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2021/2/3 19:00

UberEats、Wolt……「飲食店マッチングサービス」が変えるフードデリバリーの最新事情と活用法

生活スタイルが一変した2020年、フードデリバリー業界では検索数が伸び、参入する企業が増えるなどの大きな変化がありました。「UberEats(ウーバーイーツ)」をはじめ、各国のデリバリーサービスも次々に日本へ進出し、自宅や会社にいながらして体験できるグルメの選択肢は、ますます広がっています。

 

そんな新しいフードデリバリーサービスの最新事情と楽しみ方について、業界の動向に詳しい株式会社ライドオンエクスプレスの正木伸繁さん聞きました。

 

UberEatsが変えたフードデリバリーの世界

かつては“出前”や“仕出し”と表現されてきた「フードデリバリー」のはじまりは、なんと江戸時代にまでさかのぼります。蕎麦やうどんを届けてもらうのが一般的で、当時は食器を返却するスタイル。それが1980年代に入ると、ピザの宅配サービスがアメリカから日本へ。自社で配達員と宅配用の三輪バイクを抱える業態は、デリバリーの可能性を広げた第一歩でしょう。

 

「現在、フードデリバリーの二大巨塔となっているのは『出前館』と『UberEats』です。出前館は、もともと自前で配達できる飲食店のみを集めた注文プラットフォームでしたが、出前館自体が配達員を雇って配達機能を持つようになったことで、加盟する飲食店の幅を増やしてきました。その後、2016年に進出したUberEatsは、これとはまったく違った形のデリバリーと言えます。

これまでのように配達員を雇用するのではなく、飲食店と配達したい人をアプリでマッチングさせるだけ、といういわゆる“飲食店デリバリーマッチングサービス”は、多くの功績をもたらしています。ひとつには、雇用を生みました。仕事や学業の合間にちょっとだけ働くことができ、働く地域や時間も自由にチョイスできる仕組みは、コロナ禍で仕事が減ってしまった方や、アルバイトを自由な時間にしたい学生の救いにもなっています。

もうひとつは、飲食店の新たな可能性を見出したことです。これまで行ったことがなかった地域の店の料理も、アプリひとつで注文できるので、飲食店にとっては顧客層を広げることができます。また、お店側からすると、配達員を雇用しないという形態を取ることで、人件費の削減にもつながるわけです」(株式会社ライドオンエクスプレス・正木伸繁さん、以下同)

 

UberEatsだけじゃない、注目の飲食店デリバリーマッチングサービス

それではここで、今、日本にある飲食店デリバリーマッチングサービスを教えていただきましょう。言わずと知れたUberEatsは、認知度がもっとも高いと言えますが、それ以外にもさまざまなサービスが立ち上がっています。

 

1. Wolt

フィンランドのヘルシンキから上陸したWolt(ウォルト)は、2020年3月に日本進出したサービス。サービス開始の地に広島県を選んだのが大きな特徴です。

 

「一般的には東京や大阪といった都市でスタートさせることが多いなか、“ヨーロッパの都市に似ていて、Woltの経験が活かせる”という理由で、広島から札幌、東京、福岡と各地に広がっています。UberEatsのようにファストフードが全面に出るというより、隠れた名店にフォーカスしているので、“こんなお店があったんだ”という発見にもつながります。また、ブルーのユニフォームと配達バッグがおしゃれで人気があり、配達員として働いてみたいと思う方が多いようです」

Wolt https://wolt.com/ja/

 

2. foodpanda

ドイツ発のデリバリーマッチングサービスで、日本では2020年9月に横浜、名古屋、神戸から開始されています。東京ではまだ使えないものの、札幌、福岡、広島、大阪とエリアを拡大しているところです。

 

「foodpandaの特筆すべきサービスは、ローソンと提携している点です。まだ使える店舗は少ないのですが、お弁当や飲料といったものだけでなく、日用品や雑貨、雑誌なども届けてもらえます。買い物に行きづらいお年寄りや子育て世帯にも需要がありそうですよね。すでにローソンはUberEatsとも提携していますので、これが2社目の提携となります」

foodpanda https://www.foodpanda.co.jp/

 

3. FOODNEKO

2020年12月に韓国からやってきたばかりのサービス。韓国国内でデリバリーアプリのシェア一位というWoowa Brothersが運営しています。

 

「FOODNEKOの特徴は、なんといってもそのネコのキャラクターのかわいらしさです。配達員をネコライダーと呼ぶこともウケがよさそうですよね。同じようなサービスが乱立しはじめると、どうしてもお得な方や便利な方に顧客は流れてしまうのですが、それに対抗するのが情緒的視点。“かわいいから使ってみたい”というところで、新しい顧客を開拓していくと思います。一人前から頼めることや配達料が1.5kmまで無料なことなど、手軽に頼んでみたいと思わせるシステムです」

FOODNEKO https://foodneko.com/company

 

4. DiDi Food

中国の北京に本社があり、2020年4月、まさにコロナ禍で外出自粛期間中に大阪府で実証実験をスタートさせたデリバリーサービスです。

 

「UberEatsと同様に、もともとはタクシーの配車サービスだったところから、デリバリーサービスを展開しています。東京ではまだ使えませんが、6月から本格的にスタートを切り、2021年1月下旬には福岡に進出することが決まっています。地域との結びつきを大切にしているようで、近畿大学の学生が起業した会社とコラボレーションして近大マグロを宅配したり、美術館とのコラボレーションもしています」

DiDi Food https://www.didi-food.com/ja-JP/

 

【番外編】国内発信のサービス

海外から日本進出するサービスだけでなく、日本の企業がローンチしたサービスもあります。

 

『Chompy』は、2020年8月から正式にはじまったサービスで、東京都渋谷区のみのエリアというところからスタートしました。現在は渋谷駅から半径4.5km圏内まで拡大し、新宿や目黒、三軒茶屋などでも利用できます。地域密着型とあって飲食店の方の顔写真を載せ、お店からのコメントが読めるようになっています。アプリの中でも人と人のつながりを感じられるのがいいですよね。また、デパ地下と提携しているので、ちょっと特別な日にワンランクアップしたものを買ってきてもらう、という使い方もできます。もうひとつは『menu』というサービス。もともとはテイクアウトのみ取り扱っていましたが、2020年4月からデリバリーサービスもはじまっています」

 

これから使いたい! フードデリバリーの活用法

今や誰もが宅配を気軽に利用する時代になり、天気の悪い日や出かけたくないとき、リモートワークで手が離せないときにも、アプリから好みの食べ物を選ぶだけで、おいしいものが手に入ります。でも、サービスが多いと何をどう選べばいいかわからないという人も多いはず。また、なんとなく機会を逃したまま、使っていない人もいるかもしれません。具体的には、どのように活用すればいいでしょうか?

 

1. 知らない店を探してデリバリーしてみる

「まず、どのサービスのアプリを入れるか考えるときは、配達エリアや時間、どのような飲食店が登録しているのか、調べてみましょう。実はデリバリーを使う方のおよそ85%が、そのお店をイートインでは利用したことがない、という方なんです。行ったことがあるよく知った店よりも、行ってみたかった店、気になるメニューがある店などのデリバリーをオーダーしてみると、楽しいと思いますよ」

 

2. 入りづらいお店のメニューをデリバリーしてみる

「女性でしたら、たとえばひとりでは入りづらいお店ってありますよね。がっつり系飯や牛丼店など、一度食べてみたいけれど入店にはちょっと勇気がいる……というお店のものをデリバリーでお試ししてみてはいかがでしょうか。“置き配”の設定もできますから、リラックスしている姿で玄関口に出たくないときにも便利です」

 

3. 食べ歩き感覚でデリバリーしてみる

「アプリで飲食店を検索するとき、メニューから検索することができるんですね。たとえば“カオマンガイ”で検索すると、たくさんのお店の情報が出てくるので、ひとつひとつ試してみながら、食べ歩きのような感覚でデリバリーを楽しむことができます。本当に食べ歩こうと思ったら、さまざまな土地に行かなくてはなりませんし、探すのも大変なので、こういう使い方ができるのは楽しいですよ」

 

4. フードトレンドになっているものをデリバリーしてみる

「今話題になっているのが唐揚げなのですが、なかでも“ヤンニョンチキン”という韓国から来た辛い唐揚げが沸々と人気上昇してきています。外出先で食べ歩きするのは難しくても、流行っているから一度食べてみたいな、と思うものをデリバリーしてみるのもいいですよね」

 

5. ハレの日にちょっといいモノをデリバリーしてみる

「デリバリーというと、どうしても使い捨て容器の安っぽい印象があるのですが、フルコースをデリバリーできたり、高級店だけが参加しているデリバリーサービスなどもあります。『DEAN & DELUCA』ではフルコースを、『FOOD-E』では日本料理のNobu Tokyoやウェスティンホテル東京のダイニングのメニューを、プロのドライバーが運んでくれます」

 

6. 飲み物やスイーツだけをデリバリーしてみる

「お昼ご飯やお弁当となると、必要な機会も少なくなりますが、タピオカドリンクをはじめ、シェイクやコーヒーなど、ほっとひと息つきたいときの“おとも”になるものをデリバリーするのもおすすめです。リモートワークではうまく息抜きできずにいる方もいるかもしれませんが、デリバリーが届いたら少し休憩する、というふうにリズムを決めておくのもいいですよね」

 

7. 特化したものをデリバリーしてみる

「店舗を持たず、デリバリー専門に調理しているゴーストレストランでは、変わったメニューを打ち出していることがあります。たとえば“究極のブロッコリーと鶏胸肉”というおもしろいネーミングの『QBT』の低糖質食ように、特殊で顧客範囲が限定される場合は、飲食店としてオープンするのはハードルが高いですよね。でもデリバリーでなら、人件費もかからず、オペレーションをシステム化しておいて営業することができます。何かに特化したこだわりのものをデリバリーしてみるのも楽しいですよ」

 

【番外編】フード以外のものをデリバリーする

デリバリーというと、お腹が空いたときの食べ物や生鮮食品などが思い浮かびますが、2020年11月からはじまったのが、インテリアショップのFrancfrancがUberEatsと提携してサービスを始めています。

 

「これで、UberEatsは初めて、飲食以外のデリバリーを始めることとなりました。取扱商品は決まっていますが、ギフトを買いに行く時間がない、という悩みから、デリバリーサービスを開始したのだそうです。海外では、薬の配達もありますから、これを機に今後さまざまなアイテム取り扱い、サービスが拡大していくことの始まりであると感じています」

 

はじめてデリバリーを頼むときの注意点

続いて、これまで注文したことがない方がはじめてのデリバリーで気をつけなくてはならないことを伺いました。

 

「もっとも気をつけなくてはならないのは、住所をきちんと入力することです。マンションの棟が間違っていたり、正しい表記になっていなかったり、建物名が書かれていなかったりしないか、確認しましょう。

デリバリーマッチングサービスでは特に、配達に慣れていない方や土地勘に疎い方が配達しているときもありますから、辿り着けずぐるぐるまわることになってしまうと、商品が冷めてしまうこともあります。よくTwitterなどで見かけるような、お弁当の中身がぐちゃぐちゃだった、などのトラブルはごく稀なケースと考えて大丈夫ですが、配達員が手間取らず配達できるよう心がけましょう。女性のひとり暮らしなどで表札が出ていない家もありますが、これも要注意です」

 

クーポンを活用してお得に頼んでみる

最後に、フードデリバリーはさまざまなチャネルでクーポンに出会いますよね。できるだけお得な情報を見逃さないためには、どこをチェックしておけばいいでしょうか?

 

「Twitterでクーポンを配布している店舗が多いので、各社のTwitterをフォローしてみましょう。それがもっともさまざまなクーポン情報を拾える方法だと思いますよ。写真のようなクーポン券も、加盟店ではレジの横で配布していたりしますから、チェックしてみてください」

 

手軽に食べ歩きするようにデリバリーを活用して、おいしいものを取り寄せてみてはいかがでしょうか? 家時間が続きマンネリ化しがちな日々の食生活に、ちょっとした楽しみをもたらしてくれるのではないでしょうか。

 

【プロフィール】

株式会社ライドオンエクスプレス / 正木伸繁

宅配寿司「銀のさら」事業におけるデジタルサービスの立ち上げから、コミュニケーションの拡大に至る全般業務に従事。オンライン・オフライン問わず、顧客体験の最大化を目的とした統合的なマーケティングを目指して活動していく中、個人のアウトプット力強化の目的で、noteを開始。主に日々チェックしているフード・デリバリー業界ニュースのまとめを週刊で更新している。
https://note.com/nbmasaki