り組んできたことをアピールしました。そのかいあって、スマートフォンの性能が向上したと言います。

邵洋氏は、「当時は社内でファーウェイを使い、社外でAppleを使っている社員もいました。そこで消費者体験の向上に努めました。本体を薄く、軽くし、指紋認証やダブルカメラを搭載。ライカと協力して撮影レベルを高める、ポルシェと協力してブランド力を高める、AIチップを取り入れたり、トリプルカメラを搭載するなど、毎年イノベーションを起こしてきました」と、自社の技術力で革新を起こしてきたことを強調しました。

「全世界で携帯電話を使っているユーザーは5億人います。ファーウェイは2011年あたりから消費者向けの領域を拡張してきました。今年の第1四半期で世界2位になり、本来は今年の第4四半期で世界1位になる予定でしたが、少し時間がかかりそうです」(邵洋氏)。

 

↑ファーウェイがリリースしてきたスマートフォン

 

また、スマートフォンを中心として、テレビや車などの8製品、そしてスマートホームやモバイルオフィスなどのIoTデバイスを結び付けていく「1+8+N」構想を発表しました。「HUAWEI HiLink」と銘打たれたこの構想において、ファーウェイはスマートフォン以外を作らないとのこと。スマートフォンをHiLinkに対応したデバイスに近づけるだけで接続できる環境を作り、スマホ以外のデバイスから他のデバイスをコントロールすることや、デバイス同士の動きを連携させることを考えているそうです。他の家電メーカーとの協力で実現していきたいとのことですが、常に自分の周囲の機器がスマートに動く生活は人間に新たな時間を生み出してくれそうですね。

 

↑「HUAWEI HiLink」でスムーズな連携を実現する

 

展示会場には、HiLinkの対応製品が多く展示されていました。写真はその一部ですが、シンプルなデザインはインテリアの邪魔にもならず、どの世代も受け入れられそうです。

↑スマートホームに関連するセンサー類や飲料水ヒーター、コンセントなどのHiLink対応製品

 

CTAが注目するスマホ決済「WeChat Pay」

ファーウェイはスマートフォンを中心とした世界の構築を目指していますが、グローバルな視点でのスマートフォンのトレンドは何なのでしょうか。CES ASIAを主宰しているCTAのイノベーション&トレンド担当シニアディレクター Ben Arnold氏にもお話を伺いました。

↑CTAのイノベーション&トレンド担当シニアディレクター Ben Arnold氏

 

Ben Arnold氏は、「スマホ決済」を挙げました。「今回のCES ASIAでも、中国のユニークな側面としてWeChat(中国のメッセンジャーサービス)が提供するWeChat Payの動きが目立っています。WeChatはSNSとしての利用だけではなく、商取引の世界にも浸透しています」とBen Arnold氏は述べました。

WeChatは、中国テンセントが提供するメッセンジャーサービスです。MAU(月間アクティブユーザー)は10.82億人(2019年1月発表)と、驚異的なユーザー数を誇っています。WeChatでは、グループチャット、音声通話、SNS機能などが提供されており、日本でいうとLINEにあたるサービスでしょうか。WeChatのアカウントで決済を利用できる「WeChat Pay」も生活に浸透しています。通訳の方に聞いたところ、学校の教材費などもWeChat Payで支払いができるとのこと。展示されているスマートウォッチもWeChat Payの支払いに対応していました。もはや小銭を扱うことが日常の生活で少なくなっているそうです。

日本でも「〇〇ペイ」と名付けられたスマホ決済サービスが次々とリリースされ、お得なキャンペーンも行われています。どのサービスが生き残るのか難しいところですが、消費者としてはスマホさえあれば簡単に決済できる社会になると嬉しいですね。

クルマは自動運転、ドアを開ければ電気がつき、決済はすべてスマホやスマートウォッチで完結。何となく信じがたい未来は技術の進歩によりすでに実現されており、国内での実用化まであと少しの段階に来ていることを感じました。次回はCES ASIAで見つけたおもしろガジェットを紹介します。お楽しみに!