僕が音楽に興味を持ち始めたのは中学2年生くらいのころ。今から30年以上前の話だ。
当時はテレビで音楽番組が多く、歌謡曲などはテレビで見て覚えた。しかし、洋楽や日本のロックやフォークといった、あまりテレビでは放送されない音楽はほとんど知らなかった。
しかし、ある日突然音楽に目覚め、急に貸しレコード店などに通うようになる。しかしお小遣いが少ない中学生にとっては、貸しレコード屋の料金+ダビングするためのカセットテープの値段もばかにならない。そこでたどり着くのがFMラジオだ。
当時関東では、NHK-FMとFM東京(現TOKYO FM)が聞けた。AMラジオと違い、ステレオ放送で臨場感があった。当時のFMラジオは音楽主体で、DJのしゃべりなどはほとんどなく、洋楽中心に歌謡曲以外の音楽をたくさん聞くことができた。それをカセットテープに録音して、いろいろな音楽を吸収していった。その当時一世を風靡したのがFMラジオ専門誌だ。
FMラジオのエアチェック派は必携の専門誌
FMラジオ専門誌は、FMラジオ局のタイムテーブルが掲載されているほか、その番組でかかる曲目一覧も載っていた。つまり、目当ての曲を探して録音したいキッズにとって、とてもありがたい情報源だった。ちなみにラジオを録音することは「エアチェック」と言っていた。
当時FMラジオ専門誌は『FMレコパル』『FM Fan』『週刊FM』などがあったが、僕が読んでいたのは『FMステーション』だった。鈴木英人のポップなイラストが表紙で、他誌よりも大判で読みやすかった。そして、アーティストのインタビューカットなどはカセットテープのレーベルサイズになっていたので、そのまま切り抜いてカセットテープのケースに入れられた。蛍光ペンで番組表の録音したい曲にマークをしていたのはいい思い出だ。
FMラジオは青春だった
その『FMステーション』の創刊から休刊に至るまでを書いた書籍が『『FMステーション』とエアチェックの80年代 僕らの音楽青春記 』(恩蔵茂・著/河出書房新社・刊)だ。
FMラジオ専門誌としては後発の『FMステーション』がどのようにして立ち上がったのか。そして当時の音楽業界の様子、雑誌編集部の様子などが描かれている。僕も雑誌の編集やライターをやっていたので、書かれている内容に「ああ、わかるわー」と思わず同意してしまうことも多い。
当時FMラジオを聞いていた人、FMラジオ専門誌を読んでいた人、雑誌の編集などに携わっていた人は、かなりおもしろく読めるのではないだろうか。
僕にとって、『FMステーション』は音楽を楽しむための必携ツールだった。当時の僕の音楽知識は、ほとんど『FMステーション』で養われていたといってもいい。臭い言い方だが、僕の青春を形成していたワンピースだ。
もうカセットテープを聴くこともないし、紙の雑誌を読む機会もかなり減った。でも『FMステーション』という名前を聞くと、表紙やレイアウト、好きなアーティストのインタビューの内容などを思い出すことができる。
この書籍のタイトル通り、FMラジオと『FMステーション』は、僕の青春だったんだなと改めて感じた。僕と同年代で同じようにエアチェックをしていた人は、懐かしく読めることだろう。ぜひ手に取って、中学生のときの気持ちを思い出してほしい。
【書籍紹介】
『FMステーション』とエアチェックの80年代
著者:恩藏茂
発行:河出書房新社
FM雑誌で番組表をチェックしてデッキの前でスタンバイ、カセットテープに録音してカセットレーベルでドレスアップーかつてエアチェックに熱中したすべての音楽ファンに捧ぐ!音楽業界やミュージシャンの秘蔵エピソード満載、元『FMステーション』編集長が語り尽くす、愛と笑いと涙の80年代FM雑誌青春記!