ライフスタイル
2020/6/26 17:30

フィンランドと日本の“サウナー”が熱弁! サウナで“ととのう”方法と東京の御用達サウナ

近年、年齢や性別に関係なく、サウナを愛好する“サウナー”と呼ばれる人々が増えています。テレビや雑誌、ウェブなどでもサウナに関するトピックが取り上げられるなど、メディアでの注目度も高いサウナブーム。なぜ今、サウナは人気を集めているのでしょうか?

 

今回は、『公衆サウナの国フィンランド』(学芸出版社)著者のこばやしあやなさんと、漫画『サウナマン』(LINE)の監修者である“まっちゃん”さんにコンタクト。サウナの本場・フィンランドの公衆サウナとニッポンのサウナ、それぞれの魅力と楽しみ方について、2人に熱く語っていいただきます。

 

サウナの発祥はなんと先史時代!

高温の室内で身体を温め、じんわりと汗をかくサウナ。一般的な温泉やスポーツクラブで見られる「ドライサウナ」や、霧状の温水を発生させる「ミストサウナ」、熱した石に水をかけて水蒸気を発生させる「ロウリュ」など、ひと口にサウナと言ってもその種類はさまざまです。最近では、日本国内でもより多様なサウナが楽しめるようになりました。

 

「sauna」という単語はフィンランド語であり、フィンランドはサウナの本場として知られていますが、サウナの歴史は意外にも古く、同様の入浴方法は先史時代にも存在していたともいわれています。フィンランドの文化を通じて世界に広く知れ渡ったサウナは、それぞれの国の文化背景を通じて、さまざまな形に変化していきました。ここ日本では、1964年の東京オリンピック後に普及が進んでいったとされています。

 

サウナの種類

・ドライサウナ……フィンランド式の乾式サウナ。サウナ室を、サウナストーブで80℃以上もの高温に保つ。湿度は10%程度と低湿度。

・ミストサウナ・スチームサウナ……室温は40~60℃と低温だが、湿度は80%以上と高湿度の湿式サウナ。ミストは霧、スチームは蒸気で湿度を高める方式。

・ロウリュ……サウナストーブの上の石に水をかけ、水蒸気を発生させるタイプのサウナ。そのサービスや行為も指す。

・スモークサウナ……煙突のないサウナ室を、薪を燃やして温める方式で、煙を排出してから入室する。ロウリュと組み合わせて暖かさを保つ。現代では稀少。

 

実は、近年フィンランドでも公衆サウナは再ブームを巻き起こしているそう。まずは、フィンランド在住のライター・コーディネーターであるこばやしあやなさんに、フィンランド式サウナについて詳しく伺いました。

 

公衆サウナが再流行中! サウナの本場・フィンランドの最新事情

↑2016年にヘルシンキ市にオープンした公衆サウナ「LÖYLY(ロウリュ)」
↑2016年にヘルシンキ市にオープンした公衆サウナ「LÖYLY(ロウリュ)」

 

———こばやしさんの著書である『公衆サウナの国フィンランド』では、戦後の公衆サウナ黄金期から60年代のブーム衰退、昨今の再ブームに至るまで詳しく解説されていました。この流れは、日本の銭湯ブームを彷彿とさせますね。

 

こばやしあやなさん(以下、こばやし)「フィンランド人にとってのサウナって、特別な時に行く場所でも、レジャーで行く場所でもなくて、生活習慣に組み込まれた一部なんです。それって、日本人にとってのお風呂と全く同じだと思います。現在の日本の家庭には当然のように湯船がありますが、フィンランド人の家庭にはサウナがあるのが普通のことです。

 

日本でも、昔は家庭のお風呂って火を起こして入るものだったと思うんですが、フィンランドのサウナもかつては薪ストーブに限定されていました。なので、集合住宅に暮らす人々は家庭にサウナを持つことが難しく、公衆サウナを利用していたんです。そして電気ストーブが普及し、集合住宅にもサウナを設けることが容易になると、公衆サウナを利用する人はどんどん少なくなっていった。これは、日本の銭湯が衰退していったのと同じ流れですよね。

 

フィンランドの公衆サウナは、生き残ったわずかな老舗店舗の再活性化や、現代的なビジネスモデルの創出、そして“サウナデー”などの非営利的な文化振興によって、再び盛り上がりを見せています。そもそも私がフィンランドのサウナについて研究したのも、この昨今のフィンランドの公衆サウナブームが、日本の銭湯再ブームに結び付けられるのではと考えたからだったんです」

 

『公衆サウナの国フィンランド: 街と人をあたためる、古くて新しいサードプレイス』
こばやしあやな/学芸出版社
サウナの本場・フィンランドでも、実は日本と同じく公衆サウナブームが到来中。つい10年前まで閑古鳥が鳴いていた公衆サウナが、なぜ今盛り上がっているのか。フィンランド在住のサウナ文化研究家が、フィンランド式サウナの歴史や、現代社会のサウナの可能性について記した1冊。

 

フィンランドのサウナと日本のサウナはどう違う?

———2011年にフィンランドの大学院へ社会人入学したのを機に移住し、現在も現地で暮らすこばやしさん。初めてフィンランド式サウナを体験したのはいつでしたか?

 

こばやし「初めてサウナを体験したのは、旅行者としてフィンランドを訪れた2005年のことでした。ステイ先のおじいさんが、農場の湖畔に建てたという自慢のサウナ小屋に入れてくれたんです。そもそも、私は日本でもサウナに入ったことがなかったので、なんの前情報もない状態でフィンランド式サウナを利用しました。

 

フィンランドのサウナは、身分も国籍も肩書きも関係のない裸の状態で利用するのが当たり前。もちろん性別も関係なく、セクシャルなことはまず起こりません。おじいさんと2人、裸でサウナに入るというのには最初驚きましたが、“郷に入れば郷に従え”と思い、私も裸で入りました。サウナの室内というのはとても暗いので、そもそもお互いの身体なんてあまり見えないんですけどね。

 

キャンドルの灯された暗い小屋の中には小窓があって、そこから湖の景色が見えました。薪ストーブにおじいさんが水をかけると熱い蒸気が上がってきて、その蒸気の対流が背中を通じて感じられて、単純に「すごく気持ちがいい」と感じました。サウナの中にビールを持ち込んで飲みながら楽しんで、終わったら凍った湖の中に飛び込んで……。外気はマイナス5度で皮膚もしびれるくらい寒いのに、星空もすごく綺麗で、なんだか心地よくて。「こんな体験なかなかないな」と思いましたね」

↑「LÖYLY(ロウリュ)」内レストランの、海に面したテラス席
↑「LÖYLY(ロウリュ)」内レストランの、海に面したテラス席

 

———日本ではサウナといえば1人で楽しむものというイメージが強いですが、誰かと楽しむのもフィンランド式サウナでは当たり前のことなのでしょうか?

 

こばやし「そうですね。たとえば、『パーティしよう!』となったら、サウナがそこにあるのがフィンランドでは自然なことだったりします。宅飲みするときなんかは家主がサウナを温めておくのが暗黙の了解で、入りたい人はバスタオルを持ってきて好きに入ります。

 

日本人の感覚でいえば居酒屋で飲み会を開くようなとき、最近のフィンランド人はレンタルサウナを借りてプロジェクトの打ち上げをしたり、送別会や同窓会をしたり……ということがよくあるんです。サウナをみんなで楽しんで、団欒室で飲食を楽しんだりしていますよ」

 

———フィンランド式サウナには、時計やテレビが設置されていることはほとんどないですよね。そういったところにも、日本のサウナとの楽しみ方の違いがあるのでしょうか?

 

こばやし「サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる“ロウリュ”はフィンランド語ですが、日本のようにロウリュを行うためのスタッフはおらず、それぞれが好きにかけて楽しみます。“何分間がんばろう!”と我慢しながら入り続けるという人もあまりいませんし、誰かと入っていても、暑くなったらすぐに出て行く人もいますよ。私もすぐに出て行く方です(笑) 人によって楽しみ方はそれぞれですが、日本とフィンランドで取り組み方の違いはあるかもしれません」

 

———日本人がフィンランド式サウナを現地で楽しむ際、気をつけるべきことや注意すべきことはありますか?

 

こばやし「これと決まっているルールのようなものはあまりないんですが、フィンランドのサウナベンチって、日本みたいにサウナマットが敷かれていないんですよ。なので、お店でレンタルしている場合もありますが、お尻に敷くためのタオルを持って行くのはエチケットですね。それと、これは日本も同じですが、入る前にシャワーを浴びること。ただし、フィンランドでは体を洗うのはサウナで汗を流したあとなので、最初に体を洗う必要はありません。あとは、当たり前ですが人に迷惑をかけないことですね! 具体的なマナーは、それぞれが自分の頭で考えて実践すれば十分だと思います。

 

最近、“日本のサウナ対フィンランドのサウナ”といった二項対立構造がよく見られるのですが、単純にその国の文化背景の中で根付いた楽しみ方が異なるだけだと、私は思っているんです。“サウナの聖地”、“サウナの本場”ということは置いておいて、純粋に海外旅行の異文化体験として、フィンランド式サウナを楽しんでみてほしいですね」

 

次のページでは、日本を代表するサウナーである通称“サウナマン”が、都内で楽しめるサウナの種類やその魅力、おすすめスポットについて語ります。

 

【プロフィール】

ライター・コーディネーター / こばやしあやな

1984年岡山生まれ、大阪・神戸育ち。2011年夏にフィンランドへ移住し、ユヴァスキュラ大学大学院の現地語修士過程にて芸術教育学を勉強するかたわら、“Suomiのおかん”の屋号を掲げ、在住ライター・コーディネーターとしてのフリーランス活動をスタート。現在は執筆・メディアコーディネーション活動に加え、翻訳通訳、視察手配など、オールラウンドに活躍中。
http://www.suomi-no-okan.com/index.html

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

  1. 1
  2. 2
  3. 3
全文表示