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2019/12/20 19:30

ジャーナリスト 池上彰さんが解説!「SDGs」のここだけは覚えておきたい

「SDGs(エスディージーズ)」——―政府や自治体をはじめ、近年では企業や大学などが積極的に取り組んでいることもあり、一度は目にした・耳にしたことがあるという人も少なくないはず。ニュースでは、よく「持続可能な開発目標」と訳されていますが、それだけでは、どういう取り組みなのかを想像しづらいですよね。

 

今回、難しいニュースもわかりやすく解説することでおなじみの池上彰さんが、都内の小学生に「SDGs」の講義を行うと聞いて、編集部が取材してきました。

↑この講義は、学研プラスが池上彰さんの新しい書籍に収録するために開いた特別なもの(※書籍は2020年発行予定)。講義が開かれた東京都・市ヶ谷の「JICA(ジャイカ)地球ひろば」は、開発途上国への国際協力を通じて「SDGs」を推進しているJICA(独立行政法人 国際協力機構)の施設です。世界が直面するさまざまな課題や開発途上国とのつながりを体感できる展示が開かれており、年間約4万5000人が足を運んでいます。写真は、世界の国々から生まれる“ごみ”の量を、見た目と重さで体感できるコーナーにて

 

「SDGs」とは何の略?

池上さんの講義の前に、正式名称を知っておきましょう。「SDGs(=持続可能な開発目標)」とは、「Sustainable Development Goals(サステイナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の略。外務省のホームページには、「2015年9月の国連サミットで採択された『持続可能な開発のための2030アジェンダ』にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいます」と紹介されています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

 

「SDGs」を一言で説明すると?

池上さんは子どもたちに対して、「SDGs」を次のように紹介。

「『SDGs』というのは、世界を変えるための17の目標です。世界の国々は、さまざまなことで意見が対立していますが、『同じ地球に住む以上、これだけは一緒に取り組んでいきましょう』と決めたものなんですね。サステイナブルとは、持続可能という意味です。これは、地球が私たちの住み続けられる環境であり続けるようにという意味であると同時に、私たちが息切れせずに取り組み続けられることをしよう、という意味があります」(池上さん)

 

ちなみに、なぜ「SDGs」が定められることになったのでしょうか?

 

「SDGs」が策定された背景は?

「SDGs」を語る上で欠かせないのが、前身となる「MDGs(ミレニアム開発目標/Millennium Development Goals)」の存在です。2000年に採択された「国連ミレニアム宣言」と、1990年代の国際開発目標を統合したもので、「貧困・飢餓」「初等教育」「女性」「乳幼児」「妊産婦」「疾病」「環境」「連帯」の8つの目標を、専門家間の議論を経て2001年に策定したもの。

 

「MDGs」は、国際社会における開発分野の羅針盤として、2015年までに一定の成果を上げました。一方で、未達成の目標や、時代の移り変わりによる新たな課題に対応するべく定められたのが、「SDGs」。「MDGs」が開発途上国のための目標だったのに対して、「SDGs」は気候変動対策など、先進国が取り組むべき課題を含んだ2030年までの国際的な目標です。

 

では、「SDGs」を構成する17の目標とは? それぞれ、池上さんに解説していただきましょう。

 

「SDGs」17の目標がそれぞれ示す意味とは?

1.NO POVERTY ― 貧困をなくそう ―

「貧困には“絶対的な貧困”と“相対的な貧困”があります。前者は、世界的に見て貧しい状態。後者は、国内の他の人に比べて貧しい状態です。たとえば、日本でも格差が広がっていて、『子ども食堂』や無料学習支援が全国的に進んでいますね。絶対的な貧困をなくすのが一番大事だけれど、豊かな人と貧しい人との差がなるべく少ない国づくりが必要とされています」(池上さん)

 

2.ZERO HUNGER― 飢餓をゼロに ―

「飢え死にするような人が出ないようにしましょう、ということですね。これは貧困問題とも関連していて、『食べるものはあるけれど栄養バランスが取れていない』という、相対的な改善を目指すものでもあります」(池上さん)

 

3.GOOD HEALTH AND WELL-BEING ― すべての人に健康と福祉を ―

「日本は、国民の誰もが健康保険に加入する“国民皆保険”という制度を取り入れています。一方、同じ先進国のアメリカでは、誰もが健康保険に入っているわけではありません。そのため、医療費がとても高額。たとえば、盲腸(虫垂炎)の手術を保険なしですると、100万円ほど掛かります。なので、保険に入っていない人は症状が深刻な状態になるまで、病院に行かない。というより、行けないんです。日本にいると当たり前のように感じる医療保険制度は、世界的に見て、とても恵まれたものなんです」(池上さん)

 

4.QUALITY EDUCATION ― 質の高い教育をみんなに ―

「日本では、義務教育で中学校まで通いますね。高校などへの進学率も約99パーセント。でも、世界では小学校に通えない子どもがたくさんいます」(池上さん)

「その理由の一つが、水問題です。水道や井戸が整備されていない国では、遠くの川までバケツを持って水汲みに行くのは子ども。とりわけ女の子の役目です。学校に通えなかった子どもが親になると、どういった問題が起こるか。字の読み書きができないんですね。もっとひどい場合は、汚れた水が身体に悪いとわからずに赤ちゃんに飲ませてしまい、赤ちゃんが下痢で死んでしまうような事態が途上国で起きています。そういった悲劇を防ぐためにも、教育が必要なんですね」(池上さん)

 

5.GENDER EQUALITY ― ジェンダー平等を実現しよう ―

「日本でも近年、医学部入試において、女性の合格者を減らすための意図的な操作が行われていることが発覚し、問題になりましたね。女性は医学部に入って医師になっても、結婚して家庭に入ったり、出産して子育てをしたりと、ずっと働けないと考えられているからです。これって、差別ですよね。それはおかしいじゃないか、男性も女性も平等であるべきだということです」(池上さん)

 

6.CLEAN WATER AND SANITATION ― 安全な水とトイレを世界中に ―

「教育のところでも話しましたが、安全な水が手に入ると、さまざまな問題が解決する。そして、今の日本では下水が整備され、水洗式のトイレが普及していますが、開発途上国では、まだまだ水洗式のトイレが一般的ではなく、不衛生な環境にあります。日本でも、私が子どもの頃は“ぼっとん便所”と言って、汲み取り式のトイレでした。世界でも、清潔な水洗トイレが増えるといいですよね」(池上さん)

 

7.AFFORDABLE AND CLEAN ENERGY ― エネルギーをみんなに そしてクリーンに ―

「日本では、電気のない生活は考えられないですよね。日本の電気、つまりエネルギーの多くは、火力発電から生み出しているものです。石炭や石油を燃やして、水を沸騰させた際の水蒸気でタービンを回し、電力を生み出す仕組みです。しかし、石炭や石油を燃やすと、温暖化の原因となる二酸化炭素もたくさん出てくる。そのため、原子力発電が登場した頃は、二酸化炭素を出さないクリーンな発電方法だと言われていました。世界中で報道された2011年の福島原発事故の後でも、『事故さえ起きなければクリーンだ』と主張する国もあります」(池上さん)

 

8.DECENT WORK AND ECONOMIC GROWTH ― 働きがいも経済成長も ―

「経済成長というのは、国が豊かになるということです。ただ、その成長を支える人たちがいやいや働くのではなく、喜びを感じながら働ける環境をつくろうということです。あなたは、日本の『過労死』という言葉が海外でもそのまま通じるのを知っていましたか? つまり、海外の言葉に訳せない。なぜなら、海外では、働きすぎて死ぬなんていうことが考えられないからです。いま、『働き方改革』が叫ばれているように、日本は働き方を考え直すタイミングとなっていますね」(池上さん)

 

9.INDUSTRY INNOVATION AND INFRASTRUCTURE ― 産業と技術革新の基盤をつくろう ―

「国が豊かになっていくためには、人々が働く場所が必要ですよね。そのために必要なのが産業です。また、技術革新によって産業が発展すると、新しい仕事が生まれるということです」(池上さん)

 

10.REDUCED INEQUALITIES ― 人や国の不平等をなくそう ―

「平等というのは、貧困やジェンダーのところでも話したことですね。私たちは、生まれる国や性別を選ぶことができないからこそ、理不尽な不平等があってはならないという考え方です」(池上さん)

 

11.SUSTAINABLE CITIES AND COMMUNITIES ― 住み続けられるまちづくりを ―

「これは台風や地震など、自然災害に対する防災のことでもあるのですが、環境問題にも密接しています。なぜなら、近年、日本で台風の被害が頻繁に発生しているのは、温暖化によって海水温が上がり、日本近海で勢力が強まっているからです。すでに気付いている方も多いでしょうが、『SDGs』は一つひとつがつながっているんですね」(池上さん)

 

12.RESPONSIBLE CONSUMPTION AND PRODUCTION ― つくる責任 つかう責任 ―

「海洋プラごみが問題になっていますね。プラスチックは便利だけれど、分解されないので地球にごみが増えてしまう。それでは、私たちが地球に住み続けられなくなってしまいますよね。そのため、最近は木製のストローや、土に還る“生分解性プラスチック”によるレジ袋が開発されています。それが、地球に暮らす私たちの責任ですよね」(池上さん)

↑地球ひろばの展示を使って、ごみに関する講義も行われた。写真は、各国のレジ袋・エコバッグを展示したコーナー。タピオカの原料であるキャッサバ(タロイモ)を原料としたレジ袋も

 

13.CLIMATE ACTION ― 気候変動に具体的な対策を ―

「気候変動というのは、地球温暖化のことです。その影響の一つに、南極の氷が溶けることによる“海水面の上昇”があり、将来的に水没してしまう島が出てくると言われています。そのため、対策をしなければならない、と。最近話題のスウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリさんは、温暖化対策について訴えていますね」(池上さん)

 

14.LIFE BELOW WATER ― 海の豊かさを守ろう ―

「海洋プラごみは、海を汚すだけではなく、魚などが小さいプラスチックを食べてしまう問題もあります。その魚を誰が食べるか? 私たちですよね。安心して魚を食べ続けるためにも、海を守る必要があるということです」(池上さん)

 

15.LIFE ON LAND ― 陸の豊かさも守ろう ―

「森というのは、生物の食物連鎖が生まれる場所です。同時に、木々は二酸化炭素を吸収して酸素を出す役割もある。雨が降った時に、土に水を蓄えて洪水や土砂災害を防ぐ役割もあります。だからこそ、森林破壊や砂漠化は防がなければならないんですね」(池上さん)

 

16.PEACE JUSTICE AND STRONG INSTITUTIONS ― 平和と公正をすべての人に ―

「世界では、まだ戦争をしている国があります。なかには、水争いが原因になっているものもある。言い換えれば、地球の環境をよくすることで、新しい戦争が起きないようにすることができるんです」(池上さん)

 

17.PARTNERSHIPS FOR THE GOALS ― パートナーシップで目標を達成しよう ―

「豊かな国は、これからもずっと豊かであり続けられるように。そうでない国は豊かになっていけるように、世界各国が17の目標を達成するために協力し合いましょう、ということですね」(池上さん)

↑子どもたちの反応を確認しながら、解説を進めていく池上さん

 

以上の17項目について、具体例も交えながら解説していただきました。最後に気になるのは、現在、日本また世界の国々は、各項目をどれくらい達成しているのかということでしょう。

 

各国の達成状況は?

「JICA地球ひろば」では、世界各国の「SDGs」の達成状況がわかる展示コーナーがあります。各国のカードを差し込むと、目標の達成状況に応じた色にパネルが光るというもの。この仕掛けを使って、確認してみましょう。

■緑=目標に達している
■黄=努力を要する
■オレンジ=より一層の努力を要する
■赤=達成までほど遠い
■グレー=データ不足により測定不能

※出展:ベルテルスマン財団・持続可能な開発ソリューションネットワーク
※2018年時点の達成状況

 

・日本


日本は156か国中、15位。「質の高い教育をみんなに」が唯一、緑。国内における“子どもの貧困”が顕在化するなか、「貧困をなくそう」には黄がともった。また、自然環境関連の未達成が目立つ。

 

・アメリカ合衆国


世界一の経済大国、アメリカは35位。達成を示すグリーンの項目は、残念ながらひとつもない。

 

・中華人民共和国


さまざまな課題がありながら急成長を続ける中国は、54位。2項目を達成している、と示された。

・アフガニスタン・イスラム共和国


現在内戦状態が続き、殺害された中村哲医師が活動していたアフガニスタンは、151位と最下位に近い。ちなみに「海の豊かさを守ろう」がグレーなのは、内陸国だから。

・スウェーデン


2018年時点の第1位はスウェーデン。達成するのは「貧困をなくそう」「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の2項目にとどまるが、他項目の多くは黄で、さすがグレタさんを輩出するにふさわしい意識の高さを感じさせる。ちなみに2019年の1位はデンマーク。

 

ゴールとされる2030年を迎える頃には、各国の達成状況はどのように変化しているのでしょうか。

 

2030年を迎える頃、私たちの暮らす社会は、より豊かで安全なものになっているでしょうか。池上さんがしきりに口にしていたのは、「私たちが出来ることを、無理せずやっていくことが大切」ということ。まずは、私たち一人ひとりが「SDGs」を知り、意識することが、世界をより良くするための第一歩となるはずです。

 

【プロフィール】

ジャーナリスト / 池上 彰

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。松江放送局、広島放送局呉通信部を経て、東京の報道局社会部、警視庁、気象庁、文部省、宮内庁などを担当。社会部記者として経験を積んだ後、報道局記者主幹。1994年4月から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役として、様々なニュースを解説。2005年3月NHKを退局後、フリージャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中。2012年4月より、東京工業大学大リベラルアーツセンター教授。2016年4月より名城大学教授。



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