2017年にFacebookでスタートして、現在14万人以上のフォロワーを誇り、YouTubeのチャンネルに200本以上の動画をUPしている「くらしのラボ」。1979年の創刊以来多くの読者を魅了し続け、最近は紙媒体としてだけではなくSNSや各種コラボ商品でプレゼンスを高めているオカルト月刊誌『ムー』。
前回の記事では、家電とオカルトという一見意外な組み合わせの接点を探り、それを具体的な形で浮かび上がらせることができた。今回は、前回の内容を踏まえ、さらに大きなスケールで家電王・オカルト王の話が深まっていった。
【前回の記事】
オカルトと家電はつながっていた!?『月刊ムー』編集長と家電王の異色対談がトンデモなかった!
キーワードは「パーソナライゼーション」
――家電王に伺います。前回の対談の内容を踏まえ、2022年以降話題になりそうな家電について教えてください。
家電王 コロナ禍において、家の中の暮らしを豊かにしていこうという方向性の製品が否定されることがなくなりました。今売れているのは、時短とか時産の家電ではありません。ある程度時間がかかってもおいしいものが確実にできる、たとえば焼けるまで2時間かかるけど必ずおいしい焼き芋ができる機械とか、そういうものなんです。
――自宅で過ごす時間を充実させるということですね?
家電王 これからの時代はそちらの方向に進んで行くと思います。コロナ前の状態に戻ることはないように感じられます。ただ、自宅で過ごす時間をすべて家族団らんに充てるのかといえば、そうでもなさそうです。
在宅勤務が主流となった時、家にはいるけれども家族それぞれの仕事の時間はバラバラだったりします。ご飯を食べる時間も違うでしょう。いろいろな意味でパーソナライズしているんです。ですから、ファミリーだろうが単身だろうが、個人が使いやすい家電が流行ると思います。かつて家庭という場所は家族のかたまりで、一家団らんで過ごすのがベストな結末という考え方が主流でした。こうした中、あえて家族を一人ひとり個として分けるという考え方を提案できない空気がありました。でも、この1年半くらいを過ごしてきて、「そういうのもいいよね」「かえってストレスにならないよね」と感じる人が多くなったと思っています。
――パーソナライズ化を象徴するような、具体的な家電は何になるでしょう。
家電王 たとえばテレビです。かつてはリビングに大きなテレビがあって、そこにみんなが集まって見るのが普通でした。でも今はもうスマホでも見られるし、YouTubeとか従来にはなかったコンテンツも見られます。これからの時代は、家電というジャンルですごくいいものがひとつできるというより、使い方やソフトウェアの提供を含めて、パーソナライズという方向性がどんどん強くなっていくのではないでしょうか。個であるとか、パーソナライゼーションというのが今後10年のキーワードになると思います。こうした傾向は、もう元には戻らないでしょう。
――その流れでいくと、10年後になくなっている家電は何だと思いますか?
家電王 リビングに置いてある大きなテレビはなくなると思います。ただ、テレビ番組を見たいという時は必ずあるから、その瞬間に欲しいもの、たとえばプロジェクターとかがあればいいということになるでしょう。
日常的に見るものに関してはタブレットとかスマホ、あるいはPCでよくて、しかもみんなで見るというよりも自分だけが見られればよいというニュアンスの使われ方になると思います。また、画面を覗き込むというよりも、プロジェクションかもしれないし、ゴーグルかもしれないけれども、いろいろな手段でよりリアリティを感じるような見せ方になっていくと思いますね。ただ単純にリビングに置いてあるだけのテレビのような家電は、おそらくなくなっていくという感じがします。
――見せ方について、もう少し説明していただけますか?
家電王 前回の対談で触れた脳の話にもつながるのですが、結局脳が見ているものが、媒体がVRであれ何であれ、同じように電気信号で見られるようになるのであれば、リアルとバーチャルの境目がなくなってくるでしょう。
今、非接触という要素が強調されています。ウェブ会議などは物理的に離れているから違和感が生まれますが、離れていてもホログラムとかで相手が目の前にいる感覚を生み出すことができれば、否定的な要素はなくなると思います。私は『スタートレック』(※1)が好きなのですが、『スタートレック:ヴォイジャー』というシリーズに人格を持ったホログラムが登場します。ホログラムと結婚することもできるんです。そのあたりの境目が本当になくなってしまうのかもしれないという感じは実際にありますね。
技術は、望めば上がります。基本部分にあるものは、コストや世の中の方向性です。今挙げられる要素は、接触を避けることです。今後のリスクヘッジのためにも「こういうことができればいいね」という話になれば具体的に進められていくでしょう。
(※1)ジーン・ロッデンベリーの制作したSFテレビドラマシリーズ。1966年の放映開始以来、7本のテレビドラマ、2本のテレビアニメ、13本の劇場版が制作されており、『スタートレック:ヴォイジャー』は1995~2001年に放映された4番目のテレビシリーズ。
――今後10年で、人々の暮らしはどうなっていくでしょうか?
家電王 これは、正直言って人によると思います。ただ、家の中はもっとシンプルになるでしょう。今はごちゃごちゃしていて、先ほどのテレビの話に戻ってしまいますが、見ない時でも置いてありますね。そこにあること自体が、ある意味邪魔な存在という言い方もできるかもしれません。今はまだ、テレビの存在そのものはなくせないわけです。
ただ、未来になると必要なものが必要な時に現れるというような状況になると思うのです。壁面に埋まっているのかもしれません。たとえばIoT家電と呼ばれるものがありますが、IoT家電と呼んでいる間は普及していないのだと思います。普通にあるというような状態にならないと、普及とは呼べないと思います。
目的はトースターという家電を持つことではなく、パンがおいしく焼けることであるわけです。普段の置き場所に困るくらいだったら、モノとしての存在感をどんどんなくしていくべきだと思います。
――リモートという概念は、仕事だけではなく、教育のあり方とも深く関わるようになってきました。今後はどうなると思いますか?
家電王 Wi-Fi環境含めてまだまだ整備が必要なところはあると思います。ただ、そこさえ解決できれば他のさまざまなコストを削減することができるようになります。学びたい人は学べるし、自分が学びたいことを確実に実現できる。そういう方向に行くと思います。
これまでの教育は生徒たちを画一的に学校に集め、社会性を学ぶこととセットで行われてきました。いいか悪いかは別として、社会性を学ぶことと勉強する時間は完全に分けられる形になるでしょう。それに、昔よりも不登校だとかいじめなどが目立つようになっています。こうした状況の中でも、学校に行かない人たちというのはマイノリティでした。ただ、コロナ禍で学校に行かないことがメジャーに、当たり前になりました。
だから、学校に行かないことを引け目に感じることはまったくありません。学校に行きたくないなら、家にいながら勉強できる環境が確立できて、選択できるようになっていけばよいと思います。
オカルト王はディストピアしか見えない
――欲しい時に欲しいものが出てきたり、学校に行かなくても勉強ができたりする環境が普通になるためには、前提としてAIの進化が大きく関係すると思うのですが、AIについてオカルト王はどうお考えですか?
オカルト王 今の時代、ネットをはじめあらゆるところにAIが関わっていますね。今はまだ普通のコンピューターでのAIだけれども、量子コンピューターのAIとなったら、ブロックチェーンだって1~2秒で突破できるようになるでしょう。この先どうなるんだっていう感じです。いずれは訪れるだろうそういう状態を通して未来を想像すると、ディストピアしか見えないような気がしますね。人類の知恵とか、そういうものをどう生かしていくのか……。人類が滅びるというイメージしか浮かんでこないんです。
家電王 今のAIは統計値を通してしか事象を見ていなくて、自ら考える力があるというわけではないでしょう。与えられたデータに対しての価値しか見出しません。とはいえ、そもそも与えられるデータに悪意が持たされていれば悪い動きもするだろうから、そういうところをきちんと管理すべきだと思います。ただ、コンピューターが勝手に知能を持つかといえばそういうものではありません。
オカルト王 ただ、AI同士が人間にわからないゲームを勝手にプログラミングして、それを通して会話しているという話がありますよね。これは、可能性としてはいくらでもあるような気がしています。
結局、AIというのは人間管理の方法だと思うんです。実際、中国はそうですよね。何から何まで管理されています。だから、怖いというか……。明るい未来が全然イメージできないんですよ。いよいよ人類滅亡かと……。
それに、遺伝子編集という名のもとに合成生物の生成も現実化しています。この世に存在しない生物を作ることもできるんです。それをAIが行ったとしたら……。倫理的な問題から実験はやっていないということになっていますが、実際はわかりません。
AIと人間の関係性
――シンギュラリティ(※2)という言葉が盛んに言われていた時期があります。AIが人間を凌駕するかもしれない転換点について、それぞれのご意見をお伺いしたいと思います。まずはオカルト王からお願いします。
(※2)英語で「特異点」の意味。AIが人類の知能を超える転換点(技術的特異点)、または、それにより人間の生活に大きな変化が起こるという概念のこと。人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイルは2045年には人間の脳とAIの能力が逆転するシンギュラリティに到達すると提唱している。
オカルト王 エポックが来るのはおそらく、2030年でしょう。遅くとも2032年ではないでしょうか。この10年で世界が変わると思いますね。たぶん人類滅亡。人類は本当の意味での選択を迫られる。もう後戻りできないところに来ているんじゃないでしょうか。
本当の意味でこの問題に立ち向かって答えを出すとしたら、今こそ、哲学的な命題に対するきっちりとした答えを出さなければなりません。それは、人間とは何かということです。これに答えを出すことができれば、滅亡からは逃れられると思うのです。
AIが完璧な答えを出すという作業をプログラミングしていく時、どんなに優秀なAIであっても、完璧な答えを出すことができない最後の最後の問いがあります。その問いを突き付けられたら、バグが起きると思います。
一つの鍵になるのが、名前です。名前を付けないとデータの保存も
――家電王はどうのようにお考えですか?
家電王 家電について言えば、コンピューターというのはあくまでも人間の生活を便利にするというフォロワー的な位置づけです。この関係性が保たれている限り、人間にとってはよい条件ということになります。ただ、オカルト王がおっしゃるように、コンピューターがアンコントローラブルな状態になると何かが起きるかもしれません。そこは、正直言ってわかりません。
時代の意識としては、家電というよりも暮らし方を選ぶという方向に行っていると思います。どう暮らしたいか、あるいはどう暮らすべきかということです。これは先ほどのオカルト王の「人間とは何か」という話にもつながっていく要素でしょう。
人間がエゴを押し出すだけではだめですね。これまでの時代は、暮らしが豊かになっていく中で生まれる問題は、国際ルールを定めて解決しなければなりませんでした。これから先は、こうした問題を普段の暮らしというレベルで吸収できるようにしていかなければならないと思うのです。
そういうライフスタイルを実現していかないと、それこそ人類は破滅するしかありません。自分たちが暮らす環境を守るために考えていかなければならないこともあるでしょう。たとえば熱中症で命を落とさないためには、エアコンも電力も必要です。今実現できていることを継続していける地球環境、暮らしの環境を作っていかなければならないわけで、そのために必要なツールとして家電があると思うのです。
家電王とオカルト王、それぞれの立場からお話しいただいた今回の対談企画。家電王が言うように、これからは生き方・暮らし方を今まで以上に反映する形でを選んでいく時代が来るのだろう。そしてオカルト王が言うように、AIを含めたコンピューターと人間の関係性・向き合い方がこれまで以上に問われる時代が近づきつつあるのだろう。
大きなうねりが起こっている時代であることはまちがいない。それがもたらすものはユートピアなのか、ディストピアなのか。今は誰にも分らない。ただ、それぞれのジャンルを代表するお二人による今回の対談で、何らかのヒントが示されたことを心から願っている。