ライフスタイル
2016/10/23 17:14

「なぜトイレなんだ!?」と言われ続けて10年! トイレハンターが取材を続ける本当のワケ

「トイレハンター」として10年以上活動しているマリトモさんに、トイレの魅力を語ってもらうコーナー。前2回では個性的なトイレを紹介してもらったが、最終回となる今回は、トイレの豆知識を教えてもらうとともに、なぜ10年にわたってトイレ取材を続けているのか、その本当の理由を語ってもらった!

 

【ガイドしてくれるのはこの人!】

20160927-s5 (00)

マリトモさん

大阪生まれのフリーランスライター。映像製作プロダクションのアシスタントディレクターとして従事した後、Webサイトの企画・ディレクションやマーケティング、デザイン業務のほか、ライター、カメラマンとしても活動すること15年。そのかたわら、トイレ空間に興味を抱き続け、10年以上の歳月をかけて全国各地に点在する300カ所以上のトイレを独自取材。現在は“トイレハンター” や“トイレ評論家” として各メディアにて活躍中。著書に「ニッポンのトイレほかがある。

マリトモさんの公式HPはコチラ

マリトモさんのTwitterはコチラ

マリトモさんのFacebookはコチラ

 

トイレにまつわる偉人の話

20160627-s5-(3-2)

ーー素朴な疑問なのですが、トイレの便器は何故白いのでしょうか。

 

マリトモ バブルの頃は淡いピンクやベージュ、グリーンといった色もありました。万国共通で圧倒的に白が多い理由としては、「清潔感がある色」という理由のほかに、出たモノの色や形を見て毎日の健康状態をチェックするためです。その昔、大名の排泄物を、おつきの人が色やニオイまで、くまなくチェックしていたそう。余談ですが、いいものを食べていた大名の排泄物は、肥料として高く売れていました。

 

ーーなんでもマリトモさんは、戦国武将のトイレにまつわる話にも詳しいとのことですが。

 

マリトモ 例えば、武田信玄が使っていたトイレは、高さも畳6畳分もあったそうです。これは、敵がいつ攻めてきても刀をふるうことができるようにするため。また、信玄はトイレでよく戦術を練っていたそうです。伊達政宗はトイレで読書をするのが好きで、加藤清正は、極度の潔癖性で30センチくらいの高さのある下駄をはいて、用を足していたそうです。

 

あと石田三成が、関ヶ原の戦いで運が尽きたと言われているのは、逃走中に大をして、美濃紙という高級な紙で拭いたためといわれています。その紙が追手に見つかり、捕まってしまったんですね。最後に、上杉謙信はかなりのお酒好きで高血圧だったため、トイレで脳溢血になって死んだそうです。ちなみに、フランスの思想家のルソーも同じくトイレで命を落としており、その原因は息み過ぎが原因とされています。

 

ここで、過去の例から学ぶと、用を足す時に息みすぎると、血圧が急上昇して体に負担がかかって危険なんです。ちなみに私が用を足すときは、呼吸を意識します。副交感神経が優位に働く息を吐く際、一気に勝負するようにしているんです。また排尿後、急に血圧が下がる事で一過性に気を失ってしまう「排尿時失神」にも注意。立って用を足す男性は、特に気をつけた方がいいですね。

 

トイレの取材は苦労の連続!

ーーしかし、こういったトイレにまつわる情報を得ようとすると、実際はかなり大変ではないですか?

 

マリトモ そうですね。いつも気になるトイレを見つけては取材交渉に挑むのですが、その電話も取材も撮影も執筆も、最終的にはすべて一人で対応しなければなりません。多いときで1日100件ほどのアポイントを取ることもあり、心身ともにかなり大変でした。さらに、2~3件に1件の確率で取材を断られることも多い。

 

飲食店さんだと、「なぜ自信作のメニューではなくてトイレなのか」と文句を言われたり、周囲にも「よりにもよってなぜトイレなの?」と、嘲笑ぎみに問われることもあります。

 

そのたびに、日本ではトイレ=「きたない」「くさい」というマイナスのイメージを持っている方が、まだまだ多いことを痛感しました。国際的な目でみれば、日本のトイレは最も進化していて、快適な空間に整えられ、温水洗浄便座があることにむしろ感謝しなければならないと思うのですが……。

↑第2回の記事で紹介した兵庫県のカフェ、ヒポポパパのトイレ
↑第2回の記事で紹介した兵庫県のカフェ、ヒポポパパのトイレ

 

世界的に見れば3人に1人がトイレを使えない

ーーたしかに外国に行くと、日本のトイレの良さを実感しますよね。

 

マリトモ LIXILグループが英調査会社と共同で調査を行ったところ、衛生的なトイレの未整備がもたらす経済損失は世界で2229億ドル(約22兆円)に上るとのこと。このうち下痢性の疾患で早期に死亡する人的損失は金額換算で1228億ドルとなり、全体の55%を占めると発表されています。水洗式のトイレに至っては、わずかな国に限られます。

 

また、海外の方から絶賛される「温水洗浄便座」がなぜ海外で普及しないのか? という質問もよく受けますが、海外では日本ほど水質環境が整っておらず、水の中に不純物が多く含まれていたり、ヨーロッパの硬水だと温水洗浄便座のノズルが詰まって故障の原因にもなるんです。ちなみに、イギリスでは感電防止のため、バスルームではコンセントが使用できない法律もある。こうした事情を見ると、日本以外では、温水洗浄便座がなかなか普及しないのかもしれません。

 

ーービジュアル的に面白いトイレを見つけるだけではなく、多面的にトイレに向き合っているんですね。

 

マリトモ 世界的に見ると、3人に1人がトイレを使えないというのが現状です。我々日本人が恵まれた環境にあることを、1人でも多くの方に理解してもらいたい。そんな思いから、面白いトイレを取材しては、SNSなどで紹介しているんです。こうした活動を通じて、少しでも多くの人がトイレに興味を持ってくれたらいいですね。

 

マリトモさんのトイレの探求はこれからもまだまだ続きそう。また次の機会に、面白いトイレの話が聞けるのを期待して待ちましょう!

 

【さらに詳しく知りたい人はコチラ!】

20160927-s5 (0)

「ニッポンのトイレほか」

アスペクト/1000円(税抜)