Vol.105-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは6年ぶりに刷新するOS、Windows 11。長年続いたWindows 10から名称を変更した理由は何なのか?
OSの変更は必要だがどこかで線引きは必要
マイクロソフトが新OS(オペレーティング・システム)となる「Windowsイレブン」を発表した。突然の発表に驚いた読者も多いはずだ。すでに評価版であるInsider Previewの公開は始まっているが、不具合も想定されるので、まだ使用はオススメしない。一般向けの公開は今秋から年末にかけてとなる予定だ。
Windows 10が登場してからすでに6年が経過した。その間、名前が変わらなかったこともあり、「Windows 10は最後のWindowsとなる」と言われることもあった。だが、実際これは正しくなかった。マイクロソフトが最後にしたのは
「OSのアップデートパッケージを有料で販売すること」であり、名前を変えないという話でも、OSの中身を大幅に変えることをしない、ということでもなか
ったのだ。
OSのデザイン変更や機能変更は必要なもので、定期的に行われている。それを続けるにも、ハードウエアの動作条件・サポート条件を明確にしていく必要はあり、どこかで線引きは必要になってくる。これ以上同じ名称のOSで、告知することなく動作環境の線引きやサポート期限の変更を行っていくと利用者にとってもわかりにくくなる。だから、これを機会に「名前を変えた」というのが実情であるようだ。アップルも2020年には、Mac向けのOSで19年間使い続けてきた「バージョン10(MacOS X)」の名前を捨て、バージョン「11」にした。今年は「12」となっている。Windowsが11になるのも同じようなものである。
新OS開発の頓挫を経てWindows 11が登場
Windows 10が登場したころとは、マイクロソフト経営陣の陣容も変わっている。Surfaceをはじめとしたハードウエア製品を統括してきたパノス・パネイ氏は、現在同社のチーフ・プロダクト・オフィサーとして、Windowsも含めて会社全体を見る立場になっている。筆者はWindows 11に「彼の方針が色濃く出たOS」という第一印象を受けた。
同社はタッチや2画面などのハードウエアへの普及を狙い、「Windows 10X」と呼ばれるOSの開発を進めていた。だが、この計画は二転三転して結局キャンセルされ、その名前のOSは世に出ることはなかった。そこで開発が進んでいたユーザーインターフェースはWindows 10のアップデートへとフィードバックされ、さらにいくつか新しい機能を加えてWindows 11となって世に出ることになったというわけ。
そのためか、動作ハードの条件こそ厳しくなったものの、Windows 10が問題なく動作する環境なら、意外なほどトラブルなく動作する。そのせいか「名前は10のままでも良かったのでは」と言う声も聞かれるが、マイクロソフトの狙いを考えると、そうもいかないだろう。
では、具体的にどう変わるのだろうか? 性能が十分と思えるPCでも「Windows 11は動作対象外」となるものが出てきている。その条件はどこにあるのだろうか? そして、なぜ動作条件は変更されたのだろうか? その点は次回で解説していきたい。
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