アウトドア
2020/8/14 21:00

「デカトロン」のテントは使える? 4990円、9900円、1万7900円の3つのテントを比較

フランス発祥の総合スポーツ・アウトドアブランド、デカトロン。「どんなスポーツも、手が届きやすくなるように」のコンセプト通り、あらゆるジャンルのスポーツアイテムがあり、いずれも低価格で買いやすいのが魅力です。ただし、世界中で展開しているブランドでありながら日本では西宮店(兵庫県)、幕張店(千葉県)と2店舗のみの展開。まだまだ馴染みが浅いのも事実です。

 

日本では、単に「お手頃」だけでは納得しないはずですが、デカトロンの製品はどうでしょう? 本記事ではオリジナルのテントに注目。テントは使う度に設営・撤収をし、天候の影響も受けやすいので、ここに商品クオリティが如実に表れるのではないかと考えてのことです。実際にデカトロンのテントで設営を使い、スポーツ・アウトドア専門の編集プロダクション・マイヒーローの佐々木一弥さんに細部のレビュー、評価をお願いしました。

 

【その①】入門編の4990円テント、その実力は?

デカトロンのオリジナルテントは数多くありますが、なかでも5千円を切る低価格を実現しているのがこちら。2人用の小ぶりなテントで、構造自体は2本のポールで輪を作るように立てる一般的なドームテントと変わりません。ただし、ドームテントそのものが各メーカーから多くリリースされているため、相対的に失点が出やすいアイテムでもあります。

↑QUECHUA(ケシュア)「キャンプ・登山・ハイキング テント MH100 – 2人用」4990円(税込)。就寝用スペースは130×210cm(65cm幅シュラフ2つ) 、高さ(最高部)が105cmとなる

 

佐々木一弥(以下、佐々木) MH100というテントは、デカトロンのなかでも特にコスパに優れる入門編ラインです。まず重量が2.4kg。この軽さが良いです。テントの中ではシンプルな部類に入るドーム構造なので、設営しやすいのも良いですね。

 

ただ、居住面で見ると、本商品は「2人用」ということですが、身の回りの荷物をテントの中に入れると、1人くらいになるかもしれません。この点は身体の大きい人、小さい人によっても違いますし、どのメーカーもサイズを算出して、なるべく「2人用」と謳うものなので、特別気になるところではありません。また、特に「いいな」と思うのは、この価格でありながら、テントが二重構造になっている点です。

↑フライシートとインナーテントで異なる素材が使われている

 

通常の雨風なら問題なくしのげそうですし、上部の背面にベンチレーションも設置され、通気の工夫がされている点も素晴らしいです。ハイエンドモデルに比べれば、細部が劣る面はどうしてもあります。例えばシート部分は少々弱くて、ゴツゴツした場所では、別途マットシートのようなものを用意したほうが良さそう。しかし、なんと言ってもこの価格ですから、不満はないでしょう。「1泊だけしかしない」や「年に数回しかテントを張らない」、「ソロキャンプしかしない」という方なら、十分ですし最適な商品だと思います。

 

【その②】わずか2秒で立てられるワンタッチテント、その使い勝手は?

続いては、デカトロンのオリジナルテントのなかでも特にヒットしているという2 SECONDS EASY。その名の通り、たった2秒の操作でテントを立ち上げられる商品ですが、設営の便利さに対し、テントそのものの重量が増えてしまったり、テント自体のクオリティが低かったりしたら、本末転倒です。

↑QUECHUA(ケシュア)「キャンプ ワンタッチテント 2 SECONDS EASY FRESH&BLACK 2人用」1万7900円(税込)。就寝用スペースは205× 145cm、 高さ(最高部)が110cmとなる

 

佐々木 まず良いなと思うのは、やはり両サイドのヒモをそれぞれ引っ張るだけで、テントが立ち上がる点です。テントは様々な部品がバラバラにあると混乱しますが、この製品は固まっていますから設営が楽なだけじゃなく、混乱しないところも良いと思います。

↑テントをケースから取り出した状態。一見グチャっと映りますが、部品がバラけておらず、広げればどうやって立てるのかすぐ分かります

 

↑テントに2か所ある、円形パーツから出ている赤い紐をそれぞれ引っ張ればすぐに立ち上がります

 

↑撤収する際は、円形パーツ内のボタンを押すだけで、テントが綺麗にしぼんでくれます

 

佐々木 もちろん、仮に立てた後、ロープとペグで補強する必要はあるのですが、これも楽で良いと思います。この構造を持ちながら総重量4.7kgで、持ち運びが楽な点も美点です。また、テントそのものの充実ぶりもグッド! まずテントの入口にスペースがあって、そこに脱いだ靴を収納できるのが良いです。これがないと、テントの外側に靴を置くか、それともテント内部の寝るスペースに靴を置くしかなくなりますから。そういった細かい配慮はうれしいですね。

↑昼間でもテント内は真っ暗。遮光性と、遮熱性にも優れたフライシートは特許取得済み

 

佐々木 そして、この遮光性抜群の素材が大きな特徴です。朝寝坊してしまうほど光を遮る素材のようですが、それでいて通気口もしっかり確保しています。1万7900円と、デカトロン商品では高額の部類に入りますが、十分優れたテントでしょう。

 

【その③】登山ラインのテント、安心度と信頼度は?

デカトロンで登山に特化した商品を展開するライン「FORCLAZ(フォルクラ)」。トレッキングポール、ブーツ、シェルフほか、登山に必要なアイテムが一挙に揃います。このラインにも気になるテントがありました。TREK100というモデルで、見た目も構造も本格的。

↑FORCLAZ 「キャンプ・トレッキング・登山用テント 3シーズン用 自立式 TREK 100 – 2人用」9900円(税込)。幅は120cm

 

佐々木 これもドーム型テントではあるのですが、作りが本格的。3シーズンの名の通り、強度のある素材と、脚がついている。もちろん、ロープとペグによる補強は必要ですが、設営場所をできるだけ限定しない工夫がなされています。また、フライシートとインナーシートがそれぞれ独立していて、フライシートが手前に伸び、フロントテープポールも設置されています。つまり、前室としてのスペースが用意されており、ここにバックパックやシューズが収納できます。これでテント内のスペースをゆったりと使えるのが良いですね。

↑フライシートとテントがそれぞれ独立した構造。その隙間によって、通気性も確保します

 

佐々木 先ほどのMH100、2 SECONDS EASYよりも本格的でありながら、重量は2.6kgと軽く、そして価格も9900円。なかなか良いアイテムではないでしょうか。

 

コスパが非常に高い、限られた時間を最大限に使える

ーー3アイテムのテントを立ててみたわけですが、これらの商品の評価をお願いします。

 

佐々木 どれも初めて立てましたが、何も迷うことなく一人で簡単に組み立てることができました。初心者でも、一度組み立てれば次からはあっという間に立てられるはずです。キャンプをスムーズに楽しむのに欠かせないのが時間割です。キャンプサイトに到着したら、タープやテントを協力しながら設営するのに30分。そして、最後にテントとタープを撤収するのに30分。しかし、慣れないうちはなかなか予定通りには進みません。初心者には、そこが大きなハードルでしたが、今回紹介したテントなら、あっという間に、しかも一人で簡単に設営・撤収ができますので、限られた時間を有効に使うことができます。

 

ーーずばり、今回のテントから考察するデカトロンの真価のほどはいかがですか?

 

佐々木 簡単に設営・撤収できるテントは、さまざまな種類があります。ピクニックでパッと広げるサンシェードのような安価なものから、高級ブランドの高価なテントまで。そこで求められるのがコスパの高さです。いくら安くても耐水や遮光などの機能性が低ければ、せっかくのキャンプも楽しめません。デカトロンは、ファミリーキャンプから登山などの本格的なシーンまで、それぞれに求められる機能が充実しながら低価格を実現。イメージに合うテントに出合えるとともに、価格の安さに驚くと思いますよ。

 

↑今回立ててみた3つのテント。折りたためば、こんなにコンパクトに!

 

コメント/佐々木一弥(マイヒーロー)、撮影/我妻慶一

 

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