2021年は引き続きコロナ禍によるパンデミックが続きましたが、筆者がまめにチェックしているオーディオ・ビジュアルの周辺には革新的な技術と、これを搭載する製品の発表・発売など明るい話題もありました。今回はオーディオ・ビジュアルやそれに関連するエンターテインメント分野を中心に、2022年にますます普及が進みそうな技術とサービス、さらに筆者が個人的に誕生を願うプロダクトについて紹介したいと思います。
その1.完全ワイヤレスイヤホンもハイレゾ対応へ
2021年にはBluetoothオーディオの技術的な限界を越えて、CDと同等の音質である44.1kHz/16bitのロスレスオーディオや、これを越えるハイレゾ品質のサウンドが楽しめる左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンが誕生しました。ソニー「WF-1000XM4」、テクニクス「EAH-AZ60」は、ソニー独自のハイレゾ対応のBluetoothオーディオコーデックであるLDAC(エルダック)をサポート。クアルコムのBluetoothオーディオコーデックであるaptX Adaptiveも音質が進化して96kHz/24bit対応になりました。AVIOTのイヤホン「TE-BD21j-ltd」がいち早くこれに対応しています。
音楽配信サービスの側もAmazon Music Unlimitedに続き、Apple Musicもハイレゾ対応のコンテンツを揃えました。一方で、日本発のハイレゾ配信プラットフォームとして気を吐いていたmora qualitasのサービスが、2022年3月をもって終了することを発表したのはとても残念です。2022年は、海外で先行していたSpotifyのロスレスオーディオ配信や、欧米を中心にハイレゾ配信のサービスを最も早く始めていたTIDAL(タイダル)が日本にやってくることを期待したいですね。
Apple Musicのロスレス/ハイレゾ配信が、AirPodsシリーズのワイヤレスイヤホン・ヘッドホンで現状まだ楽しめないことが筆者にはとても残念です。まずはヘッドホンのAirPods Maxから、iPhoneと何らかの専用ケーブルでつなげばロスレス/ハイレゾが聴けるアップデートが行われて欲しいと願うばかりです。
Bluetooth再生でハイレゾやロスレス品質のオーディオを楽しむためにはコーデックの周囲にも手を加える必要があります。筆者は、2020年にドイツのフラウンホーファー研究所が技術仕様を大々的に発表した、Bluetooth LEオーディオのコーデック技術である「LC3plus(Low Complexity Communication Codec)」をベースに、アップルが独自に新しいコーデック技術を開発するという可能性もゼロではないと思います。
LC3plusでは最大96kHz/24bitのオーディオストリームが伝送できて、クリアな通信品質も可能になります。さらに遅延も少ないことから、スマホで楽しむモバイルゲームの音声伝送遅延が抑えられるメリットも引き出せます。2022年には音質・伝送遅延、ハンズフリー音声がそれぞれに最強化したAirPodsが誕生、なんてことも有り得るのでしょうか。
その2.高画質化が進むHMD・スマートグラスの進化
2020年のCESにパナソニックが展示した4K対応のスマートグラスの画質がとても良かったことに驚いていたら、2021年にも高画質なHMD(ヘッドマウントディスプレイ)に出会いました。ソニーが2021年秋に商品として発売した「Xperia View」です。
画質の良さは圧巻でした。Xperia Viewは「Xperia 1 III」「Xperia 1 II」の4K有機ELパネルをディスプレイとして活用するため、「Xperia Viewにスマホを装着した状態で頭に乗せる」という視聴スタイルになります。とても明るく色鮮やかで、なおかつ画素の存在を感じさせないきめの細かな映像がVR体験をとても豊かなものにするのです。中央部分に光を集めて精度の高い像を結ぶ「非球面レンズ」と、周辺部分にも高い集光効率をキープしながら快適な視聴体験を引き出す「フレネルレンズ」を一体化した、ソニー独自開発のハイブリッドレンズにより広い視野が得られることも本機の特徴です。
2021年秋にソニーが開催した同社の最先端テクノロジーを集めたイベントでは、4K解像度を実現したOLEDマイクロディスプレイを2基備えて、片目で4K/両目で8Kの映像が見られるVRヘッドマウントディスプレイの試作機を展示しました。
筆者はこちらのデバイスで4K高解像度の3D立体映像や360度VR映像を視聴していますが、どちらの映像も高い密度感とリアリティを感じるものでした。同等に高画質なライブストリーミング映像を自宅に居ながら鑑賞できるようになれば、音楽イベントやビデオ会議などをバーチャル空間の中で参加する新しい没入型のエンターテインメント、ビジネススタイルが近い将来に確立されるかもしれません。
その3.15インチ以上の“大型iPad”に期待する理由
2021年はコロナ禍の影響が長引いたため、自宅で趣味や習い事の時間を持つようになった方々が増えました。筆者のまわりにもiPadでイラストを描く勉強を始めたという方が多くいます。
iPadはスタイラスペンの「Apple Pencil」さえあれば、ノートPCの外部入力デバイスとして使う「板タブ」や「液タブ」よりも身軽に携えて、いつでも・どこでも画を描けるところが魅力的です。
8.3インチのコンパクトなiPad miniは本体が小さく軽いことから、ポータビリティにもすぐれる“デジタルスケッチブック”として人気があります。ところが、一方ではより本格的にイラストを描き込もうとすると、ある程度大きなiPadでないとアプリの画面がメニューやツールバーによって埋め尽くされてしまうので、ペンを動かせるスペースがとても狭くなります。
液タブには20インチ台の大型モデルも存在するため、最大サイズのiPad Pro 12.9インチですら画面が小さくて描きづらいと訴える方も筆者のまわりにはいます。そういった理由から、筆者は2022年以降にアップルにぜひ「大型のiPad」を発売してほしいと期待しています。
iPad Proシリーズからマルチレンズカメラ、5G通信やクアッドスピーカーを省き、ProMotionテクノロジーやフルラミネーションディスプレイなどApple Pencilとの連携による「描きやすさ」を一点突破で磨き抜き、価格はProよりも少し抑えめにした15インチ以上の「iPad Art」のような新シリーズが誕生すれば多くのクリエイターから引き合いがあるのではないでしょうか。
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