デジタル
2021/3/26 20:00

PS5の品不足にも影響、メーカーを苦しめる半導体不足

Vol.101-1

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「PS5の品不足」。欲しい人になかなか行き渡らない、その背景にある“原因”はいったい何なのか?

 

PS5供給不足は世界中で発生している

 

昨年11月に発売されたPlayStation 5(PS5)は、いまだに入手困難な状況が続いている。ニュースなどでは、転売に関する問題が取りざたされることが多いが、そもそもの供給量が足りないことがこの問題の主な原因だ。これについて、ソニーは「2020年中に全世界で450万台を出荷した」と発表しており、いまも供給拡大に最大限の努力をしている、とアピール。だが、それでも世界中で品不足が起こっているのが現実だ。特に、日本の品不足は、供給されるPS5の多くが「世界向け」であり、日本への割当量自体が不足しているという側面もあるようだ。

 

だが、やはり本質的な課題は、「PS5の生産数を急激に拡大するのは難しい」という部分にある。ソニー・CFO(最高財務責任者)の十時裕樹さんは、2月に行われた2020年度第3四半期業績説明会にて「調達にはベストを尽くしているが、世界的な半導体不足の影響も大きい」とコメント。短期で生産計画を大きく上積みするのが難しい、という見解を示しており、供給不足解消の具体的な時期について言及するのを避けた。

 

ソニー・インタラクティブ エンタテインメント PlayStation 5/実売価格5万4978円

 

7nmプロセッサーの需給逼迫が品不足の原因

このようにPS5の大幅増産が難しい理由は、PS5に使われる半導体、特にメインプロセッサーの供給不足が大きく響いているからだ。PS5のメインプロセッサーはAMDとソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の共同開発によるもので、生産は台湾の半導体製造専業メーカー・TSMCが担当している。このプロセッサーには、製造プロセス(編注:半導体の製造に用いられる線の幅のこと)「7nm(ナノメートル)」のものが使用されている。重要なのは、同社の7nmの製造ラインは、PS5向けだけでなく、AMDのCPU「Ryzen 4000」「Ryzen 5000」シリーズ、そしてマイクロソフトの「X box Series X」「Series S」などでも使われているということだ。昨今は、テレワーク下での需要拡大により、ただでさえPCのプロセッサー需要が増えていた。そこに2つのゲームハードが同時に新型機を出した関係で、TSMCの7nmの製造ラインはかなり逼迫している状態なのだ。そのため、世界的に見ると、PS5だけでなく新型X boxも販売は好調なのだが、こちらも同様に生産数不足で需要を満たせていない事態に陥っている。

 

では、こうした供給不足はいつくらいに解消されるのか? AMDのリサ・スーCEO(最高経営責任者)は、「2021年上期はまだ供給がタイトだが、下期には供給量を上げられる。年間を通じては需要に見合う供給ができるだろう」と説明している。これはすなわち、今春から今夏くらいまでは、まだまだPS5の品不足は解消しそうにないということでもある。

 

ただ、そこで気になるのは、なぜプロセッサーの生産量を上げるのが難しいのか? という点だ。そもそも、昨年末に2つの新型ゲーム機が出るのは予定されていたことでもある。それでも生産ラインを増やせなかった理由、そしていまも増やしづらい理由には一体何があるのか? これについてはウェブ版で解説していくことにしよう。

 

 

 

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