新型コロナウイルスの感染拡大により、社会の在り方やわたしたちの生活スタイルが変化しつつありますが、その影響は家電製品にまで及んでいます。
家電メーカーのアクアが4月15日に発売した冷蔵庫「TZ42K」は、2019年に発売された「TZ51」シリーズの使い勝手はそのままに、サイズをコンパクトにしたモデル。同社のラインナップのなかでもハイエンドに属する、ラグジュアリーモデルに位置づけられています。
このTZ42Kが開発された背景には、コロナ禍での消費者の意識の変化があるとのこと。初代の「TZ51H」は、世界的プロダクトデザイナーの深澤直人氏による高級インテリアのような洗練されたデザインと、500Lクラスのサイズとしてはかなり大きな180Lの冷凍室を備えているのが特徴。従来より奥行きを6cm薄くした薄型ではあるものの幅が83cmと広めなため、これまで購入者の85%は一戸建て世帯だったそう。
その後、2020年に新型コロナウイルスの感染が広まったことで、スーパーなどに買い物に行く頻度を減らす家庭が増え、買いだめや冷凍食品の活用、食材・料理の冷凍保存などで冷凍室を活用する機会が多くなったことから、冷蔵庫を購入する際に「冷凍室の容量」を選ぶポイントにする消費者が増加。
また、自宅で過ごす時間が増えたことで家電製品のデザインにもこだわりを持つ人が増え、ラグジュアリーモデルを中心に人気が上昇し、冷蔵庫の購入単価も上がったそう。その結果、TZ51Hは2020年の売り上げが前年比で1.8倍も伸びたということです。
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しかし、「TZ51H欲しいけどうちには置けない」「もう少しスリムだったら買いたかった」などの声もあったようで、同社はラグジュアリー&大容量のコンセプトはそのままに、マンションなどの集合住宅にも置けるサイズのモデルを開発を決め、わずか1年ほどでコンパクトモデルTZ42Kを上市することができました。
スリムなのに大容量を実現できた技術力
TZ42は、TZ51Hの薄型デザインはそのままに、幅を83cmから70cmにスリム化。国内の住居の7割に設置可能なサイズとし、これまで設置場所の問題で購入をあきらめていた世帯まで裾野を広げます。
今回、クラス最薄の奥行きを維持したままスリム化を実現できたのは、ファンモーターの小型化や給水タンク位置の変更など設計上での工夫の賜物。野菜ルームの容量はTZ51Hとほぼ同じ大きさをキープしています。
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ウリのひとつである大きな冷凍室は、146Lの大容量に加え、6つのボックスに分かれたレイアウトにより、食材の種類や大きさによって整理しやすい設計になっています。
また、冷凍室の温度変化を抑制して霜付きや乾燥を防ぐ「おいシールド冷凍」や、野菜の鮮度を保つ「旬鮮野菜ルーム」などの独自技術により、食品の劣化を防いでフードロスを減らします。
これらを実現できたのは、アクアの前身である旧三洋電機の開発研究所が、そのまま同社が属するハイアールグループのR&D研究所として機能しているからこそ。コロナ禍による消費者のニーズの変化を敏感に察知し、いち早くコンパクトモデルを開発、上市できたのも、国内に開発拠点を持つ同社ならではと言えるのではないでしょうか。
コロナ禍がわたしたちの働き方や生活スタイルに与えた影響は大きく、今後も家電や住空間のトレンドを左右していくと見られています。そのニーズをいち早く読み取り、すばやく製品に反映できる柔軟な開発力が求められています。
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