2002年からKBS京都放送でスタートしたチュートリアルの冠番組『キョートリアル! コンニチ的チュートリアル』。実は、この番組20年近く放送が続くご長寿ラジオなのだ。今回、チュートリアルの2人には、番組の変遷を語ってもらいつつ、人気芸人たちとのエピソードや徳井が芸能活動休止から復帰した当時の様子までを、がっつり聞いてみた!
(撮影・構成:丸山剛史/執筆:kitsune)
――もうすぐ『キョートリアル! コンニチ的チュートリアル』が放送1000回目を迎えるそうですね。おめでとうございます!
徳井 そうなんですよね。いま980回くらいなので、今年中には1000回を越えますね。今年4月で、始まって20年目に入るのかな。
――かなり長いこと続いているんですね。始まった当時のことは覚えていますか?
徳井 当時は基本的には舞台の仕事ばっかりのころですね。テレビには少し出始めたくらいで。
福田 最初に、KBS京都さんで『チュートリアルの金曜ナマチュー』という番組をやらせてもらったんですよ。ナイター中継のオフシーズン番組で。それが好評で「ちゃんとした番組をやりましょう」となって始まったのが『キョートリアル』ですね。
徳井 キングコングの番組の後釜やったんな?
福田 そう、キングコングがバーッて売れたから、辞めなアカンってなって始まったんです(笑)。
――そんな経緯があったんですね。舞台の仕事がメインだった頃とのことですが、ラジオ番組に興味はあったんですか?
徳井 いや、僕ら全然ラジオっ子じゃなくてね。芸人さんだったら、ハガキ職人だったとか、オールナイトニッポンをずっと聞いていたとか、エピソードがよくあると思うんですけど……。
福田 だから、やり方も話し方も全然分からなくてね~。たまに、番組中に初期の放送回を流すんですけど、初々しいですね。一生懸命話そうとしていて、今とは全然違いますよ。
――初期から聞いてくれているリスナーさんは今でもいますか?
福田 少数はいますけど、それより一回離れて戻ってくる方が多いんですよ。まだやってるんだ、と思って久しぶりに聞いてみました、というお便りが多い。
徳井 一度、関西を離れて聞かなくなったけど、戻ってきたらまだやってて聞き始めましたって人とかね。20年近くやってると、それはリスナーさんの生活も変わりますよね。
唯一無二のラジオ!?「進化もなければ、変化もない(笑)」
――長いこと続けられてきて、番組自体で何か変わったことはありますか?
徳井 いや……逆に、このラジオだけ時止まってるのかなって思いますね! メディアの変化も何も受けていなく、周りを山で囲まれてしまったかのような。
福田 ガラパゴス状態ですね。何の進化もしてないですけど(笑)。
福田 オープニングで自分たちが留守番電話を入れておく流れがあるんですけど、あれも何も変わっていないんです。初代ディレクターの発案でしたが、歴代ディレクターが変えることもなく。俺らがやりたいわけでもなく、辞めたいわけでもなく(笑)。
――すごいですね。長く続いていると、どこかで改変されることが多いのに。
徳井 進化もなければ、変化もない(笑)。
福田 昨年は、東京でラジオをやっているような芸人にゲストで出てもらうこともありましたが、話を聞けば聞くほど『キョートリアル』の唯一無二感がえげつなくて……!
――しかも、ずっとディレクターさん含め3人で番組作りをされているとか。
福田 そうなんです。他の番組だと基本、構成作家さんがいますもんね。アシスタントすら入ることもなくて。
徳井 よく続いているな、と自分らでも思いますね。感謝はもちろんありつつ、未だに疑問も多い番組ですね……!
どこからも反応がない…! 聞いているのは〝サイレントリスナー〟?
福田 評判良いとかも聞いたことないしねえ……。
――え! そんなことはないと思いますが……。
徳井 いや、これマジなんですよ! 良いも悪いも聞いたことなくて! 何故ならどこからも反応がゼロだから。
――芸人さん同士ですと、ラジオで話したことが他で話題に上ることもよくあると思うんですが、そういったことは?
徳井・福田 ないですね!!
徳井 テレビの収録終わりとかに先輩に「この後、何かあるん?」って聞かれたときに、「KBSのラジオの収録です」っていうと「アレまだやってんの!?」って言われましたし。
――芸人さん以外の反応はどうですか?
福田 本当に不思議な番組でね。聞いてる方はいらっしゃると思うんですけど、リスナーの方が引っ込み思案なのか、感想が僕らまで届かないんですよね。
徳井 この前、新幹線の喫煙所で、「キョートリアル聞いてます!」って初めて声かけられて、えぇっ!?って本気で驚いちゃいましたね。聞いている人いたんや……って。
――でもリスナーさんからのお便りはありますよね?
徳井 お便りをくれる人もわりと限られてるんです。ディレクターは〝サイレントリスナー〟が多いって言ってますね。始まったときから、ずっとそうなんですよね~(笑)。
打ち切りの危機を回避「行きつけの〇〇〇屋がスポンサーになりました(笑)」
福田 ほんま20年近く続けさせてもらってますけど、過去何回もディレクターに「お金がないので終わりそうです……」と告げられているんですよ(笑)。直で「金がない」って相談をされることあります?
徳井 何度も本格的な危機がありまして。その度に、なんとか乗り切ってね。ギリギリで「スポンサーが一件見つかりました!」って言って存続している。
福田 一時は、僕の行きつけのバイク屋のオッサンがスポンサーになっていましたからね! 京都の「モトスペースT2」っていう。それで、リスナーからバイクに関するメールを募集する謎のコーナーがありました。僕らはバイクが好きなので楽しかったんですけど(笑)。
徳井 そうなんです。大手企業ではなくて、個人店がスポンサーさんになってくれることがあって。そういう意味では、パブコーナーでの気持ちの入り方が違いますよね。スポンサーさんって本当にありがたいなって。
――地元の方の支えもあったんですね。それこそ、番組にお知り合いの方が登場することが多いですよね。
福田 そうですね。いまのエンディングなんかは、徳井の高校の時の元相方・辻野くんと僕が大学の時に働いていた居酒屋の元店長・速水さんが歌う〝演歌〟ですから。『心都情夜』(みやこじょうや)という曲です。
徳井 斬新ですよね~(笑)。
――新しいです。どういった流れで、エンディングに決まったんですか?
福田 初めは、電話で話したい人を募集するコーナーがあって、そこで久々に元店長と話したんです。聞いたら、いまは演歌歌手をやっているということで、徳井がノリで「エンディング作ってくださいよ~」って言ったら、めちゃくちゃ乗り気でスグ作ってきたんですよ(笑)。
福田 正直、ラジオの流れに全くそぐわないド演歌が急に流れますからね。未だに女性ディレクターは「この曲嫌です!」っていうんですけど。
徳井 それこそ、そのディレクターは、元々『キョートリアル』を聞いてくれてたリスナーだったんですよ。自分なりの『キョートリアル』のイメージがあって制作していて、そこに『心都情夜』は合わなかったんでしょうね~。
――あはは、なるほど! でもちょっとしたノリで企画が進んでいく感じが面白いです。
徳井 ミニマムなラジオだからこそできることですよね。それこそ反応も何もないので、自由にできるんですよ。リスナーさんの好き嫌いを考えなくても大丈夫というかね(笑)
――これは自由で楽しかったという企画はありますか?
徳井 僕がキャラクターに扮して、違うブースから電話をかけてくる企画は、全部アドリブでやりつつ、ラジオコントっぽくて面白かったですね。アレはまたやりたいと思っています。あとは定期的に曲を作っていたので、どこかでまた作りたいですね。
福田 昔、トランスとか作ったもんな。
徳井 そうなんですよ。リスナーさんのお悩み相談を集めて歌詞を作って、それをトランス系の曲にしたんです。京都駅のアバンティの前で公開録音をしたときに、その曲を発表したんですが、曲がラップ調でめちゃくちゃ早口だったんで、生で全く歌えなかった思い出がありますね~。
――最近は、曲作りはしてないんですね。
福田 そうなんですよ。今、僕らは一歩引いていますね。とりあえず『心都情夜』を軌道に乗せないといけないんでね(笑)。
1000回記念イベントは? 徳井の提案にディレクター苦笑い
――もうすぐ1000回ですが、記念のリアルイベントでやりたいことはありますか?
徳井 『心都情夜』のチェロバージョンを送ってきてくださったチェリストの方がいましたので、今度はオーケストラで『心都情夜』を演奏してもらいたいですね!
――やっぱりそこは『心都情夜』でイベントなんですね……!
福田 その案を本番中に話したら、ディレクターはえげつない苦笑いをしていましたが(笑)
徳井 そうなんですよ。でも、いいんです。結果的に実行できても、できなくても。例えば、オールナイトニッポンなんかでイベント案を話して企画倒れになったら、リスナーさんも期待外れになってしまいますけど、この番組に関しては誰も気にしないのでOKなんです。誰にも怒られない。
福田 まあ、ぶっちゃけ、リスナーが全員『心都情夜』が好きなわけじゃないんですけどね。「私も嫌いです!」って人もいましたし(笑)。僕らがやりたいだけ。
――とりあえず、今のところは、1000回目記念は、『心都情夜』オーケストラになる予定ですね……!
徳井 はい、楽しみにしててください(笑)
番組の枠を越えて……ミキの2人が『心都情夜』を!
――ほか記念にやりたいことはありますか?
福田 リスナーさんのお便りを読んだら、シールをプレゼントしているんですけど、実は一回も変わってないんですよ。さすがにそろそろ変えないと。
徳井 これはデカいことやね……。そもそもメールを送ってくる人が限られてるんで、持ってる人は同じシールを山ほど持ってるんですよ。何十枚単位で。
福田 大喜利のときなんて、お題が難しいから採用される人間が限られてくるんで、一人で100枚とかに!(笑)
徳井 ずっと黄色い丸のシールなんですけど、どうも貼りにくい。四角い貼りやすいやつに改良したいねえ。
福田 でも、これを提案したら、またディレクターが苦笑いで……! なんでやねんってなりましたよ。逆に何ができんねん!っていうね(笑)。
徳井 デザインにお金はかからんようにするって言うて、なんとか説得したんですよ。「じゃあ、それなら…」と渋々了承してくれました。
福田 そんなに嫌だったのかって(笑)。
――ディレクターさんとのやり取りも楽しそうです。
徳井 変わってる人ですからね~。でも番組愛が強くて、一番モノ申してくれるリスナーって存在ですね。
福田 彼女は『ミキの兄弟でんぱ!』というKBSの別番組のディレクターもやっているんです。ある時、ミキの2人が『心都情夜』を気を使って流して、歌ってくれたんですよ! その時もディレクターは「歌わんでもいいのに…!」って嘆いてましたね。
M-1ファイナリスト・おいでやす小田を「イジる会」開催!?
――そんなことがあったんですね。番組の枠を越えてのコラボは面白いです。
福田 ミキがゲストで来てくれたこともありましたね。番組の終わりに、フツーの川柳を紹介するコーナーがあるんですけど、「なんじゃこの川柳! ひとつもオモロないわ!」ってボロカス言うて帰っていったんですよね~。
――あはは! けっこうはっきり言いますね(笑)。
福田 先輩にたてついたら、かっこええと思ってるんですよ、昴生の方は! そういう年頃なんでしょうね(笑)
――今後、コラボ企画などでやりたいことはありますか?
福田 それこそ京都の芸人でコラボしたいですね。僕らとミキに加えて、おいでやす小田が同じ京都の北陵高校出身なんですよ。
徳井 そうなんです。5人で集まって何かしてみたいですね。
――おお! すごいメンバーです。小田さんはM-1で大活躍でしたもんね。
福田 そうなんですよ~。やっと小田が注目されたんですよね。以前、ルミネの出番が僕ら、小田、ミキで順に並んだことがあって、「北陵高校OBです」って写真撮ってSNSにアップしたら、小田だけ「眼鏡の人は誰ですか?」ってコメント来てて(笑)。
――そんなことが! 今やバラエティでひっぱりだこですもんね。
福田 世間が小田のことをちゃんと認めてくれたという。めでたいですね。
――5人で何がしたいですか?
福田 そりゃもう小田のことをイジる会ですよ! イジッた以上のものを返してくれる男ですから。
――それはリスナーさんも聞きたい回だと思います。
福田 でも、数年前、小田の冠番組のラジオがあったの知ってます? 小田が一人でしゃべるんですけど、放送事故かってくらい盛り上がってなかったんですよね(笑)。そんな小田が人気者になって、それで一緒にラジオをやれるんなら、感慨深いものがありますね~。
――コラボ回楽しみにしてますね(笑)
緊急事態宣言! 徳井の休業にリスナーたちが動いた……
――昨年は、徳井さんがラジオをお休みされてた期間がありました。3月にこの番組で復帰されたと思うんですが、その時のリスナーさんの反応はどうでしたか?
徳井 ほんまに、すごいたくさんの言葉を頂いて。ありがたかったですね~。
――皆さん、復帰を待っていたんだと思います。
徳井 リスナーさんが、あんなに反応をくれたのはあの時が初めてですよ!(笑)。
――いつもは静かなリスナーさんたちも……!
徳井 これはさすがに緊急事態だということで、お便りを送ってきてくださったんですよね。
――どんなお便りがありましたか?
徳井 みんな「待ってましたよ」とか「頑張って」とか励ましてくださって。長く続いている番組で、そのリスナーさんだからこその言葉を聞けました。それこそ「普段はメールしないんですけど、初めて送らせてもらいます」って方が多くて。
――見守ってくれてる形なんですね。
徳井 そうですね。ほんまにありがたい話です。テレビでは話さないような素の状態というか生活感のある話をしているのが、このラジオなので。ラジオを聞いてる人しか分からない我々の顔があって……深く知ってくれているんだな、と今回改めて感じましたね。
目標は日本一の長寿番組「まだやってるんですか? って言われたい(笑)」
――この番組をやっててよかったと思うことはなんでしょうか?
福田 京都の人間からすると、KBS京都ってやはり特別な存在なんですよ。このラジオがなかったら繋がれませんでしたから、良かったですね。それに、東京の番組に出ても「KBS京都で~」と地元やラジオの話題がしやすいんですよ。KBS京都と地元の皆さん、リスナーさんには感謝しています。
――KBSさんとの繋がりが大きいと。
福田 京都出身の芸人も多い中で、僕らが20年弱も独占して番組を持たせてもらえているのは本当にありがたいことですよね。
――徳井さんはいかがですか?
徳井 高校のときの自由研究で僕らのグループがたまたま「テレビ局を研究する」というテーマで、KBS京都に取材に来たんですよね。初めて入ったテレビ局で、まさかレギュラー番組を持たせてもらえるなんて思っていなかった。当時からの縁を感じます。しかも、その時は『心都情夜』の辻野と一緒に来たんですよね。
――おお、そうだったんですか!
福田 それに、地元の人間としてKBSを通じて京都の人とも繋がれているのも、うれしいことですね。
徳井 昨年、休業していろんな方から励ましのメッセージをもらったんですが、京都の人からも「同じ地元として応援してるよ」とたくさん言葉をもらって。ほんまに無条件で応援してくれている感じがして、京都の人はあったかいな、と思いましたね。
福田 地元の人には「やっぱりコイツらも京都人だな」って部分を感じてもらいながら、これからも番組を楽しんでもらいたいですね。
――今後、どのくらいまで番組を続けていきたいか目標はありますか?
徳井 同じくKBS京都でいくよ・くるよさんが長いことやっていた『はりきりフライデー』という番組があったんです。それを超すことが当初の目標だったんですけど……抜いたんちゃうんかな?
――『はりきりフライデー』は830回くらい放送したそうですよ。
徳井 100回も抜いてますね(笑)
福田 いつのまにか全然超えてるやん!
徳井 KBS京都の中でもなかなかの長寿番組になりましたね。次は、日本のラジオの中で一番長く続けることを目標にしましょか!
福田 ハードルは高いけどなあ。でも将来的には、後輩に「まだやってるんですか!?」って言われて、ウケるくらいにはなりたいですよね。
――今後も記録は伸びそうですね。最後にリスナーさんへのメッセージをお願いします。
徳井 そうですね~……なんてことないラジオですけど、続く限りは片手間に聞いていただければと思いますね。
福田 そうそう。毎週楽しみにしなくて全然いいので。
――そ、そんなことはないんじゃないでしょうか、リスナーさんは……(笑)。
徳井 いや、ほんまに!聞き逃してもらっても何ら問題ないので。
福田 ここでは重大発表も爆弾発言もないですし。ただみんなと同じような毎日を淡々と過ごしているオッサン二人の会話を聞いてほしいですね。僕らも肩肘張らずにやっていくので、みなさんもゆるっと聞いてほしいです。
――ありがとうございました!
『キョートリアル!コンニチ的チュートリアル』
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