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2020/12/7 6:30

「ウルフギャング」で興奮しまくり妻に蔑みの目で見られた映画監督の悲哀

「足立 紳 後ろ向きで進む」第8回

 

結婚18年。妻には殴られ罵られ、ふたりの子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々——それでも、夫として父として男として生きていかねばならない!

 

『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『喜劇 愛妻物語』(全国公開中)で東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。いま、監督・脚本家として大注目の足立 紳の哀しくもおかしい日常。

 

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10月31日

東京国際映画祭(TIFF)が始まる。今年は海外ゲストが呼べずにコンペも行わないこととなり小規模な開催だ。脚本を書いた「アンダードッグ」(前後篇)がオープニング作品に選ばれているのは光栄だ。

 

東京国際映画祭は開催されるたびにいつも批判にさらされている印象がある。コンペ作品の質が悪いとか、国や街がまったく盛り上がっていないとか、映画人たちの交流がないとかいろいろな批判だ。

 

私は本業が脚本家だから海外の映画祭に参加したことはほとんどない。昨年、東京国際映画祭のコンペティションに呼んでいただいた監督作の「喜劇 愛妻物語」はいくつかの海外映画祭にも招待されたが、新型コロナの状況で一つも参加できなかった。だから東京国際映画祭と他の海外映画祭を比べることはできない。が、映画祭は作り手を発見して育てていく役割もあるとはよく言われることで、そういう意味では私は東京国際映画祭に育ててもらった自覚がある。

 

2006年、駆け出しのころに書いた「キャッチボール屋」という映画を今の「スプラッシュ部門」の前身である「日本映画・ある視点」部門で上映してもらい、そこから8年の間が空き(仕事がまったくなく映画を作れなかった人生の暗黒期で、これ以上の暗黒が来る可能性もあるが耐えきれるかどうか不安だ)、次は2014年の「百円の恋」だった。「百円の恋」は日本映画スプラッシュ部門で作品賞をいただき、東京国際映画祭をきっかけに多くの海外映画祭に呼ばれ、私もドイツの映画祭に行った。その次は初監督の「14の夜」で呼んでもらい、昨年「喜劇 愛妻物語」でコンペティションに呼ばれたときは素直にうれしかったし誇りに思った。

 

そして今回の「アンダードッグ」はオープニングだ。映画祭側が「アンダードッグ」を映画祭の顔として選んでくれたのだと思うと光栄だった。お前の映画なんかやってるからレベルの低い映画祭って言われんだよ、と言われれば、今後はもっと面白い映画を作って恩返ししていくしかない。

 

とりあえず今日は12時から「ノマドランド」を観てその後、オープニングセレモニーに出席。17時半より「アンダードッグ」上映。5時間近い作品ながら観客の皆さんは熱心に観てくださっていた気がする。上映後に武 正晴監督とQ&Aに登壇。今年はお客さんとのやり取りも少なくなってしまっているのでこういう触れ合いに飢えていた身としてはとても楽しくもっと語らいたかった。こういう場を用意していただいたことにも感謝しかない。

 

↑「アンダードッグ」上映後の深夜。左から佐藤 現プロデューサー、武 正晴監督

 

11月1日

間もなく撮影が始まるドラマの打ち合わせで大阪に行く。新幹線内で絶対に寝ようと思っていたのに、昨日の「アンダードッグ」の上映反応エゴサーチで一睡もせず目と首と腕を酷使する。もう右腕が痺れて動かない。

 

ドラマの台本はもう一息だ。コロナがここまで(国内での)猛威を振るう前の、今年の3月くらいから企画が始まり、4月5月くらいに一度止まって、それからいろいろと世相を見ながら内容を練り直してきたが、何とかここまで来た感じだ。大阪に何度来たのか忘れたが、すっかり新大阪駅で肉まんの551HORAIを買って帰るのが習慣になった。だが、そのうち3回くらいは新幹線内に忘れている。網棚に置くとアウトなのは分かっているのだが、足元に置くと邪魔だし冷蔵ものだから網棚に置いてしまうのだ。いやあれは網棚ではないけれど、それにしてもこの忘れっぷりは我ながら脳のどこかがおかしいのかと思う。たいていは丸の内線の改札あたりで忘れたことに気づくのだが、取りに戻るのは面倒くさいのでそのまま帰ってしまう。

 

「お前の頭がおかしいのはそこでそのまま帰ってきてしまうところだ。忘れることよりも気づいて取りに行かないお前の人間性が死ぬほど嫌いだ」と妻は言うが、丸ノ内線一歩手前まできて、財布ならまだしも肉まんでまた新幹線のホームに戻るのはとてつもなく面倒くさい。取りに行かない人のほうが多いのでは?

 

11月2日

朝10時半から東京国際映画祭にてインド映画「遺灰との旅」鑑賞。ジェンダーやカーストなどの身分差別への風刺の効いたコメディ映画でなかなか面白かった。鑑賞後、場内でばったり武 正晴監督と会う。映画祭のときはこうして偶然同じ映画を観ていたりもするから楽しい。

 

昼からオーストリア・ドイツ映画「トラブル・ウィズ・ビーイング・ボーン」を鑑賞。詩的な映像美がどうのこうのと紹介文にあったからヤバいかもなと思ったが、やはりあえなく気絶。妻に何度か起こされたがそれでも目を開けていられなかった。でも、きっと良い映画なんだと思う。

 

17時から「アンダードッグ」の上映まで時間があるため、「オープニングに選ばれてお祝いだから行こう。お祝いがないと映画なんかやってる意味がない」と妻を泣き落とし、前から行きたかったウルフギャングに妻と入店。まさに今にもギャングが乱入してきてマシンガン撃ちまくりそうな店内の雰囲気に私のテンションは急上昇。が、テンションが上がれば上がるほど妻が不機嫌さを露にするので、腹が立ってもう一つ二つテンションのギアをあげ、ランチで一番高いやつを注文すると、店員さんの前だというのに「はぁ!? 何考えてのあんた!」と妻が阿呆みたいに大きな声を出し、結局2番目に高いやつとなった。

 

15時ごろに入店したので他の客はほぼなし(IT系の金持ちっぽい男とめちゃくちゃケバイ彼女と、何かは分からないが、何だかおしゃれな仕事をしていそうな3人組はいたが)でゆっくりできた。

 

不機嫌さを隠さず肉にがっつく妻に、飲みきれなかったギネスビールをあげたがそんなもんで機嫌は直らなかった。でもステーキは最高においしく、また店内にスコセッシやデ・ニーロとかの写真も貼ってあってさらにはしゃいでしまった。食後に温かいアップルパイに濃厚なバニラアイスを乗せたやつを私が追加注文すると妻は「豚野郎!」と罵ってきたが、聞こえないふりして食った。美味かった。ダイエット中だが多分太っただろう。

 

↑飄々とした店員さんが、他にもたくさんデザートをオススメしてくれたが、結局無難なアップルパイにした。あっつあつのアップルパイに、クリームとバニラアイス乗せはすさまじい破壊力で2秒で完食(by妻)

 

17時より「アンダードッグ」上映。前篇上映後、武監督と森山未來さんと勝地 涼さんの舞台挨拶。しかしこの映画、前篇だけ見ると、森山さんはボロ雑巾のようにボロボロ、勝地さんは泥臭くも光輝く。だからこのタイミングでのお2人の舞台挨拶はどっちが主役だよと突っ込みたくなる感じで面白かった。

 

後篇後、お三方と共に私も登壇させてもらい観客の皆さんとQ&A。質問もたくさん頂いた。上映後は久しぶりに会うキャストやスタッフの方々も楽屋に来てくださったが、こういうご時世で打ち上げなどが出来ないのは寂しい。それでも喜びを分かち合えて、短くもよい時間だった。

 

11月4日

午前中、脚本執筆。右肩甲骨および右腕痛しは変わらないのだが、以前から日記で肩甲骨と腕のコリを執拗にアピールしていたところ、読んでくださった方から「ファイテンのこりとりくんが効くかもしれませんよ」との情報をいただき使っていた。妻は3000円以上のものに対しては余程のことがない限り買ってくれないのだが、毎日マッサージに行かれるよりはまし、と言うことですぐに買ってくれたのだ。夜な夜な肩甲骨の下に置いて寝ており、おかげで何もしていない時は楽になったのだが、ペンを持って書き始めると次第に痛くなる。妻の機嫌が悪くワープロ打ちを自分でしなければならないと10分もたたずに痛くなってきてしまう。仕事に集中できないくらいの鈍痛なのでほとほと困る。

 

昼から東京国際映画祭でメキシコ・スペイン映画「息子の面影」を見て(メチャクチャ怖かった。あまりに残酷な人生。でも、あのゲリラのような人たちがどんな人たちなのかはよく分からなかった)、妻とともにダッシュで高校の授業へ。生徒たちは中編のシナリオを書き始めたのだが、思ったより集中して楽しんで書いている。すごい。

 

帰宅後、息子と風呂。このところ息子は毎日のように「のび太がカンニングした!」とチクってくる。カンニング出来たのび太が心底羨ましいようで(なぜかは要領を得ない)、うるさいから「じゃあ、お前もカンニングしろ」と言うと、「それはダメなんだよ!」とムキになって否定する。悪いことと羨ましいことの間の板挟みで毎日毎日この話を繰り返している。そして、同級生の空手少女と姉に勝つために、日々腹筋だけは怠らない。

 

↑「アンダードッグ」の予告を観てから、毎日上半身裸とマウスピースで、「地獄の筋トレ!」と騒いで腹筋と腕立てしてます。クラスで一番のチビなので、背も伸ばしたいらしく毎日牛乳がぶ飲みです(by妻)

 

11月5日

東京国際映画祭にて「老人スパイ」鑑賞。もう一本観る予定だったが余りに身体がだるいので帰宅し、息子と銭湯へ。私がよく行く銭湯は入れ墨の入った方がよくいるのだが(今どき珍しくお断りの看板はないのだ)、空気の全く読めない息子は以前からその方々へ「ねえ、背中に絵、描いてるねえ」などと平気で話しかけるので焦る。今日は年配の入れ墨の方がいて、息子に「絶対に妙なことを言うな」と言ったら、「知ってるよ、ヤンキーなんだよ、あの人たち」と何かで少しは事情を知ったようだ。

 

だが、その年配の入れ墨おじさんが露天に行けば息子も露天について行き、炭酸風呂に入れば一緒に入り、ずっと入れ墨を観察している。しかもかなりの至近距離。知らん顔も出来ず、疲れが一切取れない銭湯タイムだった。

 

最近、若い人は背中だけでなく表にも入れ墨を全身入れている人もいて、それはものすごい迫力だ。首から足首まで身体の裏表全身くまなく墨入りはやはりちょっと怖いというか、一瞬スパイダーマンのようにも見えてしまう。息子が一緒だときっと今日以上の凝視状態になるだろう。

 

11月7日

故郷の鳥取にて「喜劇 愛妻物語」のトークイベント。司会は同郷の先輩で「喜劇 愛妻物語」に企画から携わっていただいた中江康人さんがやってくださり(そもそも今回の鳥取舞台挨拶は中江さんの企画だ)和んだ雰囲気のイベントとなった。お客さんもたくさん来てくださってほぼ満員での上映はうれしかった。上映後も多くの友人知人とも話せて、やはり故郷での上映はうれしさや恥ずかしさなどいろんな思いが混じり、他の場所とは一味違う。

 

夜は久しぶりに地元の同級生と飲みに行く。いくつになっても話す内容は頭の悪いことばかりでとてもここには書けないような品性下劣なことばかりなのだが、そういう話のできる同級生がいるのは本当にありがたい。

 

11月9日

東京国際映画祭にて朝からイラン映画の「荒地」鑑賞。全編白黒でセリフが極端に少ない。鳥取での疲れが出てこれも撃沈。妻は面白いと言っていた。ロビーに出るとまたも武 正晴監督と遭遇。武さんはロシア映画「親愛なる同志たちへ」を見ていた。83歳アンドレイ・コンチャロフスキー監督作品。一緒に昼飯を食いながら物凄いものを観た! と興奮していた。

 

その後フランスの恋愛映画「ラヴ・アフェアズ」鑑賞。フランスに生まれて恋愛をとことん楽しんでみたかったなあと思う。今、こんな恋愛状態になれば即メンタルぶち壊れだろう。だが最後は予想外に保守的な展開だった。日記に書いた以外にも映画祭ではいろいろと観たが個人的にはフランス・ベルギー映画「デリート・ヒストリー」がお気に入りだ。日本公開されたら皆様是非!

 

11月11日

午前中から執筆。集中力がないのと肩甲骨右腕の痛みのためすぐやめた。午後、妻と高校教師へ。その後、息子を闘い教室に迎えに行き、18時帰宅。

 

今日は週に一度、家庭教師の女子大生のおねえさんが娘に勉強を教えにきてくれる日なのだが、そのおねえさんを息子は大好きで、帰ると必ず娘の部屋に入って「こんにちは」と挨拶をする。娘はそれが強烈にうざいようなのだが、今日もいつものように挨拶をし、なおかつその後、私と一緒に風呂に入っていた息子が、何を思ったか風呂上がりの全裸で娘の部屋に入ってしまったようで(私はまだ風呂にいたから声しかきこえなかったのだが)、「ボク、今、風呂入ってたんす」と言って再度挨拶。

 

娘から怒鳴り飛ばされていた。

 

11月14日

浜松のシネマイーラさんにて「喜劇 愛妻物語」のトークイベント。毎週末のように地方回りをしているが、こういう状況の中でも呼んでくださる各劇場の支配人の方々には本当に感謝しかない。

 

シネマイーラの榎本さんは以前、東映の劇場で勤務をされていたとのことで、私も上京したばかりのころに渋谷東映でバイトしていたことや、歌舞伎町のミラノ座でバイトしていたこともあったりで、私がお世話になった方々ともお知り合いで、当時の話なども懐かしくさせていただいた。ご馳走になったうなぎも大変美味しく、特に初めて食べたウナギの肝刺しは最高だった。

 

11月16日

午前中執筆。右肩甲骨、右腕痛し。

 

午後、サウナ。最近サウナのTVはずっとアメリカの大統領選挙だ。サウナを見ている親父達が口々に色んなことを言う。しかしこの大統領選のやり合いはプロレス的で見ていて面白い。どちらが勝っても日本にはそんなに優しくないだろうが。そしてこの場合、優しきゃいいってものではないが。

 

反抗期の娘はテレビや映画を観ながら「マジ、ワラ、クサ」「ないわー」「つえぇ、こいつメンタルつぇぇ」など突っ込みまくっており、かなりうざい。だが「お前、うざい」などと言おうものなら烈火のごとく怒って不機嫌になり、挙句泣き出したりするので、感受性むき出しの思春期は本当に厄介だ。

 

そんな娘は大統領選にも「バイデンって何気にクソなんでしょ?」とかどこで何を読んだり見たりしたのか知らないが突っ込んでいる。何がクソで何がクソじゃないか、子どもたちにきちんと説明できる大人になりたかった。

 

11月17日

今日から3日間ワークショップだ。今回のワークショップは中村義洋監督、窪田将治監督と共に総勢16人の俳優さんと3日間ずつ計9日間のワークショップをし、最後に各監督で短編映画を作ることになっている。

 

新型コロナの状況で、今年は各ワークショップもほとんど開催されておらず、私自身も久しぶりのワークショップだ。今回は最初の設定だけ作ってワークショップをしながら台本を書いていったのだが、お芝居を作っていくのはやはりめちゃくちゃ楽しかった。

 

11月22日

3日間のワークショップで台本を作ったものを本日撮影。一日だけの撮影だったが、ワークショップしながら作った台本が撮影をしながらさらに変わっていき、どんな仕上がりになるのか楽しみだ。

 

マウスシールド越しのキスシーンを撮ったのだが、妙に胸が切なくなりキュンキュンした。

 

ユニークな俳優さんたちとも出会えて、私にとってはとても充実したワークショップとなった。俳優さんたちにとってはどうだったのかは分からないが。

 

11月26日

午前中執筆。肩甲骨、腕、手首も痛い。

 

夕方息子を闘い教室に連れて行く。今日は娘も体験入門する。その後に妻と待ち合わせて地元の酉の市に行く予定のはずだった。

 

「闘い教室終わったら連絡して。近くの本屋とかにいるから」と妻から言われていたが、闘い教室の間、練習している息子や娘を見ながらエゴサーチしていたらスマホの電源がなくなってしまった。なので妻と連絡が取れなくなり、闘い教室後、周辺を少し探したが妻の姿がないので、仕方なく酉の市の会場の神社前で待つことにした。勘が良ければ連絡が取りあえないのは私のスマホの電源が落ちたと気づいてくれると思ったのだが、待てど暮らせど妻は来ない。娘と息子をここから動くなと置いて周辺を探しに行っても見つからない。

 

「いったん家に戻ってスマホ充電してからママに連絡とればいいじゃん」と機嫌が悪くなり始めた娘の言う通り、私だけ一度家に戻ってみたが(自転車で10分)、鍵がかかっていて入れず、スマホも充電できなかった。この時点で闘い教室が終わってから90分くらいたっていたので、娘も息子も「おなかすいた」とうるさくなってくる。

 

とりあえず何か腹に入れさせようと、近く中華に入り、から揚げやチャーハン、ラーメンをむさぼり食い、また神社付近をかるく探したが見当たらず、プラプラして帰宅すると妻が真っ暗闇の中風呂に入っていた。

 

「なんだいたんだ?」と言うと、妻は不機嫌極まりない声で「いたんだじゃねえよ、どこで何してたんだよ!」とめちゃくちゃ不機嫌だ。

 

「ずっと探してたよ。バッテリーなくなっちゃったし」と言うと、妻は2時間半ずーっと闘い教室の道はさんだ向かいのマンションのベンチで本を読んで待っていたらしく心底冷えたらしい。道を挟んでしまっては見つかるものも見つからないだろうと言うと、「なんでバッテリーが切れる前に、そろそろバッテリー無くなりそうとか連絡一本できねえんだよ、どうせエゴサーチでもしてたんだろうがこのタコ!」と風呂で絶叫。すると息子が来て悪くないのに「ママ、ごめんね」と謝りながら、おもむろに服を脱いで裸になると、「来るな。ママ今日は一人で入りたいの」と言われたがかまわず湯船に飛び込んだ。

 

私は決して悪くない。こんなに怒鳴られる筋合いはないはずだ。悪いのはすぐになくなるバッテリーだろう。

 

11月28日

5時半起床後、すかさずエゴサーチ。昨日から「アンダードッグ」が公開されたからだ。今日は舞台挨拶もあるが、私は「喜劇 愛妻物語」もトークイベントが岐阜でありそちらに参加。司会の岐阜新聞映画部の後藤さんが夫婦のセックスというネタにこれでもかと切り込んでくださり、個人的にはうれしかったが、会場の皆さんが静かで、もしかしたらセックスという言葉の連打にやや引かせているのかと気になったがどうだっただろうか。でも、代情プロデューサーとともに映画の話をたっぷりできて私としては楽しい時間だった。

 

11月29日

今日はTAMA映画賞の授賞式だ。濱田 岳さんと水川あさみさんが「喜劇 愛妻物語」で主演男優賞と主演女優賞をもらったのだ。本当にうれしかった。よくぞ二人を選んでくださったと私から逆にTAMA映画賞の皆さんに賞をあげたいくらいの気持ちだがいらないだろう。

 

この受賞で濱田さんと水川さん、そして一緒に映画を作ってくれたスタッフにも少しは恩返しができたかなと私にしては珍しく殊勝な気持ちにもなっていた。それにこの状況の中でも、大きな会場に人を集めて、感染症対策を講じながら授賞式を開いてくれたTAMA映画祭の皆さんにも感謝しかない。やはり人がいるといないとでは盛り上がり方がぜんぜん違うのだ。

 

福山雅治さんが登壇したときなど黄色い声の一つもあげたいだろうに、皆さん静かに見守り、でも受賞者の皆さんのジョークなどにはきちんと反応もして、とても雰囲気の良い受賞式だった。私と妻も濱田さんと水川さんに花束を渡す係で登壇したが、夫婦にとっても最高の思い出となった。これで20年間苦労をかけてきた妻への慰労はチャラになったかと思うと(全くチャラになってません!!! by 妻)肩の荷もおりた。式後、家に戻って「ご褒美に寿司を食いに行こう」と提案したが瞬間で却下された。

 

 

【妻の1枚】

 

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【プロフィール】

足立 紳(あだち・しん)

1972年鳥取県生まれ。日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。助監督、演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回「松田優作賞」受賞作「百円の恋」が2014年映画化される。同作にて、第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」、第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。ほか脚本担当作品として第38回創作テレビドラマ大賞受賞作品「佐知とマユ」(第4回「市川森一脚本賞」受賞)「嘘八百」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「こどもしょくどう」など多数。『14の夜』で映画監督デビューも果たす。監督、原作、脚本を手がける『喜劇 愛妻物語』が公開中。著書に『喜劇 愛妻物語』『14の夜』『弱虫日記』などがある。最新刊は『それでも俺は、妻としたい』。

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