1990年代末から2000年代序盤にかけ、局地的に“トレイルランニングシューズブーム”が起こったことをご記憶でしょうか? パタゴニアのフリースにグラミチのクライミングパンツ、グレゴリーのバックパック、そして足元にはメレルの「ジャングルモック」やナイキの「エアテラフマラ」といういで立ちで街を闊歩した人も少なくないはず。
ナイキがアウトドア専門のサブブランドとして「ACG(オールコンディションズギア)」を正式に設立したのは1991年。当初日本では「アウトドアスポーツ」という概念自体がなかなか理解されませんでしたが、1994年に登場した「エアモック」が、爆発的なナイキブームとの相乗効果で注目を浴びると「ACG」もようやく市民権を獲得。対するアディダスも「アディダス アドベンチャー」シリーズを立ち上げ、防水防塵仕様の「EQT.バッドランダー」やカヤック用の「ウォーターモカシン」といったスマッシュヒットを送り出しました。このころ“新しいカテゴリー”として日本に紹介されてはじめたのが、大自然を自由に駆け巡るために開発されたトレイルランニングシューズです。
あれから20年。当時の人気モデルや隠れた名品たちが続々と復刻を果たしています。今日は往時の記憶を呼び起こすトレイル系モデルを5つピックアップ。どこか無骨なデザインと機能性に裏打ちされた履き心地は、90年代を知る世代にも、そろそろダッドシューズに食傷気味な層にもしっくりくるかも?
[01]
知る人ぞ知る名モデルがジワリと人気上昇中
アディダス
トルション TRDC
実売価格1万6500円
1997年にアウトドアブランド「サロモン」を買収以降、徐々にアウトドアカテゴリーを縮小していったアディダス。2000年に登場した「トルション TRDC」も「アディダス アドベンチャー」ではなく通常のランニングカテゴリーから発売されました。アディプリーンやアディトラクションといった当時のアディダスのフルスペックを搭載した高機能モデルでしたが、当時は知る人ぞ知る存在。「トルション」システム誕生30周年の昨年に初復刻を果たしてからは、世界中のスニーカーショップとのコンソーティアムモデルも発売され、ジワジワと火がついています。
[02]
フットスケープとのフュージョンモデル
ナイキ
AGC エアモック 3.0
実売価格1万9800円
1994年発売の「エアモック」はもともと『登山で疲れた足をリラックスさせるアフターキャンプシューズ』として登場しており、正確に言えばトレイルランニングシューズではありません。が、今回の「エアモック3.0」は、90’sナイキのもう一つの名作「エアフットスケープ」とのフュージョンモデル。ゆったりした足入れとランニングシューズの軽快さを両立しており、このまま走り出しても良さそうな仕上がりに。そういえばオリジナルの「エアモック」は、カンフーシューズのようなフォルムが特徴的だった一方で、巻き上がったアウトソールが街履きとしては少し不安定でした。
[03]
モノトーンのゴアテックス採用で今冬登場
ニューバランス
ML 801 GTB
実売価格1万9800円
ゴツゴツしたラギッドソールに、砂埃の侵入を防ぐ分厚いタン、アウトドアシューズを思わせる差し色……。1998年発売の「MT801」は、そのディティールのどれをとっても『これぞ90年代末期のトレイルランニングシューズ』。実はニューバランスは1977年からトレイルランニングシューズをリリースしていますが、この「MT801」のヒットにより、同カテゴリーで全米No.1(当時)のブランドとなりました。発売20周年となる2018年に「ML801」として初復刻を果たしてからはストリートにも定着しつつありますが、この冬リリースされたのはモノトーンのゴアテックス採用モデル。アッパーに小さくあしらわれた「GORE-TEX」の文字も効いています。
[04]
限定ラインナップとして今日に蘇る
サロモン
サロモン アドバンスド
実売価格3万2900円
フランスでスキー用品メーカーとして誕生したサロモンが、初のトレイルランニングシューズ「ラピッドレース」を発売したのは2001年のこと。もともとスノーボードブーツに使われていたケブラー素材のシューレーシングシステムを応用した「XA」シリーズは、使い勝手と耐久性を両立させたシューズとして欧州を中心に高い評価を得ました。余談ですが当時同一のグループ企業だったアディダスは、このケブラー素材を転用しコービー・ブライアント用のバッシュ(「EQ.ミスティファイ」)を開発しています。2018年よりスタートした「サロモン アドバンスド」はそんな同社の過去のアーカイブをファッショナブルによみがえらせた限定ラインナップ。セレクトショップなどを中心に取り扱い店舗も増殖中です。
[05]
エディターズチョイスアワード受賞モデルから新色登場
イノヴェイト
ROCLITE 286 GTX
実売価格2万900円
イノヴェイトの創業は2003年なので、2000年代前半にこのブランドを日本のストリートで着用していた人は皆無と言っていいでしょう。この「ROCLITE 286 GTX」「FLYROC 345 GTX」の発売も2006年のことなので、他のモデルとはちょっと時代も異なりますが、このスタイリッシュさに免じてお許しください。ローカットの「FLYROC 345 GTX」は、タフなアウトソールとゴアテックスによる防水性を兼備しながら片足345gという驚くべき軽さを実現し『ランナーズワールド』誌のエディターズチョイスアワードを受賞したモデル。昨年夏にはアッパーに耐久性の高いコーデュラナイロンを採用してリニューアル。この冬には新色としてホワイトとネイビーが投入されました。