本・書籍
2020/8/13 21:45

「麺匠」「瞬乾」−−辞書には載らない「変な」日本語を探してみよう!

街の看板や、駅の広告やポスターで「何これ?」と思った言葉を見かけたことはありませんか? 例えば「お昼のランチ」。日本語にすると「お昼の昼食」になるから同じことを言っているんですよね。「今日のお昼のランチ、どこにする?」なんて当たり前に使っていましたが、改めて考えてみると重言している!

 

そんな日常では当たり前に馴染んでしまったけど、辞書には載せるほどでもない日本語を、いい意味で「変な日本語」とし、国語辞典編集者である飯間浩明さんが『知っておくと役立つ街の変な日本語』(飯間浩明・著/朝日新聞出版・刊)にまとめています。この本は元々新聞の連載だったそうですが、読み終わると「辞書には掲載されない変な日本語だけど、時代を切り取る大事な言葉だなー」と感じることができるのです。今回は、そんな『知っておくと役立つ街の変な日本語』をご紹介していきます!

 

 

ラーメン屋さんで見かける「麺匠」

ラーメン屋さんの看板で筆っぽい文字で「麺匠」なんて書かれてあると、「うまそう!」と直感するというか、こだわりのラーメン屋さんなのかな? と思いますよね。でもこの「麺匠」は辞書にはまだ載っていない言葉なんだとか。

 

「匠」という漢字は、人を表す場合にはふたとおりの意味で使われます。ひとつは「師匠」「鷹匠(たかじょう)」など、専門の技術を持っていて、人に教えることのできる人。もうひとつは、「巨匠」「名匠」など、学問・芸術にすぐれた人です。

「菓匠」というのもあります。和菓子を扱う伝統的な店です。「お菓子の専門技術のある店」と説明すればいいでしょうか。『三国』では、第7版で項目を立てました。

 (『知っておくと役立つ街の変な日本語』より引用)

 

「菓匠」も「麺匠」もいつから使われ始めた言葉なのかは明確ではないそうですが、すっかり私たちの生活に馴染んでいますよね。また、不思議と「あの麺匠がいるラーメン屋に行こうぜ!」と言葉には出さず、目で見ることの多い言葉というのも面白い部分です。

 

またラーメンだけでなく、うどんやおそば屋さんでも使われているというので、辞書に掲載される時には、どんな意味が付けられるのかちょっと楽しみにでもありますね。

 

英語では違う意味? 文房具などで使われる「ファンシー」

昔ながらの文房具屋さんの屋根看板などで見かける「ファンシー」。私も小学生くらいのころ、「ファンシーショップ」というかわいい文房具を売っているお店に行きたくて、駄々をこねたことを思い出しました(笑)。

 

でもこの「ファンシー」、英語[fancy]では「想像。空想」「新奇な趣向を凝らしたさま」などの意味で使われているんだとか。国語辞典ではどのように紹介されているのでしょうか?

 

現代日本語では、「ファンシー」を「想像」「空想」の意味ではまず使いません。『三国』第7版では、〈女の子向けでかわいらしいようす〉〈かわいらしい小物・商品〉と説明し、「ファンシーなぬいぐるみ」「ファンシーコーナー」の例を添えました。

外来語の実際の用途と、辞書での説明がずれることはよくあります。

 (『知っておくと役立つ街の変な日本語』より引用)

 

つまり、海外でかわいいグッズを見つけて「Oh! Fancy!!」なんて言っても通じないわけです。実際に誰が最初に日本で「ファンシー」を使い始めたのかめっちゃ気になりますよね! これは完全に私の意見ですが、最近ではこの「ファンシー」が「ゆめかわ」に吸収されてしまいそうな印象もあるので、せっかく独自の進化をしてきた日本の「ファンシー」を日本語としても残しておきたいな〜と思ってしまいます。

 

地元のファンシーショップはなくなってしまいましたが、原宿には女子なら一度は通る道「サン宝石」の直営店『ファンシーポケット』があるそうなので、近々ファンシーを求めて35歳のおばさんがお邪魔してみたいと思っています(笑)。

 

速乾よりもすぐ乾く? 「瞬乾」

速乾よりもはやく、アッという間にすぐ乾くイメージが湧いてくる「瞬乾」ですが、まだ辞書には掲載されていない言葉だそうです。瞬乾以外にも、秒殺と同じように使われる「瞬殺」や、ビールのCMなどでも見かける「瞬冷」辛口! などの「瞬○」という言葉が近年増えてきているのだとか。その背景にはどんなことがあるのでしょうか?

 

「瞬」という漢字は、本来、そんなに新語を作りはしませんでした。それが最近、急に生産力を上げています。現代人が、何事も待ち切れなくなっているからでしょうか。

 (『知っておくと役立つ街の変な日本語』より引用)

 

確かに! 携帯の通信回線も5Gが登場しているし、ピザの宅配なんかも昔と比べるとめっちゃはやいし、スピードが求められる時代になっているのは間違いないですよね。今後どんな「瞬」が出てくるか私も楽しみにしておきたいと思います。

 

最後にひとつご紹介したいのが、お蕎麦屋さんの看板で見かけるこのぐちゃぐちゃな文字、どう読むのかわかりますか?

 

 

著者である飯間さんのTwitterの画像なのですが、このぐにゃにゃな文字は「変体仮名」という昔のひらがななんですって! 馴染みすぎていて見れば蕎麦屋さんの看板とわかりますが、「じゃあなんて読むかわかる?」と聞かれるとわからないですよね。こういう看板などでも新たな発見がたくさんあるので、ぜひ近所を散歩する時など注目してみてください。毎日の景色がちょっと変わって楽しめる景色に変わってきますよ!

 

【書籍紹介】

知っておくと役立つ街の変な日本語

著者:飯間浩明
発行:朝日新聞出版

街を歩いて絶えずチェックしている「ことばハンター」は国語辞典編纂者。やがて「辞書に入る」ことになるかどうか、街の中の奇妙、面妖、不思議なことばを見つめながら考える。「生きたことば」の調理人の手さばきを味わってほしい。朝日新聞「be」で大人気連載「街のB級言葉図鑑」をまとめた。

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