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2021/5/13 18:20

ソニーの「360 Reality Audio」はこれまでのサラウンド技術と何が違うのか? 開発者に聞いた

ソニーが推し進める「360 Reality Audio(サンロクマル リアリティ オーディオ)」(以下360 RA)は、対応するスピーカーやプレーヤー機器などのハードウェア、音楽配信サービスのアプリを組み合わせて立体的な音楽再生が楽しめる同社独自のエンターテインメントです。今回は春にソニーが発売した360 RA対応の新しいワイヤレススピーカーの試聴体験レポートとともにその魅力を紹介します。

 

ついに360 Reality Audio対応のワイヤレススピーカーが登場

360 RAは2019年に欧米からサービスが開始されました。ホームシアターやモバイル向けの立体音響技術としてはドルビー・アトモスやDTS:Xなども広く普及しつつありますが、ソニーの360 RAはユーザーの足もと方向を含む360度全天球に広がる仮想音響空間の中に、最大24個の音源を「オブジェクト」として配置してリアルな音楽体験が生み出せるところに大きな違いがあります。

 

筆者が本稿を執筆している2021年5月中旬時点で、日本国内で360 RAによる音楽体験に触れられる環境を整理してみます。

 

Wi-Fi接続のワイヤレススピーカーにはソニーが発売した「SRS-RA5000」「SRS-RA3000」の2機種以外にも、アマゾンのAlexaを搭載する「Amazon Echo Studio」があります。筆者が把握する限りでは海外にもまだ360 RA対応のワイヤレススピーカーは出ていませんが、HiFiオーディオブランドの米McIntosh(マッキントッシュ)が発売しているマルチチャンネル対応のAVプリアンプ「MX123」がファームウェア更新により初の360 RA対応ハイエンドアンプとして名を連ねたようです。

↑360 Reality Audioの技術に対応した最新のワイヤレススピーカー「SRS-RA5000」(左側)、「SRS-RA3000」(右側)をレポートします

 

スマホとヘッドホンによるポータブル再生にも対応

スマホで360 RAを楽しむ場合、音楽配信サービスのモバイルアプリが360 RA対応コンテンツの再生に対応する必要があります。アプリ(=音楽配信サービス)とコンテンツが360 RA対応であれば、スマホやタブレットの場合は一般的なヘッドホン・イヤホンにつないで立体音楽体験が得られます。

 

日本国内で360 RA再生が楽しめる楽曲は洋楽・邦楽を含めて約4000曲に上ります。現在、国内では「Sony ArtistConnection」のほか「Deezer」「nugs.net」のアプリが360 RA対応であり、それぞれに専用の楽曲を配信しています。Amazon Music HDの場合は360 RAコンテンツを楽しめる環境がまだスピーカー再生に限定されているため、モバイル対応はもう少し待つ必要があります。

 

モバイル環境の360 RA体験はANC(アクティブ・ノイズ・キャンセリング)搭載ワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM4」など一部ソニーが発売するヘッドホン・イヤホンで聴くといっそうリアルな立体感が楽しめます。その理由は「Sony | Headphones Connect」アプリから、ユーザー個人の耳に適した音場を再現する「個人最適化」技術が使えるからです。

↑ソニーのWH-1000XM4など360 Reality Audio認定ヘッドホンを使うとさらにリアルな立体音楽体験が楽しめます

 

スマホでアプリを立ち上げてから、インカメラでユーザーの耳写真を撮影し、その画像情報を元にクラウド上で個人の耳の形状に最適化したプロファイルをすばやく生成します。このデータをSony ArtistConnectionをはじめとするアプリと連動させることによって、それぞれの360 RAコンテンツの再現性が高まるという仕組みです。この個人最適化が利用できる「360 RA認定ヘッドホン・イヤホン」は、これからソニー以外のメーカーにも広がっていくようです。

 

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