日本語は難しい言語だとよく言われる。筆者が以前、外国人留学生に日本語を教えていたときも、皆が皆「難しい」と口にしていたのを記憶している。普段からなじんでいる我々からしてみれば「どうして?」と思うかもしれないが……。
■日本語ってムズカシイ!
たとえば発音だ。「おじいさん」と「おじさん」。外国人には長音、つまり「おじいさん」の「い」の音が聞き取れないらしく、話し言葉でこの2つを区別するのに苦労するらしい。ほかにも「ん」(撥音)や小さい「つ」(促音)は、多くの日本語学習者を苦しめている。
これに加えて、動詞の活用の多様さ、イヤというほどにある同音異義語、敬語のような独特の表現の存在、「~は」「~が」などの助詞の区別、漢字・かな・カナの使い分け……など、日本語が難解な理由は挙げたらキリがないほどある。日本語は「世界一難しい言語だ」とすら言われることもある。その理由をお分かりいただけただろうか。
我々日本人はハイレベルな言語を話している。……しかし、その日本人が外国語を学習しようとするときにはこの母国語の存在がアダにもなるのだ。外国語といえば最たるものは英語だが、『日本人の英語』という本が有名になるほど日本人の英語は通じない。”日本語思考”に縛られている日本人は、他国語話者であればハマらないであろう落とし穴に勝手に落ちていくのだ。
外国人も日本人も苦しめるとは……なんと罪深い言語であろうか!
■「お疲れ様」って英語で言える?
さて、そんな”英語学習難民”とも言える日本人のために作られた電子書籍が『日めくり3分英会話』(長田陽子・著/学研プラス刊)だ。夫とともに英語圏のニュージーランドに移住した筆者が、日本人の英語学習における落とし穴を日めくり形式でひとつひとつ埋めていく内容になっている。具体的にはどのような内容なのか、少し紹介してみよう。
「お疲れ様」という日本語はどのように英訳すべきか、あなたは分かるだろうか? これこそまさに、同書でも触れられている「落とし穴」のひとつだ。
この言葉が使われるシーンを考えてみよう。社内の人と話すときの最初のひと言。電話口での最初の言葉としても日常的に使われている。なにか大きな仕事を成し遂げた人に対してなど、相手への気遣いやねぎらいの気持ちを表すときにも使う表現だ。
このように、「お疲れ様」は日本語での会話には汎用的に使える言葉なのだが、ぴったりこれに当てはまる英語は残念ながら存在しない。それぞれのシーンに合った表現をする必要があるのだが……。
あいさつとしてなら”Hi”、相手の労をねぎらうなら”Good job”。これが英語の「お疲れ様」の正体である。
驚くほどカンタンではなかろうか。でもおそらく、多くの日本人英語学習者は「お疲れ様という日本語を英訳したらどうなる?」という質問への回答に悩んでしまうだろう。日本語の「お疲れ様」が染み付いているがゆえに、「場面ごとに言葉を使い分ける」という発想に至らないからだ。
■一日一穴、埋めていきたい
『日めくり3分英会話』では、上に書いた「お疲れ様」のほかにも「もったいない」「行ってらっしゃい」「仕方ない」など、英訳できそうでできない落とし穴な日本語が多数紹介されている。言葉の意味だけでなく、語順などにも言及。紙の本なら250ページ超に相当するという充実のボリュームだ。その一方で、ひとつひとつの話は長いものではなく、スマホでも十分に読みやすいのも同書の特長となっている。
1日3分でひとつずつ穴を埋めていく。そんな簡単な作業があなたを”日本人の英語”から救ってくれるかもしれない。(フムフム編集部)
【参考文献】
日めくり3分英会話
著者:長田陽子
出版社:学研プラス
Webサイト「日刊英語ライフ」の英語コラムを12週間ぶんの日めくり形式で電子書籍化!意外と英訳しにくい、かゆいところに手が届く84のテーマを収録しました。3分程度のスキマ時間でサクッと読める内容のコラムは、通勤・通学のお供にピッタリです!