雑貨・日用品
2021/2/1 17:00

全世界2000億個出荷達成! パナソニック乾電池の過酷すぎるチャレンジと90年の歩みを振り返る

2020年9月末、とてつもない記録がひそかに達成されていたのをご存知でしょうか? それは、パナソニックの乾電池が全世界で累計出荷数量2000億個を達成した、というもの! 地球上の人類77億人が各自26個も買って、ようやく達成する数。プロ野球だって、選ばれしほんの一握りの打者が苦労の末、2000本安打を達成できるのに、2000億個なんて想像を絶する数字です。それだけ、パナソニックの乾電池の品質と安全性が、長年にわたって世界で信頼され、愛されてきたという証でしょう。

 

野球と乾電池を比べるのもどうかと思いますが、普段の暮らしのなかで製品にお世話になっている日本メーカーのパナソニックが成し遂げた記録というのは、なんだか誇らしい気持ちになりますね。

2021年は、1931年にパナソニック(当時の社名は松下電気器具製作所)が乾電池の自社生産を開始してから90年、という節目の年。パナソニックの乾電池が、なぜここまでの記録を達成できたのか? 今回はその進化の歴史と、過酷すぎる“チャレンジ”に注目してみたいと思います。これを読めば、乾電池の小さなボディに秘められた凄さがわかりますよ!

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90年の歴史をおさらい! 黎明期の乾電池は三角形だった

まずはパナソニックの乾電池の歴史を一気に振り返っていきましょう。

 

1923年「エキセル乾電池」……三角形!

自社生産ではないものの、最初にパナソニック(当時は松下電気器具製作所)が1923年に発売した乾電池が「エキセル乾電池」。パナソニックの創業者・松下幸之助さんが考案したこの乾電池は、自転車に搭載される「砲弾型電池式ランプ(現代の自転車用ライト)」用のもので、電池寿命30時間以上(当時は2〜3時間が一般的)という画期的なものでした。形はなんと三角形! 現在の感覚から見るとかわいい形ですね。

 

1931年「ナショナル乾電池」……戦前に300万個を売り上げた

その後、1927年に手提げタイプの角型電池式ランプを開発したところこれが大ヒット。ちなみにこのランプが昭和世代にはおなじみの「ナショナル」ブランド第一号となります。

 

この電池を本格的に普及させるため自社生産を開始したのが1931年。当時の名称は「ナショナル乾電池」。乾電池は、戦前、最高300万個を販売するヒット商品となりました。

 

1954年「ナショナル ハイパー」……お馴染みの形に

第二次世界大戦を経て、戦後の復興とともに乾電池も姿を変えます。1954年、日本で初めての完全金属外装乾電池「ナショナル ハイパー」を発売。いわゆる私たちの想像する乾電池のフォルムとなっています。

 

1963年「ナショナル ハイトップ」・1969年「同 ネオ ハイトップ」……マンガン乾電池が登場

1963年に登場したのが、従来の2倍の寿命があるマンガン乾電池「ナショナル ハイトップ」。カミソリ、電卓など幅広い分野に乾電池が使われるようになり、需要はますます増えていきます。その後も改良が重ねられ、1969年には当時の世界最高寿命を誇る「ナショナル ネオ ハイトップ」が完成しました。

 

1983年「ナショナル ウルトラネオ」・1992年「パナソニック アルカリ」……アルカリ乾電池が登場

1983年にはアルカリ乾電池「ナショナル ウルトラネオ」を発売。また、地球にやさしいエコ時代の流れに沿うように、1992年には水銀ゼロ使用のアルカリ乾電池が登場しています。普及が進むデジタル機器用の電池として、強負荷放電性能を大幅にアップした大電流パワーアルカリ乾電池も開発され、マンガン乾電池に代わりアルカリ乾電池が定着していきました

 

2004年「オキシライド乾電池」……長寿命が実現

そして、2004年には正極にオキシ水酸化ニッケルを採用した長寿命電池「オキシライド乾電池」が登場。「オキシライド乾電池・有人飛行プロジェクト」も行われています。この頃から、大胆なチャレンジの萌芽が!

 

2008年「エボルタ」/2017年「エボルタNEO」……最新形が誕生

2008年には、ついにおなじみのアルカリ乾電池「エボルタ」がお目見え! 日本国内では業界初の使用推奨期限10年を実現。2017年には長もち性能10%アップの「エボルタNEO」へと進化を遂げました。エボルタ時代からエボルタNEOまで、「世界一長もちする単3形アルカリ乾電池」のギネス世界記録を13年連続で更新しています。

 

駆け足でおよそ90年にもわたる、パナソニックの乾電池の歴史を振り返ってきました。乾電池に求められる役割が変化するなかで、時代に合わせて開発・進化を続け、日本の乾電池市場をリードしてきたことがよくわかりますね。

 

パナソニック乾電池の性能を示す“チャレンジ”が想像以上に過酷だった!

そんな乾電池が、小さいながら、どれだけ縁の下の力持ちとして働いているか? パッと見ではわからないものを目に見える形で、そして感動をもって伝えてくれるのが、2008年から始まったプロジェクト「エボルタチャレンジ」でした。

 

小さなロボット「エボルタくん」が、その背中に背負った乾電池「エボルタ」(エボルタNEOや充電式エボルタのときも)を動力として、世界を股にかけて記録に挑戦。そのチャレンジの内容は毎回過酷で、人間に置き換えて考えても「それは厳しすぎるだろうよ……」というミッションが並んでいます。パワフルで特別な電源やエンジンを使ってやるべきことを、小さな乾電池だけで成し遂げる姿は、涙なくしては見られません。

 

90年の歴史が培ったパナソニック乾電池の性能を証明すべく、どんな試練が課せられたのでしょうか?

 

乾電池2本だけでグランドキャニオン登頂にル・マン走破!

↑ご存知、グランドキャニオンとはこれほどの断崖絶壁!

 

記念すべき最初の「エボルタチャレンジ」は、2008年の「グランドキャニオンに挑戦」。

↑たった2本の「エボルタ」を動力源に、グランドキャニオンの断崖絶壁を登っていく

 

雨やひょうが降る過酷な環境のなか、6回目の挑戦でついに約530mのロープを6時間46分31秒というタイムで登り切りました! 新たに開発された「エボルタ」のパワーと持続力を世に知らしめたのです。

 

↑2年目はル・マンへ乗り込んだ!

 

2009年はなんと、モータースポーツの聖地ル・マンでの「24時間耐久走行」。この年も2本のエボルタだけを動力源にした車両型のエボルタロボットが、24時間サーキットを休みなく走り続けました。途中故障がありましたが、再走行で見事完走。走行距離23.726kmを記録しました。

↑小さなカラダでひた進む!

 

“天下の険”箱根で苦戦も乗り越える! 61日間に及んだチャレンジ

↑道中、地元の子どもたちとふれあいながら完走

 

2010年には、東京~京都間約500kmを走破する「充電式エボルタ 東海道五十三次」。61日間かけてのゴールでした。2011年は3種類のエボルタロボットが総距離約230kmのスイム・バイク・ランに挑む「充電式エボルタ トライアスロン」。こちらは昼夜ぶっ通し166時間56分で完走。

↑スイム、バイク、ランそれぞれにエボルタくんが取り組んだ

 

壮大なチャレンジが続きますが、徐々に「こう来たか!」と唸らせる工夫を凝らし、人々との関わりを重視した内容になっていきます。

 

プラレールから本物の鉄道まで!

2012年の14日間ノン・ストップでバーベル挙げに挑戦する「長もち年越しチャレンジ」を挟んで、2013年には誰もが子どもの頃1度は遊んだことがある「プラレール」とのコラボが実現しました。

↑小学校の体育館から校舎へと無尽に敷かれたレールをひた走る!

 

たった1本の乾電池を動力源にプラレールの長距離走行にトライ。翌年3月に廃校予定だった滝野川第七小学校の生徒たちが作った絵やメッセージで飾り付けられたコースなんと約5.6kmを駆け抜けました。世界一長いプラスチックレールを走破するギネス世界記録を達成しています。

↑2014年と2015年は、実際の線路を使用して行われた(写真は2014年のチャレンジ)

 

ここからチャレンジは本物の鉄道を使った内容へ! 2014年は「廃線1日復活チャレンジ」。2009年に廃線になった秋田県大館市の旧小坂鉄道小坂線内約8.5kmの区間で、単1形乾電池エボルタ99本を動力源に、総重量約1トンのオリジナル車両が有人走行を敢行。

 

2015年は「世界最長距離 鉄道走行チャレンジ」。川越工業高等学校電気科「電車班」の生徒が作成した車両が22.615kmの区間を2時間47分9秒で走破し、ギネス世界記録を達成しました。

 

とうとう、飛んだ!

↑乾電池パワーで無事離陸

 

そしてついに2016年、チャレンジは空へと羽ばたきます。「世界最長距離 有人飛行チャレンジ」。琵琶湖で東海大学人力飛行機チーム「TUMPA」製作の機体が乾電池エボルタのパワーだけで離陸し、3531mを飛び着水。残念ながら世界記録の達成はなりませんでしたが、動画サイトでの中継も盛り上がり、多くの人の記憶に残る飛行となりました。

 

再びエボルタくんに数々の試練が……

2017年からは「エボルタNEO」の出番。ふたたびロボットが登板し、厳しい環境のなかでも持続的に高いパワーを発揮する「エボルタNEO」のポテンシャルを証明しています。

 

「エボルタNEOフィヨルド1,000m登頂チャレンジ」は、エボルタNEO単3形2本を動力源に長もち実証ロボット「エボルタNEOくん」が、ノルウェーのフィヨルドのロープ登頂にチャレンジ。

 

2018年は「エボルタNEO 世界最長遠泳チャレンジ」。山から海へ舞台を移し、広島県・宮島口から嚴島神社の大鳥居までの約3kmをわずか17cmのエボルタNEOくんが泳ぎ切りました。「乾電池を動力にしたロボットが泳いだ世界最長距離」として、ギネス世界記録を見事達成!

 

そして2019年は「エボルタNEO トライアスロン」。お台場を舞台にエボルタNEOくんがトライアスロンに挑戦し、目標タイムである1時間45分01秒以内をクリアし、1時間26分40秒でフィニッシュしました。

 

数々の過酷すぎるチャレンジで、乾電池ができることの可能性を見せ、夢を与えてくれる「エボルタチャレンジ」。2020年はコロナ禍の影響もあり、残念ながら挑戦は見送られましたが、今後もロマンと驚きに満ちた企画で私たちをワクワクさせてくれることでしょう! 期待してマス!

 

CO2ゼロエミッションでさらにエコな乾電池へ

90年にわたり、私たちの生活と密着しながら歴史を刻んできたパナソニックの乾電池。現在は持続可能な社会の実現のために、すべての生産工場でCO2排出削減が進められ、すでにコスタリカ・ベルギー・ブラジルの3工場ではCO2ゼロエミッション化を実現しています。

 

引き続き、日本発の技術でグローバル市場に向けて、高品質で安心・安全な乾電池を供給していくというパナソニック。これからも小さな乾電池が私たちの未来を豊かにしてくれそうです。

 

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文/柚木安津