最近「宇宙の民主化」が活発化しています。民間企業が宇宙船を開発したり、宇宙と地上をつなぐメディアが開設されたり。より多くの人たちが宇宙ビジネスに対してエネルギーを注いでいるように見えますが、同様に注目したいのが「宇宙食の多様化」です。
「宇宙食=味気ない固形物」というイメージは昔のもの。いまでは実にバラエティ豊かで、しかも一般市民にもとても身近なメニューが宇宙食になっているんです。2019年10月にはローソンの人気商品「からあげクン」が宇宙航空研究開発機構(JAXA)から“プレ宇宙日本食”の認証を受けました(下の画像)。
からあげクンといえば、鶏のむね肉を揚げたローソンのホットスナック。1986年に誕生して以来、累計販売数は32億食以上という、まさにローソンを代表する味のひとつです。レギュラー、レッド、北海道チーズなどに加え、地域限定の味などこれまでに合計265種類を販売してきたそうです。
そして、ローソンの看板商品を宇宙食として開発する宇宙プロジェクトを2017年に発足。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の意見などを受けながら、宇宙仕様にフリーズドライ化した「スペースからあげクン」の開発の取り組みが始まりました。数十回の試作を経て2019年10月、11ヶ月の保存性試験に合格し、JAXAが宇宙日本食認証基準の特例と定める「プレ宇宙日本食」としての認証を受けたのです。
今後は保存性試験を継続して、宇宙食の基準ラインとなる1.5年までをクリアし、さらに衛生面や保存面での様々な審査を経て、2020年には「宇宙日本食認証」を受けたいと目指しているとのこと。
キユーピーマヨネーズから柿の種まで!
宇宙日本食とは、食品メーカーが提案する宇宙食をJAXAが評価して、一定の基準を満たすと認証されるもの。国際宇宙ステーションに滞在する日本人宇宙飛行士に日本食を楽しんでもらおうと、私たち庶民にとっても身近なメニューが宇宙食として開発されています。ここではJAXAから宇宙日本食認証を受けたメニューを一部ご紹介しましょう。
キユーピーマヨネーズ
初の宇宙日本食に認証されたのが、キユーピー株式会社の「キユーピーマヨネーズ」と「アヲハタ白がゆ」。キユーピーでは2004年から宇宙日本食開発プロジェクトに参画し、宇宙日本食の第一号に認証されました。キユーピーマヨネーズの中身は市販されているものとまったく同じ。宇宙には最初の数日分の生野菜が携行されるので、宇宙でマヨネーズをつけてスティック野菜を食べた日本人宇宙飛行士がいたかもしれません。
亀田の柿の種
おつまみとして不動の人気を誇る「亀田の柿の種」も宇宙食に認証されています。3年間の開発期間をへて、亀田製菓設立60周年となった2017年に認証を取得しました。宇宙日本食の亀田の柿の種は、専用のパックに入れられ、無重力の宇宙空間でも飛び散らず食べられるように工夫されています。ちなみに、柿の種とピーナッツの割合は約6:4だそう。
リケンのわかめスープ
理研ビタミン株式会社の「わかめスープ」と「お吸い物」は宇宙日本食に2007年に認証されました。特別に開発された宇宙食用包材に、細かくカットされたわかめなどが入れられ、特殊な飲み口からスープを飲むことができるのだそうです。
キッコーマン「丸大豆生しょうゆ」
和食には欠かせない調味料、醤油も宇宙日本食のリストに入っています。キッコーマン食品では、宇宙空間では骨密度が低下しやすく、ナトリウムを摂取するとカルシウムの代謝が進むことから、食塩分が控えめの「キッコーマン いつでも新鮮 塩分ひかえめ丸大豆生しょうゆ」をエントリーし、2017年にJAXAに認証されました。無重力空間でも一滴ずつ出すことができる、市販品と同じボトルがアルミパウチに包まれています。
2019年11月28日時点で宇宙日本食には、20社が作る36品目が認証されています。宇宙日本食は外国人宇宙飛行士の間でも人気があるそうなので、和食・日本食は地球だけでなく宇宙でも広まっているとも考えれますね。そして、民間人も気軽に宇宙に旅行に行けるようになる未来には、持っていきたい宇宙食のレパートリーがもっともっと増えているかもしれません。