健康を維持するために大切しなければいけない身体の部分は、脳、胃、肝臓、腎臓、心臓などさまざまですが、中でも身体全体の健康を考えた場合は、「腸」がまず第一という意見をよく耳にします。
しかし、実際には「なぜ腸が大事なのか」という突っ込んだ話に至ることは限られており、筆者もあまり知りませんでした。そもそも、腸の中には数百兆個とも言われる大量の細菌(善玉・悪玉・日和見)がいるため、一般にその全貌を説明することが難しいからということもあるかもしれません。
そんな風潮の中、元Jリーガーの鈴木啓太さんが真剣に「腸のことを考えよう」と一念発起。これまで門外漢には難しかった腸内環境の実態を解析し、研究成果を社会に役立てようという試みを行っています。解析のために収集した「便」は、アスリートばかりのもので、なんと500人、1000検体以上分。
そこからわかってきた腸の実態とは何だったのでしょうか? 今回はご本人直々に話を聞いてきました。
100%のコンディションではないと成果が出せない。アスリートにとっての腸活の大切さとは!?
ーー鈴木さんが浦和レッズを退団された後、腸内環境の解析を始めることになった経緯とは何だったのでしょうか。
鈴木啓太(以下、鈴木) 幼少の頃から元々腸内環境には興味がありました。調理師だった母親が結構健康オタクみたいなところがあり、「人間は腸が一番大事だから」と言われ続けていたせいもあるんですけど、そのおかげでできるだけ温かい物を体に入れて、出来るだけ冷たい物を取らないようにする……といったことを心がけていました。
その後、浦和レッズというチームで16年間プレーをしていたんですけど、元々腸内環境を意識する環境で育ったこともあり、現役時代も自分のコンディションを腸、お腹で測るところがありました。
アスリートって、常々練習やトレーニングを行っていますが、それは100%のコンディションでないと、パフォーマンスが上がらないものなんです。だから、これは私の場合ですけど、100%のコンディションを保つために、常に便の状態を気にしていました。「今日は体調良さそうだな」「今日は体調悪いな」とか。良くない場合は、「昨日何食べたんだっけ?」「あ、昨日はこれだけ冷たい物を取っちゃったな」と振り返ったり。
そうやって自分の体調を便で測っていたのですが、このときはまだ漠然としたもので「数値がどうだから」ということはわからなかった。だから、一般的に人間が感じる程度のことしかやっていなかったんですけど、引退する直前にある方から「腸内環境を解析し、数値化できるようになった」というお話を聞きました。これはアスリートにとってはもちろん、あらゆる人にとって欠かせないことだろうと思って、腸内環境の解析を目的としたAuBという会社を設立するに至りました。
最初はなかなか受け入れてもらえなかった。27競技のアスリート500人以上から便の収集
ーーこの解析にあたって、27競技のアスリート500人以上から便を収集したと聞いています。前例がないことですし、これがまず大変だったんじゃないかと思います。「便を取らせてください」と言うと、皆さんなかなか嫌がるんじゃないかと……。
鈴木 大変でしたね。最初は受け入れてくれない方も多かったですし。「便を使って何がわかるの?」っていうことに対して、その時点でわかっている説明をしていかなければいけないことも大変でした。
しかし、便を集めて、その解析結果をアスリートの皆さんにフィードバックしていく中で、徐々に信頼を得ていきました。例えば腸内環境を解析することで、「こういう人は筋肉が付きづらい」「こういう腸内だと、こうなる可能性がある」といった研究成果を出せるようになっていきましたので。
ーー27競技を選んだ理由は何だったのですか?
鈴木 これは競技数を決めていたわけではなく、様々な競技に関わるアスリートにお願いしていった中で、結果的にこの数になったというだけです。
ただ、アスリートにとっての課題というのは、競技、あと選手の特性ごとに異なるものなので、これらは包括的に考えて集めました。その便をそれぞれに深掘りするフェーズに入っていったのですが、やはりこれだけの数ですので、解析結果も徐々に明確になっていきました。
お腹の中にたまごっちがいると思えば良い
ーー具体的な解析フローはどういったものでしょうか。
鈴木 元々は自社のラボで、解析まで行っていました。現在、事前に取った食事のアンケートなどとも照らし合せて、腸内環境のデータを見て、そこから傾向だったり、アスリート個々が持つ課題に対し、「どんな風にアプローチすべきか」ということを分析して、フィードバックするという流れです。
ーーやはり一般人ではなく、アスリートの便だからこそ、こういった解析がしやすい……ということもあったのでしょうか。
鈴木 はい。アスリートの腸内細菌は多様性が高いのです。通常、人間の腸の中には1000種類くらい、100~500兆個の腸内細菌がいると言われています。重さにして1~1.5キロです。
この1000種類の腸内細菌のうち、すでに200~300種類は検出できているのですが、一般の方、特に病気疾患を持たれている方に比べて、アスリートはこの腸内細菌の種類の数が多いんです。
腸内細菌の種類が多いと、免疫力が高くなると言われているので、その意味ではやはり「病気になりにくい」体を保つためには腸内を整えておくことが大事だろうという解析結果が出ています。
このように言うと少々難しいですが、わかりやすく言うとお腹の中にたまごっちを飼っていると思ってください。たまごっちを放っておけば、死んでしまうことがあります。でも、大事にしていれば、元気に育ってくれるでしょう。これを腸に置き換えてみると、わかりやすいかもしれません。腸も放っておけば体全体に影響を与えるし、きちんと整えておけば、健康を保つことができると思います。
腸と脳には深い関係があった!?
ーー余談ですが、筆者は自律神経が乱れていて、過敏性腸症候群という病気をしています。例えば、電車に乗ると、急にお腹が痛くなったり、車を運転して渋滞にハマると、やはり急にお腹が痛くなったり。これはどういったことが原因で起こるものですか?
鈴木 過敏性腸症候群の方は結構いらっしゃいますよね。私の周りのプロのサッカー選手でもいましたし、ヒドいケースだと、そのせいでプレーできないという選手もいました。
この過敏性腸症候群にまつわる話があるのですが、実は腸と脳って繋がっているんです。
脳を司るセロトニンという幸せホルモンは、ほとんどが腸で作り出されるものです。そのセロトニンが脳にいくことで、自律神経が良くなり、また腸内も良くなるというサイクルになるんですが、過敏性腸症候群の方の場合、これがなかなか難しい。そもそも自律神経はストレスや食事によって乱れることがあるのですが、食生活は正せたとしても、現代でのストレスはなかなか減らすことができない。「お腹が痛い」「精神的なことから来ている」「リラックスしよう」と思ってもなかなかできないし、セロトニンはうまれてこないですから。
だからこそ、「腸活」が良いと思います。まず、お腹を大切にすることで、脳にも良い影響が生まれます。下痢しないように、食事に気をつけるなどを意識されると良いと思いますよ。
腸内解析の結果を活かして、アスリートはもちろん、一般人にも役に立つ製品に転じたい
ーーこれらの腸内解析を、今後どう活かしていきたいと考えていますか?
鈴木 アスリートが持っている課題を解決することはもちろんですが、その効果を持って、今度は例えば高齢者の方、子どもたちなどに効果が出るような製品に転じられると良いなと思っています。
今は、サプリメントに転じて12月16日から発売予定です。現在クラウドファンディングMakuakeにて先行発売しており好評をいただいていますが、これはまだ第一段階です。この解析結果を持って、食はもちろん、農業にも進んでいけるかもしれません。さまざまな事業のソフトとしてもなり得るのではないかと思っています。
今やっている便の収集は今後も続けて、価値ある解析を行っていきたいと思っています。
鈴木啓太さんの、アスリート目線からの腸活への思いは、医療からの声とはまた異なり、身近で説得力のあるものでした。腸内解析の結果を活かした第一段階となるサプリメントは、下記のクラウドファンディングMakuakeにてリターン商品として先行販売中です。気になる方は是非チェックしてみてください。
<Makuake ※~11/29まで>
https://www.makuake.com/project/aub/
<Aub Store ※発売日は12/16>
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