ファーウェイの「HUAWEI MateBook X Pro 」は、アスペクト比3:2の13.9インチディスプレイを搭載した、ハイエンドノートPCです。薄型・軽量の持ち運びやすいボディに、ビジネス用途の端末に必要とされる要素をギュギュッと凝縮したこの一台を、在宅から出先での作業も多く幅広いシチュエーションで仕事をしている筆者が1週間ガッツリ使用してみました。
その前に、HUAWEI MateBook X Proの基本スペックについてご紹介します。
HUAWEI MateBook X Proは2020年に発売された従来モデルから、搭載CPUを刷新。最新の第11世代インテル Core i7-1165G7 プロセッサーを搭載しています。16GBメモリ、1TB SSDという取り回しのいいストレージ容量で多くのデータを持ち運ぶビジネススタイルとの親和性が高いのも特徴。また、解像度3000×2000ドットの13.9型ディスプレイにより、より多くの情報を表示するだけでなく、動画鑑賞などのエンタメ用途でも活躍する一台です。
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今回は、HUAWEI MateBook X Proの性能を「ビジネスシーン」での使い勝手を踏まえてチェックしました。まず、ビジネスノートパソコンに求められる必須の要素として、第一に挙げられるのが軽量性・携帯性です。どのような職種でも、パソコンを持って移動することは多いですし、オフィスでは、使用できるスペースも限られています。大きなPCでデスク上を占有してしまうと、他の作業が不便になりかねません。
また、快適な操作性も重要。ビジネス用途である以上、連日長時間連続して操作をすることになりますし、操作がしづらい端末を使っていたら、当然ストレスが溜まります。加えて、入出力端子をはじめとした、外部端末との連携も必要でしょう。現代では、PC1台でビジネスが完結することはありませんし、そこでのやり取りに支障があっては仕事の効率に直結します。今回は、小ささ、操作のしやすさ、外部との連携という点を意識しながら、本品をレビューしていきます。
縦横比が3:2の画面が、縦スクロールを減らし、作業の効率を上げる
このノートパソコンの特徴として、筆者がまず挙げたいのは、本品が搭載する13.9インチディスプレイのアスペクト比(縦横比)です。ノートパソコンのディスプレイやモニターでは16:9のアスペクト比が採用されるのが主流ですが、本品では、それよりやや縦に広い3:2を採用しています。これが、オフィス用途には嬉しい効力をもたらしてくれます。
筆者は、ライターという職業柄、WordやGoogleドキュメント、あるいはWordpredssなどの原稿入力画面とにらめっこしていることが多くあり、これらの画面はもちろんすべて縦スクロール。文章を推敲するときをはじめ、縦方向に画面をスクロールする機会が増えるため、マルチモニタ環境では、画面を縦に設置しているほど、「縦」にこだわった作業環境を作っています。
でも、いつも同じ作業スペースで仕事をしていると煮詰まってしまうもの。たまにはお気に入りのカフェなどに出向いて、外で仕事をしたくなることも少なくありません。そういったときは、いつものマルチモニタ環境から抜け出すのですが、このMateBook X Pro 2021であれば、縦スクロールのストレスがほかの端末に比べて軽減されるというわけです。
3:2のディスプレイを使うのは初めてでしたが、これは確かに使いやすいと感じました。普段使いしているPCのディスプレイが、このアスペクト比に変わらないかなあ、と思わされるくらいには。
今回は、テキスト入力画面を例に出しましたが、現代のウェブページは縦長で構成されていることがほとんどです。アスペクト比が3:2のノートパソコンを使ったことのない方は多いかと思いますが、本製品を使ってみたら、この小さな違いは大いに歓迎されることでしょう。
このディスプレイ、視野角も178度ととても広く、死角なし。LTPSディスプレイなので、コントラストが強く、その描き出す映像は鮮やかです。しかも、タッチパネルになっていて、複数の指での操作が可能。目の疲労を軽減する、ブルーライトカットモードも搭載しています。まさに至れり尽くせり、抜群の操作性で、オフィスユースのノートパソコンのディスプレイとしては、100点満点と言って過言ではない出来栄えといえます。
大きな画面と両立した、薄さ・軽さ。持ち運びもラクラク
さて、画面が縦に大きくなったということは、本体のサイズが大きくなったり、重くなったりしているのでは? と思われるかもしれません。が、MateBook X Pro 2021には、そんな心配はご無用。本品の厚さは14.6mm、重量は1.33kgと、とにかく薄く、軽いです。
平置きしたサイズはA4のクリアファイルとほぼ同じかやや小さいくらい。13.9インチのディスプレイを搭載しながら、筆者が普段使っている13インチのノートパソコンと変わりないサイズです。このサイズを可能にしているのが、極薄のベゼル。ボディの画面占有率は約91%にもなるこの画面を眺めていると、スタイリッシュさすら感じます。
筆者は本品をリュックやトートバッグに入れて持ち運んでみましたが、重さや大きさが気になることはなく、ハイエンドCPUを搭載した本品のスペック比で考えれば、「PCを入れているのにこんなに軽いのか」と思わされるほどでした。
この性能が高く、使い勝手の良いアスペクト比を持ったディスプレイが持ち運びやすいという点で、本製品の価値の多くが説明できるとも言えます。ご説明した通り、ビジネスシーンでの効率化はもちろんですが、ちょっとしたウェブブラウジングでも手に入る情報量の多さが変わってくるため、このディスプレイがどこでも堪能できるということには大きなメリットがあると断言できるでしょう。
カメラはキーボードに内蔵。オンライン会議でも活躍
ところで、本製品のカメラはなんとキーボード面に搭載されています。ファンクションキーが並ぶ、キーボードの最上段中央にあるボタンを押すと、ひょっこりと小型カメラが出てくる仕組みです。キーボード上ににカメラがあると、オンライン会議中にタイピングをしたら指が映り込んでしまうのではと思いましたが、筆者が使った限りでは気にするほどのものではありませんでした。カメラがキーボードに内蔵されているパソコンは珍しいですが、これも本製品の小型化に寄与しています。
また、本品は最大5メートル先の音を拾いつつノイズを排除するマイク、小型ながら十分な音質を備えたクアッドスピーカーを装備。昨今多くなったオンライン会議でも十分に活躍してくれます。
USB-Cに加え、USB-A端子も装備! 外部端末が使いやすい
モバイルPCと言われるとこれまた気にかかるのが出力端子の数。それについても、本品はUSB-C2つ、ステレオミニプラグに加えて、小型の機種ではしばしば省かれがちなUSB-Aもしっかり搭載しているのが大きな評価ポイントです。
近年ではUSB-Cがかなり普及してきましたが、それでもUSB-Aを使うケースは少なくありません。実際、筆者が普段使っているPCにはUSB-Aの端子がなく、マウスのレシーバーをつけるためだけにハブを装着して利用していますし、USB-A端子がひとつあるだけで喜ぶユーザーは多いでしょう。カードリーダーや外付けドライブなど、USB-A端子のデバイスにビジネスシーンで思いがけず出会うケースは想定されますし、これがあるだけで安心感が違います。
また、電源ボタンで指紋認証ができるので、セキュリティ面も安心です。顔認証・虹彩認証のモデルも増えていますが、やはり咄嗟の安全性で言うと起動時点でセキュリティが設けられていることが最も安心であることは、間違いないでしょう。
高性能CPUを採用し、メモリは16GB。プライベートにも活用できる
ここまで書いてきた、画面の機能性や小型・軽量といったポイントから、MateBook X Proは、ビジネス用途におけるモバイルPCとして、かなり高いポテンシャルを秘めています。ですが、本製品は性能面も優秀です。
パソコンの心臓ともいえるCPUには、第11世代インテル Core i7-1165G7プロセッサーを採用。ゲーミングPCにも採用される、ハイスペックなCPUです。メモリは16GBを搭載していますし、Adobe Photoshopなどのクリエイティブ系ソフトも十分動作します。
グラフィックボードは搭載せず、CPUに内蔵GPUとして組み込まれたIris X グラフィックスがその役割を果たすことになりますが、こちらも十分高性能。マルチモニタ程度の負荷であれば快適に動作しますし、多少の動画編集であれば十分なスペックです。パソコンは高い買い物ですから、仕事だけでなくプライベートにも利用したいという方も少なくないはず。ビジネス以上のスペックを要求される用途にも耐えうる性能を持っていることは特筆に値します。
高性能パソコンの宿命ともいえる排熱ですが、もちろん熱は出るものの、例えば膝の上で作業をしていても「熱いなあ」と感じるほどではありませんでした。ただし、バッテリーを充電しながら使用した場合、より多くの熱が出たように感じました。しかしそれでも作業に支障が出るほどではありません。電車内で膝の上に乗せて作業をしていたら熱い! なんていうのは困りますし、ビジネスユースのPCである以上、どこでも使える利便性は大切でしょう。
操作性もバッチリ! 30分の充電で4時間動くバッテリー(※)で充電を忘れても安心
キーボードの配列や打鍵感、そしてタッチパッドもかなり好印象でした。まずキーの配列は、”徹底的なクセのなさが特徴”という印象です。ノートパソコンは基本的に外付けキーボードを使わずに使用することになりますから、その配列が自分の肌に合うかは非常に重要。同じ日本語配列であってもメーカーによって微妙な違いがあり、特定のキーの場所が違うところにあって戸惑うこともあります。もし不満を持っても、あとになってキーボードだけ買い直すなんてことはできません。
ですが本製品のキー配列は至って標準的な構成のため「この配列だと使いにくい!」という人は多くはないはず。キーボードにはうるさい筆者も、とても快適に使用できました。標準的でないところがあるとすれば、F6キーとF7キーの間に、カメラが仕込まれていることくらい。とはいえ、ファンクションキーを押す機会はそれほど多くありませんから、キーボードの配列において、このカメラが気になる人はまずいないでしょう。
本製品は、液晶ディスプレイより消費電力の少ないLTPS液晶ディスプレイを採用するなどして、”本来の”省エネも実現できており、バッテリーはオフィスワークなら約11時間持続します。これなら、丸一日外で作業していても、充電切れに悩まされません。個人的に、それ以上に嬉しかったのが、30分の充電で4時間の作業が可能になる(※)という急速充電性能。というのも、筆者はデジタル端末に囲まれて生活していながら、充電を忘れがちなのです。でも、30分で4時間使える(※)のなら、出かける前にちょっと充電しただけである程度の作業が可能になります。
※本体の画面をオフにした状態(スリープモードまたは電源オフ)で充電した場合。データはファーウェイラボによるテスト結果です。
スマホやタブレットとの画面共有&ファイル送信機能が便利すぎる
MateBook X Pro 2021は、Huawei Shareやマルチスクリーンコラボレーションといった機能に対応しています。これにより、ファーウェイのスマートフォンやタブレットと画面を共有し、しかもそれをPC上から操作できるようになります。そしてなんと、スマホ上のファイルをPCに転送することも、その画面上でできてしまうのです。
筆者は普段、iPhoneとMacBookの間で画像を送信するのにAirDropをよく使っているのですが、正直、それより便利に感じました。AirDropだとスマホとPC、双方での操作が必要ですが、Huawei ShareであればそれがPC上だけで完結します。
EMUI 11以上を搭載した一部のファーウェイ製スマートフォン、およびPC Manager 11以上をインストールされた一部のHUAWEI MateBookでのみサポートされている機能ではありますが、対応端末をすでにお持ちの方であれば、MateBook X Proを買う必然性が一気にアップすることは確実です。この機能を試してみて、筆者は一気に本製品が欲しくなりました。
ビジネスシーンで手放せなくなってしまいそうな一台
MateBook X Pro 2021のレビューを一言に集約するなら、あらゆるビジネスユーザーに不満を抱かせない「安心しておすすめできるパソコン」です。
独自機能が細かくかゆいところに手が届いているので、メリットを挙げればキリがないのですが、大きく上げるなら「独自のハイスペックディスプレイ」「程よく十分な端子による拡張性」「それらをどこでも持ち運べるサイジング・デザイン」という3つにまとまるかと。
筆者は、デジタル系ライターという職業柄もあって、友人からパソコンを購入する際のアドバイスを求められることが少なくありません。そのたびに、それぞれのやりたいことを聞いてから最適なOSとスペックを考えているわけですが、MateBook X Proなら、その高い機能性・操作性から、ハイエンドな高性能なGPUを要求されるような高負荷作業をする人でもない限り、「まずはこれ触ってみ?」と推薦してしまいたくなっています。
現代のビジネスノートに求められるポイントを機能・性能の面でしっかり揃え、それでいてユーザーに喜ばれる工夫を随所に折り込んだ本製品。ハイスペックがもたらすビジネスシーンでの恩恵と、かゆいところに手が届く独自機能の設計に、まさに手放せなくなってしまいそうな一台と言えるでしょう。
最後になりますが、「MateBook」シリーズには15型モデルの「HUAWEI MateBook D15」もラインナップ。画面占有率約87%の大画面フルビューディスプレイにハイレベルのスピードとパワーを実現しています。ホームノート用途を中心にPCを探している方は、こちらも参考にしていただくといいでしょう。
撮影/松浦文生、我妻慶一