デジタル
2019/10/14 7:00

【西田宗千佳連載】伸びる買い替えサイクルのなかで「上下」に別れるテレビ市場

Vol.83-4

 

これまで、日本市場のテレビは他国に比べて単価が高い、と言われてきた。大手日本企業の製品が市場の中心であったため、他国の低価格製品があまり入って来られず、なかなか売れなかったからだ。唯一LGエレクトロニクスは気を吐いていたが、これも単純な低価格製品ではなく、「最新の有機ELモデルをいち早く市場導入し、日本メーカーよりは安い。が、決して格安テレビではない」といった位置付けだった。

 

ところが、この2年くらいで中国系メーカーが本気で日本市場での勢力を拡大しており、シェアを伸ばしている。これらは主に、かつては進出が難しいと考えられていた低価格な液晶テレビでの出来事だ。

 

テレビも機械である以上壊れる。昨今は、地デジ移行からすでに8年が経過し、テレビも代替えする時期ではある。だが、ブラウン管の時代と異なり、液晶を使った薄型テレビは非常に壊れづらい。過去のテレビに比べて買い替えペースは緩やかになっていて、8年経過しても急激に買い替え需要が伸びているわけではない。とはいうものの、8年も経過すれば性能は大幅に変わる。4Kテレビでは、お買い得な価格帯の製品であっても、8~10年前の2Kテレビと比べれば性能が格段に優れている。

 

そこで再び「10年使うから20万円以上払う」という発想の人々は日本メーカー製を選んでいるが、そうでない人が出てきたことが、中国系メーカーの躍進につながっているのだ。

 

とはいえ、単純に日本メーカーのシェアがどんどん下がっているか、というとそうではない。販売力・ブランド力の点で日本メーカーの力は依然として強い。ただ、トップ4のうち東芝(REGZA)がシェアを下げており、さらに新製品への切り替えの端境期だと、ソニーまで抜いてハイセンスが一時的にシェア3位になるといったケースが出てきている。低価格製品で既存メーカーと中国系メーカーの戦いが本格化しており、それが状況変化につながっている。

 

TCL 43P8B

 

すなわち、「4K・有機ELや8Kの高画質製品はまだ日本メーカー優位」であるが、一方、で「低価格な液晶モデルはさらに差別化が難しくなって価格面で中国メーカー優位。4Kでも低価格モデルは浸食される可能性が高い」という構図なのだ。

 

なお、30インチ以下の小型テレビについては、こうした図式が当てはまらない。すでに日本メーカーは小型テレビに力を入れておらず、小型テレビそのものが「売れない市場」になっているからだ。寝室や子供部屋、書斎などからテレビが消えていることになるが、これは「テレビというメディアの地位低下」に大きな影響を与えている。

 

なお、この「個室」市場に向けては、テレビではなく「ディスプレイ」が売れており、ゲームなどの用途に使われているのだが、それらの市場ではテレビメーカーの存在感はなく、まったく別の企業が戦っている。

 

 

 

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