家電とオカルト? 接点がイメージしにくいカップリングである感は否めないかもしれない。しかし、家電王・中村 剛さんとオカルト王・三上丈晴さんがいざ顔を合わせると、二人の間に独特のケミストリーが生まれ、話が深まるにつれて熱量が増していくことが実感できた。
2002年に『TVチャンピオン』のスーパー家電通選手権で優勝したことから、家電王というニックネームが定着した中村 剛さん。2017年2月にFacebookでスタートし、現在は14万人以上のフォロワーを誇る「くらしのラボ」(東京電力エナジーパートナー株式会社主催)を監修しながら、同名のYouTubeチャンネルで200本以上の動画をアップしている。GetNavi webでも過去に数回にわたってコラボ記事に協力していただいた。
オカルト王・三上丈晴さんが編集長を務める『ムー』は、「世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリーマガジン」がキャッチフレーズの1979年創刊のオカルト情報誌だ。最近は紙媒体であることにとどまらず動画配信やSNSにもステージを広げ、関連グッズも書籍からアパレル、ファッション小物まで幅広い展開を見せながら、令和日本のポップカルチャーシーンにおけるトップランナーとして認識されている。
家電王とオカルト王。まさに異色の組み合わせだ。その接点を探るべく設けた場で、火花散るトークが繰り広げられた。
家電王はムー民だった!?
――まず、家電王に『ムー』との接点についてお聞かせください。
家電王 中学生くらいから、自然現象とか超常現象などが好きでした。『ムー』は毎月買っていたわけではありませんが、神秘的なことや宇宙人とかUFOも好きだったので、タイトルも含めて興味がありました。
去年の12月、昔『ムー』でも特集していたグレート・コンジャンクション(※1)という現象がありましたね。星の動きはシミュレーションできるので、○○年〇月にこういうことが起きるというのがわかります。グレート・コンジャンクションから連想していくと、「地の時代」から「風の時代」(※2)に変わっていく過程、「もの」から「こと」へという流れの中、今は所有物とか情報だとか、さまざまなものがあふれていると思うのです。
(※1)20年に一度、木星と土星が重なり合うこと。西洋占星術では「社会の節目」とされ、時代が大きく変化すると言われる。
(※2)西洋占星術では火・地・風・水の4つのエレメントに星を分け、およそ200年ごとにエレメントは変化すると考えられていた。2020年に220年ぶりのエレメントの移動が起き、時代は地から風へと変化した。
――そういう時代に家電王としてお仕事をなさっているわけですが、普段から心がけていらっしゃることはありますか?
家電王 日々のインプットを多くするようにしています。単に家電のスペックだけについて語るのでは、情報の価値が下がるような気がします。カタログを見れば済む話になってしまうでしょう。情報をきちんと整理してアウトプット、発信していかなければなりません。
寝ている間とか瞑想的な行いの中でデータの整理をする。こうしたことは無意識のうちに、音楽を聴きながらぼーっとしている時とか、少し瞑想に近いような状況で無意識下の脳の働きに委ねられているような気がします。取捨選択の基準を自分の無意識に任せるという言い方もできると思います。
オカルト王におたずねしたいのですが、ひとことで瞑想と言っても、ただぼーっとしているのとは違うだろうし、当然起きている状態ではないだろうし、休む時間がきわめて少ない脳をどんな状態にもっていけば、瞑想としてベターなものになるのでしょうか。
オカルト王 黙想とか、ただ黙って目をつぶってぼーっとするのが瞑想ではありません。積極的にいろいろなイメージを展開していくものなのです。「頭を空っぽにしなさい」という言い方がありますが、これは瞑想ではありません。空っぽの状態のところに水を注ぎ込むように、いろいろなイマジネーションを次から次へと、ある種雑念でもいいから湧き出させていく中で、コンセントレーションをしていくのが瞑想です。
結構大仰なことを言う人もいますが、唯一の鍵となるのは呼吸だけです。自律神経をコントロールするのは呼吸しかないので、それができれば精神状態、ひいては集中できている状態の脳波―α波にもっていくことができます。
――超能力者も瞑想を日々の生活に取り入れているという話を聞いたことがあるのですが……。
オカルト王 スプーン曲げで有名な超能力者の清田益章さんも、とある達人に指導をしてもらいつつ、本人の中で独自の瞑想法をやっています。清田さんは超能力者なので、念力を使います。非常に面白いのは、この“念”という字の組み合わせは「今の心」なんですね。ならば今とは何かというと、過去でも未来でもないものです。今というところにどれだけ意識を合わせられるか。彼にとっては、それが超常現象を引き起こすことのある種の極意だとまで言っています。意識している今という瞬間もあっという間に過去になるので、未来というものをどこまで想像できるか、意識できるかということは非常に難しいですね。それでも今という瞬間にどんどんフォーカスしていくと、これは非常に魔術的な話になるんだけれども、瞑想を通して宇宙の創造にもつながっていくことになります。
――家電王は、インプットとアウトプットのプロセッシングに瞑想的なメソッドを用いていらっしゃるようですね。ヒーリング効果についてはどうお考えでしょうか?
家電王 「今の心」という話を聞いて思ったのが、つい引きずってしまったり、後悔することがあるじゃないですか。こういうのは過去の話ですね。未来はどちらかというと希望とか心配です。そういうさまざまな気持ちが過去にも未来にもあると思うんですが、現在というのは今このその瞬間だから、何事にもとらわれづらいのでしょう。今という時間は、そういう性質のものかなという気がします。
瞑想と親和性が高い家電って?
――瞑想、ヒーリングという話の流れからヨガを連想します。ヨガには「チャクラ」という概念がありますが、どういうものかオカルト王から説明していただけますか。
オカルト王 ヨガで言うチャクラというのは肉体そのものではなくて、微細身(みさいしん)というもうひとつの体が重なって、その中の脊柱に対して7つの節ができます。これがチャクラです。
――チャクラに対して積極的に働きかける方法があるとすれば、それが瞑想ということになるのでしょうか?
オカルト王 チャクラに対して働きかける行いそのものがヨガです。尾てい骨のところにいわゆるクンダリーニ(※3)と呼ばれるものがあって、そこからエネルギーが上がっていく過程において、7つのチャクラ(※4)が順番に開いていき、最終的に頭頂にあるサハスラーラ・チャクラに達します。
(※3)ヒンドゥー教において、体内に存在するとされる生命エネルギーのこと。
(※4)第1のチャクラ「ムーラーダーラ」:脊柱の基底にあたる会陰(肛門と性器の間)。第2のチャクラ「スワーディシュターナ」:陰部。第3のチャクラ「マニプーラ」:腹部の臍のあたり。第4のチャクラ「アナーハタ」:胸。第5のチャクラ「ヴィシュッダ」喉。第6のチャクラ「アージュニャ」:眉間。第7のチャクラ「サハスラーラ」:頭頂。
――では、ここで家電王に瞑想と親和性が高そうな家電をご紹介いただきたいと思います。
家電王 メディテーション家電の『SmartSleep』を紹介します。頭に装着して脳波を追う家電です。瞑想からの流れで脳というものに着目した時、情報過多のこの世の中で、きちんと休ませていくためには良質な睡眠が必要になります。夢を見るのもそうですね。そういったことをサポートしていく家電です。
今は家電でも、BOSEがマスキング音を出す製品(※5)を売り出したりしていて、睡眠をテーマにした製品がたくさんあります。ここで言う睡眠というのはただ単に眠れればいいというのではなくて、脳をちゃんと休ませて機能させるという目的があります。そういうアプローチの家電はたくさんあります。
(※5)『BOSE SLEEPBUDS II』。 睡眠のために特別に設計された完全ワイヤレスイヤホン。快適なイヤーチップが安全にノイズをブロック。ヒーリングサウンドが朝までぐっすり眠れるようサポートする。
オカルト王 寝ている間の脳波を測定して、レム睡眠とノンレム睡眠を表示できる機械があります。これは、端的に言えばバイオフィードバックです。精神状態、脳波の状態が皮膚の電気抵抗によって変わる、つまり汗が出るということで、ある種の装置に手を置いて、気持ちを休めていくとα波が出ていることを示すランプが点灯します。α波が出ている状態を体感的にフィードバックするシステムが流行して、スポーツ選手も取り入れていました。
家電王 スポーツ選手ではなくても、日々の仕事のパフォーマンスを上げたい人は多くいますよね。そういった人にとって、日々の暮らしの中で自分をリセットすることはとても大切だと思います。リセットの大きな要因となるのは睡眠です。寝足りなかったり、睡眠の質が悪かったりすると、翌日体調が整わないままで過ごさなければなりません。そうなると負の累積が溜まっていってしまいます。
睡眠を通してしっかりリセットすると、朝起きた時に新たな知識を入れる状態が整っているでしょう。さきほど、瞑想はいろいろなものを注ぎ込んでいく過程であるという話が出ました。翌日のインプットのためにも脳の整理をしておくことが必要だと思います。要らないものは捨て、要るものをきちんと整理しておくことが大切です。
『SmartSleep』のような家電をサポートとして使って、面白いとか気分がいいという個人的な経験をするためにも役立てて行くのがいいと思います。最近は、個人の体験を後押しするようなこの種の家電が増えています。判断を司るのは脳なので、メディテーションも含め、いかに脳の性能を上げていくかということではないでしょうか。それに尽きる気がします。
オカルトと家電の親和性
――なるほど。ちなみに、お二人は脳の性能についてどうお考えですか?
オカルト王 脳波についてもう少し言うなら、たとえばプロ棋士やプロのアスリートたちがゾーンに入った状態では、α波が突出します。こうした状態は特徴的で、ここにもっていこうということになります。α波の周波数は7.8ヘルツなのですが、面白いことに、これは地球が持っている固有の振動数と同じです。
α波波が出ている時は、地球と共鳴している状態にあるといえます。面白いのは音波も同じで、たとえば7.8ヘルツの倍音で声を意識的
先ほどのヨガの話に戻りますが、ヨガでも自然と一体になるという考え方があります。本質はこのあたりにあるのかもしれません。誰しも、こうした状態を一日のうちに何回か迎えるでしょう。特に、眠っていて起きるまでの間の状態が特によいようです。完全に起きてはおらず、眠ってもいない状態です。
家電王 コンピューターは、どんなに高性能のCPUを積んでいても情報がないと動きません。脳も一緒で、これは先ほどのインプットとか整理の話になるのですが、何もないところでいきなりα波が出る良い状態になったとしても、それを活用する元ネタがないと思うんです。ですから、日頃からよい情報をよい状態のまま整理しておいて蓄積し、何か起きた時にちゃんと使えるようにしておくことが大切だと思います。これは、単に記憶力がよいという話ではありません。
オカルト王 アーティストの人が、「寝かせる」という表現をしますよね。とりあえず1週間置いたままにしてみよう、というようなニュアンスです。そのままの状態でキープしておいて、横断歩道を渡っている瞬間に何かが降りてくるみたいなことがあると思います。
特に今はパソコンやスマホでデータ管理ができるようになりました。全然関係のない人とデータを共有することもできます。そうすると、もっとこうしたほうがいいんじゃないかという思いも生まれるでしょう。メンタルヘルスの分野で言っても、大きな可能性を感じます。
――最後に家電とオカルトにについてお二人に伺いたいのですが。
家電王 オカルトとか超常現象とか、未来や電気、家電の話は、実はすごく親和性があると思うのです。違うということはないんです。過去で言えば、地球が自転しているという事実は変な話でしかありませんでした。たとえば時間にしても、その性質は変わらないと言われていたけれども、実は変わっているということがわかりました。そういうものが実際にテクノロジーに使われているわけです。
よくわからないものをひとつにまとめて「オカルト」という呼び方をしますが、実はその中には経験している人が多いこともあるのではないでしょうか。勘違いかもしれないけれども、何かが起きていることは確かなので、それが解明できた時には一気に理解が進みます。
オカルト王 テクノロジーを軸にすると、たとえば量子コンピューターもそうですが、量子論的なところが、オカルティックあるいは超常現象的な部分とつながると思いますね。ミクロの世界では、時間が凍結することもあり得ます。時間が一瞬止まるという現象があるのです。そういう現象をマクロの世界で実現できたら、超常現象が普通の現象になっていきます。それを家電とか装置として創造していく、現実化していくということです。
自宅で過ごす時間が長くなったことを実感している人は多いに違いない。ただ、そういう時間はコロナ禍の結果としてもたらされたわけであって、だからこそ、少し前まで存在しなかった種類のストレスも生まれているはずだ。これまであり続けていたストレスも、コロナ禍特有のストレスもまとめて効率よく解決していくための方法論として、日々の生活に瞑想を取り入れてみてはいかがだろうか。
家電王が紹介してくれたように、瞑想や脳内整理につながる家電もある。自分なりのやり方で、メンタルヘルスをしっかりと整えていくことも可能なのだ。全く接点がないと思われる家電とオカルトも、少し掘り下げれば親和性の高さが見えてくる。この対談の視点に立って「くらしのラボ」の動画を見ると、ひと味違った印象を受けるのではないだろうか。
なお、近日、第2弾レポートもお届け予定。そちらもご期待いただきたい。