グランジ/オルタナ界を代表するロックバンド「ダイナソーJr.」が、8月20日深夜に行われたイベント「HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER」にヘッドライナーとして出演するために来日。バンドリーダーでギター/ヴォーカル担当のJ・マスシスさんに、様々な音楽誌に寄稿しているライター・油納将志さんがインタビューを行いました。趣味のゴルフや、作曲方法、最近買ったお気に入りのモノなど、ここでしか読めない貴重なエピソードを音楽誌ばりのディープさでお届けします。
──最近はゴルフをしてますか?
最近はドライヴィング・レンジ(打ちっ放し)ばかりだね。今年は一度もコースに出てない。10月に入ったら、行けるかな。
──ツアーなどで忙しいですもんね。ちなみにベスト・スコアは?
72。ハーフは35。
──すごい! セミプロ並みですね。
1回だけだけどね。いまは時間がないから年に一回くらいしかコースに出られないから、ベスト・スコアを出すのは難しいかな。
──ゴルフはあなたにとって仕事のリフレッシュのためのスポーツなのか、それとも純粋に楽しみながらやっているのかどちらですか?
いまは友だちと回って楽しみながらプレーする感じかな。子どもが意外とゴルフに興味を持っているので、一緒に打ちっ放しに行ったりしているよ。
──ミュージシャンと一緒にゴルフをしたりするんですか?
こないだロイド・コール(イギリスのシンガー/ソングライター)から一緒に回ろうって誘われたよ。住んでるところが近いんだ。まだできてないけどね。ぼくよりうまいんじゃないかな、彼は。ぼくは5歳の時からやっているけど。
──ずいぶん早くからやっているんですね!
でも、9歳になったらやめてしまった。また、25歳くらいから始めたんだけど。9歳の時にトロフィーをもらったんで、もうゴルフを極めたと思ってやめちゃったんだ。母も祖母もゴルフをやる家庭だったんだけど、弟や妹はやらなかった。ぼくひとりゴルフをしていたんだ。
──ゴルフの話が盛り上がってしまいましたが、先日(HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER)のライヴはいかがでしたか?
楽しかった。オーディエンスもすごくよかった。
──最初に日本でライヴをしてから、もうずいぶんと年月が経ったと思いますが、日本の観客に変化はありますか?
昔は本当に静かで、拍手も最後にするだけだった。セキュリティが会場のそこかしこにいて、監視されているような中でのライヴだったと思う。いまはみんな生き生きとしているね。他の国のどこよりも変わったと思うよ。ミュージシャンにとっては、良い変化だね。
──今回は4年ぶりのニュー・アルバム「ギヴ・ア・グリンプス・オヴ・ホワット・ヤー・ノット」を携えての来日となりました。その新作はおしなべて高い評価を得ていますが、あなた自身、そうした評価に左右されたりするんでしょうか?
あえてレビューなんかを読まないようにしているんだ。でも、みんなからどう思われているかは、嫌でも自然とわかってくる。だから、気にするというよりは、仕方なく耳に入ってくるという感じかな。あまり気にしないようにはしているけれど。
──新作はこれまで書き溜めた曲で構成されているのか、それとも一気に書き上げたのか、どちらでしょう?
アルバムを作ると決めてから、一気に書いたんだ。レコーディングを始めてから、書いた曲もあるよ。
──14年には全編アコースティック・サウンドで構成されたソロ・アルバム「タイド・トゥ・ア・スター」もリリースしていますが、ダイナソーJr.とソロの曲は線引きしているんですか?
分けて曲を書いている。だけど、書いても合わないと思えば、後に取っておくこともあるよ。バンドはルー(・バーロウ)とマーフと自分の3人でやるというのが前提だから、その編成でできるというのが、採用するかどうかの決め手になるんだ。自分にはそのあたりのバランスがわかるんだ、長いことやっているからね。
──そのソングライティングですが、この数年で変化があったりしたんでしょうか?
ソングライティングは一緒。変わりはない。でも、2005年に再結成してからはすべて自分のスタジオで制作していることが変化と言えば、変化かな。それ以前は何も考えずにレコーディング・スタジオで制作していたんだけど、ある時、ニューヨークのスタジオで窓の外をぼーっと眺めていたんだ。大した風景じゃない。どこにでもあるような風景だよ。その窓を見続けているだけで、毎分何百ドルとか消えていくことに気付いたら、バカバカしくなってね。それからもう自分のスタジオ以外ではできなくなったんだ。
──曲はどんな風に作っていくんですか?
ギターを手にしてかき鳴らしながらかな。たいていはテレビを観ながら。長く続いているドラマが好きなんだ。8シーズンくらい続いているようなね。
──「24」とか?
「24」を観て曲ができたかはおぼえてないけれど、ドイツにいたときに時差ボケで眠れなかったんで「24」を一気に観たら、頭がスッキリして眠ることができたよ。
──9曲目の「Knocked Around」がこのアルバムでとても気に入った曲です。静かに歌いかけるところから、一気にたたみかけるように激しいパートへと向かっていくところがたまりません。この曲は複数の曲が組み合わさってできたのでしょうか?
そういうふうに聴こえるかもしれないけれど、1曲で成立している曲だよ。ドラムが突然入ってくるパートがあるから、そうイメージしたかもしれないね。もし、そのパートを取り除いて、アコースティック・ギターで弾いてみたら、同じ曲だとわかるはずだよ。
──前作に続いてルーの曲が2曲入っています。あなたとは声の質が違う彼のヴォーカルが入ることで、アルバムの曲順にはけっこう気を使ったりするのではないですか?
アルバムの最後に彼の曲が入るというイメージがあるんだ。2曲って決めたわけじゃないけど、そうなっているね。自分はドラム・パートも書くんだけど、ルーは書かないんだ。でも、マーフは自分でドラム・パートを書けないから、例えば前作のデモを作る際はほかのドラマーに叩いてもらって、マーフがそれを覚えて叩くというふうにした。人間だから完璧にコピーすることはできない。だから、ちょっと違うものになるんだ。
──では、最後に最近買ったお気に入りのモノを教えてください。
Pro Tools(作曲、録音などに利用するPCソフト)のコンバーターかな。ブラック・ライオン・オーディオのもので、いままで使っていたコンポーネントをアップデートしてくれたんだ。それを買ったことで、今回のアルバムは以前よりも良くなったと感じているよ。
Dinosaur Jr.
米マサチューセッツ州出身、J・マスキス(G,Vo・写真中央)、ルー・バーロウ(B・写真左)、マーフ(Dr・写真右)の3人組バンド。85年にデビュー。89年「バグ」発表後 ルーが脱退。91年の「グリーン・マインド」が世界的に大ヒットしニルヴァーナ等とともにシーンを牽引。その後マーフが脱退。バンド解散の97年までに通算 7枚のアルバムを発表。07年に再結成アルバム「ビヨンド」を発表、09年には9作目「ファーム」を発表し話題となる。12年には通算10作目となるニュー・アルバムをリリースし、Hostess Club Weekenderにヘッドライナーとして出演。来日時には同じくHCWに出演したサーストン・ムーアと共に単独公演も開催し、グランジ/オルタナ界を代表する2組の共演はここ日本のファンを熱狂の渦に巻き込んだことも記憶に新しい。2016年8月には約4年ぶりとなる新作「ギヴ・ア・グリンプス・オヴ・ホワット・ヤー・ノット」をリリース、HOSTESS CLUB ALL-NIGHTERにヘッドライナーとして出演を果たした。
公式サイト http://hostess.co.jp/dinosaurjr/
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レーベル:Jagjaguwar / Hostess
HSE-6192 / 2490円+税
※ボーナストラック2曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付