角上魚類というお店をご存知でしょうか? 関東圏および新潟県で22店舗を展開する鮮魚店チェーンで、各店舗がある地域ではよく知られたカリスマ鮮魚店であり、祝祭日や盆暮れ正月などには、近隣で入店待ちの自動車が列をなすほどの絶大な人気を誇ります。
人気の秘密は鮮度の良い魚と、価格の安さ。スーパーマーケットとは比べものにならないほどのクオリティとコストパフォーマンスが、これだけの支持を得ている大きな理由です。角上魚類では「魚類」にまつわる様々な商品(寿司、惣菜、水産加工商品)などを数多く取り揃えていますが、やはりその主役は「鮮魚」です。
「鮮魚」の対面販売コーナーには丸もの(おろしていない状態の1本の魚)の新鮮な魚がズラリと並び、顧客が希望とあれば無料で好みのやり方(皮引き・刺身用、2枚おろし、3枚おろし、エラ・ワタ取り)に身おろししてくれます。
スーパーマーケットによっては「身おろし○○○円」と、手数料を取るところもありますが、角上魚類ではたとえ数十円の魚であっても全部タダ。しかも、その場では必ずこう聞かれます。
「アラは持ち帰りますか?」
特に皮引き・刺身用に魚をおろしてもらう場合、頭や骨などのアラが出てくるわけですが、このアラも無料を持ち帰ることができます。魚種にもよりますが、このアラも調理次第では十分立派なおかずになるわけで、例えば刺身の場合なら、刺身にさらにもう数品の料理を楽しめるという寸法です。
しかし、この魚のアラ。どんな風に調理したら良いかわからない……そんな不安を抱く人も多そうです。そこで今回は角上魚類小平店の川崎真論店長にアラの扱い方、オススメの調理法などを【レクチャー編】としてガッツリお聞きしてきました!
マグロの血合いが、たった一手間で「肉」のようなステーキに!?
ーー角上魚類の身おろしのうち、皮引き・刺身用では、必ず「アラは持ち帰りますか?」と尋ねられます。その後、どう調理すれば良いかがわかりません。アラの調理法を教えてください。
川崎真論店長(以下、川崎) 「魚のアラ」と言っても、魚種によって調理の向き・不向きがありますので、一口では言えないのですが、例えば鯛などの「白身魚」のアラは味噌汁、潮汁、スープにむいていますし、綺麗に下処理をすれば炊き込みご飯なんかもできます。また私個人的にはこの出汁を冷やして、めんつゆを割っていただくのも好きですね。
さらにブリやカンパチなどの「赤身魚」のアラは汁ものだけでなく、大根などと一緒に煮付けにしたりすると美味しいですね。さらに今の時期よく入ってくる太刀魚なんかも、骨を揚げれば、骨せんべいにすることもできます。あまり使い勝手がなさそうに思えるイワシやアジなどの「青魚」のアラも、一手間加えれば炙って食べることもできて、これもビールのおつまみなんかにピッタリです。また、一方マグロの血合いなどは、きちんと下処理をしてステーキのようにして焼けば、お肉みたいに美味しく食べることができますよ。
ーーマグロの血合いはなんだか臭そうですし、血っぽい味がしそうな印象です。
川崎 そう思うでしょう。ところがきちんと下処理をすれば、全く臭くないし、むしろステーキのように美味しくできます。これはぜひお試しいただきたいですね。
角上魚類・川崎店長直伝の魚種別アラの下処理術
ーーいずれも「下処理」が大事なんですね。どのように下処理をすると良いでしょうか。
川崎 色々なやり方がありますけど、私は以下のやり方がオススメです。
◎「白身魚」「赤身魚」「青魚」のアラの場合
①アラを綺麗に血を流した後、振り塩をする
②そのままでも良いが、暑い時期は虫が寄ってきたりするので、そのまま冷蔵庫に入れておく
③1時間ほど冷やしておけば、魚の水分と臭みを飛ばすことができる
◎マグロの血合いの場合
①水で血合いを綺麗にもみ洗いする
②①を複数回行い、完全に血が消えたところで、ステーキ、竜田揚げなどの調理に合わせたサイズに切り分ける
③それぞれ振り塩をする。
④ステーキの場合は、焼肉のタレ・しょうがスライスと一緒に漬け込んでおく。竜田揚げの場合は、醤油・みりん・酒などと一緒に漬け込んでおく
ーー「白身魚」「赤魚」「青魚」は想像通りですが、マグロの血合いも本当に臭みが取れるのですね!
川崎 はい、取れます(笑)。ぜひやってみてください。
また、いずれのアラや血合いも本格的な調理を行う前に、湯引きしたり、焼いたりするのも良いと思います。特に「白身魚」を汁物にする場合、焼いた際に出てしまう焦げも、適度であればそれがまた出汁の旨味にもなりますよ。
手間はかかるが、誰でも簡単に美味しくいただける
ーー確かに手間はかかりますが、これだけで十分なおかずや汁ものが作れる上、原価は0円とか、頭とか血合いを仮に買った場合でもたった数百円です。やったほうが良いですよね。
川崎 はい、ぜひやってください。我々が無料で身おろしを実施しているのは、お客さまの調理の手間を省く意味が大半ですけど、個人的には「魚をよく知っていただきたい」という思いもあります。
角上魚類では新潟・豊洲双方から仕入れた鮮魚を売っていますが、特に新潟仕入れの魚には、関東のお客さまも初めて見るような魚があるんですよ。こういった美味しい魚と、その食べ方を知っていただきたいですし、さらにその魚のアラなども無駄なく食べていただきたいです。
ですから私なんかが接客させていただく際、お客さまから「俺、アラ要らないよ」って言われても「いや、アラもこんな食べ方ができますよ?」「是非お持ちになりませんか?」とお伝えすることも多いです(笑)。アラの調理は、手間は確かにかかりますが、かと言って、取り立てて料理が好きな人でないとできないものではありません。ご興味があればどなたでもできるかと思いますので、ぜひお試しいただきたいですね。
川崎店長の魚のアラに対するレクチャー、しっかりと頭に入れました。次回は【実践編】として、川崎店長から教わった下処理後のアラ、血合い類を実際に調理! 編集ライター、カメラマンなどのスタッフで試食しながらご紹介します。お楽しみに!