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NECパーソナルコンピュータから2月20日に発売された15.6型ノートPC「LAVIE VEGA」——。Adobe RGB色域相当の表示ができる4K有機ELディスプレイを搭載するほか、Adobe Photoshop Lightroomのショートカット操作に対応した専用キーを備えるなど、フォトクリエイター向けに作り込まれた一台です。
同シリーズのカタログモデルには複数の型番がありますが、注目は最上位の「LV950/RAL」。仕様としては、Core i7のプロセッサー、16GBのメモリ、1TBのSSD(+32GBのOptaneメモリ)を搭載するプロユースに耐えられる構成です。
インターフェースは、2基のThunderbolt 3を含む計4基のUSB Type-Cに統一されているほか、microSDカードも直接挿入可能。さらに、「Adobe Creative Cloudフォトプラン」の1年間使用ライセンスも添付されているなど、仕様・機能ともにフォトクリエイターを意識した設計になっています。
また、スリープモードからPCを開いて、スマホのようにすぐ使える「モダンスタンバイ」をサポートするなどの利便性や、ヤマハ製高音質スピーカーの搭載などの高いエンタメ性を兼ね備える、普段使いとしても優秀なPCです。
先進的で独自のコンセプトを持つ「LAVIE VEGA」ーーそのコンセプトイメージは、プロダクトビデオでも垣間見えます。
しかし、こうした情報を並べても、実際に撮影現場でどう役立つのかは想像しにくいもの。そこで本稿では、プロとして活躍する気鋭のフォトグラファー6名にインタビューを実施。異なる撮影スタイルを背景に持つ多角的な視点から、同機について感じたリアルなインプレッションを前後編で3名ずつに分けてお届けします。
プロから見た「LAVIE VEGA」の印象は?
さて、職業を「フォトグラファー」と一括りにしても、その実情は多様なもの。作品のスタイルや被写体、クライアントなどが違えば、視点は大きく変わります。今回インタビューをお届けする3名のフォトグラファーからも、バリエーション豊かな感想を聞くことができました。
それでは各人のインタビュー動画を交えながら、LAVIE VEGAの特徴を探っていきましょう。
1)4K有機ELディスプレイは写真家の気を引き締める
1人目は、山本まりこさん。現場の空気感までを再現する「airy(エアリー)」な作風を得意とします。写真教室で指導することも多い彼女は、4K・HDR対応の有機ELディスプレイに魅力を感じたと言います。
■山本まりこさんのインプレッションを動画で
■山本まりこ――LAVIE VEGAインプレッション詳細
「LAVIE VEGAで自分で撮った花の写真を見た時、何よりも驚いたのは奥行き、立体感の表現力で、花の動きも感じさせられました」
「ディスプレイの印象は、黒の締まりが素晴らしいです。建築写真ではコントラストを強くして仕上げるのですが、LAVIE VEGAで見ると造詣がひときわシャープに見えますね。また、熊野古道の風景をずっと撮り続けているのですが、山の中ですから夕方になると暗くなっていく…そんな暗闇の中で撮った写真も引き締まって美しいです」
「今は、特に若者を中心に写真をスマホで見ることがほとんどで、大きい画面で見ることがない。そんな人たちも自分も、この大きく高精細なディスプレイで写真を見たら、隅々まで写真の全てが見えてしまうので、ブレや高感度によるざらつきまで意識するんじゃないかなと。気を引き締めて撮影できると思います。何より、うまく撮れた時に綺麗なこのディスプレイで写真を見られることは、写真を続けていく自信やモチベーションになるでしょう」
山本さんのインプレッションをもとに、LAVIE VEGAの詳細にふれていきましょう。
LAVIE VEGAを開いてまず目に飛びこんでくるのが、山本さんに驚きを与えた15.6インチの大画面です。表示領域はざっくりと縦が20cm弱、横が34cm程度あります。
解像度Ultra HD 4Kは、ドット数でいうと3840×2160——。撮影した写真を全画面表示して、ぐっと画面の近くによって目を凝らしても、もちろん画素は見えず精細なまま。ポートレート写真なら産毛の質感や、洋服のテクスチャーも精細に描写されます。
山本さんは、“写真を学び出した人ならLAVIE VEGAに表示した写真を見ることでモチベーションにつながる——”、また“感度をあげて撮った写真のノイズが見えて、自分も気をつけなければと思った”と言っていました。ノートPCが写真のモチベーションを上げたり、新しい気づきを与えてくれる存在になり得るのは、興味深い視点です。
また、実際にPhotoshopやLightroomを駆使して編集を行う際には、アプリケーションのワークスペースが左右を占領するため、写真を表示できる部分は限られてしまいがち。画面よりも一回り小さい領域で写真を精細に表示できるという意味でも、4Kディスプレイのメリットを感じるところではないでしょうか。
表示色は最大10.74億色。色空間としては、デジタルシネマ向けの標準色域である「DCI-P3」に対応し、DTP向けの「Adobe RGB」との差もそこまでありません。バックライトを必要としない有機ELだからこそ、液晶に比べて黒の深みが出ることも特徴。
山本さんのような「白飛びギリギリを狙う」あるいは「黒つぶれギリギリ」といった光量で狙う場合も、諧調豊かに表現できるLAVIE VEGAのディスプレイがあれば、より正確な編集を可能にしてくれるでしょう。
2)プロキーがあれば撮影に時間とクオリティを注げる
2人目は、関 一也さん。ウェディングを中心に、モデル、建築、スポーツなど幅広いジャンルのアートワークを展開しています。撮影した写真の編集作業は、ほぼ出張先で終わらせるという彼が注目したのは、ショートカット操作を割り当てられる「プロキー」でした。
■関 一也さんのインプレッションを動画で
■関 一也――LAVIE VEGAインプレッション詳細
「一番感動したのはプロキー。少しでも作業時間が減れば、撮影に時間を注げるというのが僕の考え方です。一番は、ライブラリーと現像モジュールを、プロキーひと押しで切り替えられるのがいい。セレクトと現像をいかに早く切り替えて作業効率を上げるか――それがクライアント、モデルの満足度に繋がると思っています」
「ストレージがSSDであることもポイント。メディアの読み込みも高速で、バックアップの書き出しも速く済みます。ロケ撮影も多いので、SSDは耐久性が高く持ち運ぶ上でもデータ破損の心配がないのはとても大事ですよね。インターフェースもThunderbolt 3があるので、ハードディスクもThunderbolt 3対応SSDが使えるのが大きなメリット。速さを追求できる仕様だと思います。4000万画素の写真ライブラリーを先ほど取り込んでみましたが、たしかに速かったですね」
「写真家の使う写真ソフトって、Windowsのみにしか対応していないものも多いです。しかも、それなりにスペックがないと使い切れないものもあるので、その点でLAVIE VEGAのスペックは十分だと思います」
関さんが感動したプロキーについて。LAVIE VEGAのキーボード面の左端には、1cmほどの間隔を隔てて「P1/P2/P3/P4/P5」という5つのキーが縦に配置されています。これをプロキーと呼び、「LAVIEかんたん設定」の画面から設定を行うことで、ショートカット操作を割り当てられます。
プロキーには、「スクリーンショットの撮影」など、Windows全般に共通する操作を割り当てられるほか、一部のアプリケーションには専用の動作をカスタマイズできます。具体的には、「Lightroom」「Lightroom Classic」がこれに対応。そのほか、Microsoft Officeの「Word」「Excel」「PowerPoint」も対応します。
関さんは、シーンごとにプリセットの設定を用意しておき、それをショートカット操作でコピーして割り当てる使い方に魅力を感じていました。現像設定のコピー/ペーストは、通常のショートカットキー操作でも[Ctrl]+[Shift]+[C/V]で行えますが、これを単一ボタンで行えればより容易です。実際のワークフローでは、1000枚以上の写真をいかに早く現像するかを問われるといい、手の負担も相当軽くなるでしょう。
実際に筆者が使ってみた印象としては、例えば「トーンカーブ」や「色相」のパネルを表示させるショートカットなども相性が良いと感じました。通常のキーボードショートカットだと、[Ctrl]+[Alt]+[Shift]+「T (トーンカーブの場合)/H(色相の場合)」なので、押すキーが4つあり手間なのですが、プロキーに割り当てておけば一瞬で切り替えが可能です。手動で微調整したいタイミングにも重宝すると思います。特に外出時にマウスなどが使えず、これまではタッチパッドを多用しなくてはいけなかったようなシーンで、プロキーは作業効率を改善してくれそうです。
普段もWindows PCとMacを両方使いこなしている関さんは、Windows PCを使うメリットについて「Windows専用ソフトを使えること」と言及していました。Windows専用ソフトなら、例えば天体撮影用の画像処理ソフト「ステライメージ」などが挙がりますが、同ソフトで星空写真を処理していく際には、何枚もの写真を合成する作業が生まれます。
そういった高負荷な作業でも、Core i7の高性能プロセッサーを積んだLAVIE VEGAなら快適に作業できる十分なスペックとのことでした。
3)1万枚の写真をチェックする現場でも通用する強い設計
3人目は、横山マサトさん。主に、アーティスト関連の撮影を得意としており、普段はCDジャケット用の写真や、ライブ・コンサートの写真を頻繁に撮影しています。特にライブでは大量の写真を素早くチェックしなければならない過酷な環境ゆえ、マシンの処理性能や耐久性に注目したとのこと。
■横山マサトさんのインプレッションを動画で
■横山マサト――LAVIE VEGAインプレッション詳細
「ライブ撮影は、ウェブ、新聞などのメディアにすぐ納品する案件が多いので、現場にパソコンを持っていって撮影後にすぐデータを取り込みセレクトするという、スピード感の求められる現場です。1回の公演での写真点数は1万枚にもなるので、データの取り込み、現像のスピード、セレクト時と色調整時もフリーズせずにいけるPCが必要なんです。LAVIE VEGAで取り込み速度、Lightroomの挙動を少し試してみましたが、十分にスムーズでした。ライブ撮影の現場にも向いていますね」
「細かな点ですが、底面の足が助かります。隙間が出来てファンの熱を逃がす設計になっているので。ライブ撮影では一気にPCに負荷をかける作業となるため、ファンがテーブルに設置していると熱くなって、処理も重くなるのが悩みなんです。いつも使っているPCでは、隙間を作るため自前の足を持っていっているんですよ」
「ディスプレイは発色の良さを感じました。それ自体は良し悪しだと思いますが、今は写真を見られるデバイスはスマホがほとんどですよね。iPhone含めスマホのディスプレイも発色がいいので、自分の写真が最後どこで見られるかを考え、色調整して仕上げるのがスムーズになるはず」
「パッと見でもディスプレイの隅々まで解像しているがわかります。いつもなら画面に寄って凝視してチェックしないといけない部分も、即座に判断できるので、ただ写真が綺麗なだけでなく作業効率に繋がるディスプレイだと思います」
“PCに期待するのは速さ”と断言する横山さん。ライブ会場での写真撮影では撮影枚数が1万を超える、と聞けば納得です。
LAVIE VEGA(LV950/RAL)の仕様をおさらいすると、CPUには第9世代のインテル Core i7-9750H プロセッサー(6コア、12スレッド)を搭載。動作周波数は2.60Ghzで、ブースト時には最大4.50GHzになります。上を見ればキリがないPC市場ではありますが、写真編集をメインに考えるならば十分な値です。
また、ストレージ構成も快適な挙動を支えています。メインメモリは16GBを搭載。ストレージは約1TBのSSDに加え、約32GBのインテル Optane メモリを備えます。ここではOptaneメモリーをキャッシュとして使うことで、OSの起動や、アプリケーションの応答速度を向上させている点が見逃せません。実際にマシンを開いたらすぐ起動する体験は、まるでスマートフォンのような感覚です。
例えば、横山さんは、“写真の表示を素早く切り替えても表示がもたつかずについてくる——”というポイントを評価していました。指で左右キーを連打しても、全画面表示の写真がもたつくことなくパッと切り替わるので、確かに数をこなすうえで助かります。筆者も海外出張では、1000枚くらいの写真から必要なものをピックアップする機会が多いので、この利点は共感できます。
なお、長時間フル稼働させなくてはならない現場では、時間と共に熱が籠もって処理性能が落ちることに悩んでいた横山さん。LAVIE VEGAの背面には、ファンが2基備わっており、接地面には足があることで、排熱用に空気の通り道が確保されている点にも注目されていました。
前編のまとめ
ここまで3名にLAVIE VEGAについてチェックしてもらい、4Kディスプレイ、プロキー、CPU、メモリ、ストレージ、耐久性など、フォトグラファー視点でのリアルな感想を紹介してきました。4K有機ディスプレイやThunderbolt 3対応などのトレンドを押さえつつ、Lightroomのショートカットが割り当てられるプロキーを搭載しているなど、独自性も備えている点でやはり興味深い一台ですね。
残りの3名によるインプレッションは、後編の記事でご紹介します。モデルのポートレート撮影を得意とする花盛友里さん、風景撮影を得意とする山村健児さんとKYON.Jさんのコメントを加え、前編ではご紹介しきれなかった魅力にも言及していきますので、お楽しみに。
※LAVIE VEGAは対象外
撮影/石上 彰、中田 悟 動画/Production Beta
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