反復問題集のことをドリルという。穴をあける工具のこともドリルという。共に、英語のスペルは「drill」という表記だ。和製英語かと思っていた。英語圏向けネットショッピングサイトのAmazon.comを検索すると、海外でも「Math Drills(算数ドリル)」や「Daily Learning Drills(毎日ドリル)」という参考書が売られていた。人種や文化にかかわらず、ドリル学習には一定の効果があると考えられているようだ。
わたしは、たまに小学生用のドリルを買う。30歳をすぎたあるとき、分数の計算ができなくなっていることに気づいたからだ。危機感を覚えた。
■異なる分母同士の分数計算がわからない!?
文部科学省の「小学校学習指導要領」によれば、分数の計算は小学3年生から学習がはじまる。異なる分母の計算は小学5年生で習う。
【問題A】
4分の3と7分の1を足し算しなさい
正しい解答を得るためには、異なる分母をそろえる「通分」の知識が必要だ。通分では、それぞれの分母の最小公倍数を求める。最小公倍数を求めるためには、小学2年生で習った乗法九九の知識を使う。4の段と7の段で共通するもっとも小さい倍数。つまり、4と7の最小公倍数は28だ。通分すれば、分母だけでなく分子の数値も変化する。
(問題Aの答え:28分の25)
■小学生レベルの大人にならないために
幼稚なふるまいを指して「小学生レベル」と言うことがある。もしも異分母の足し算ができなければ、小学5年生の児童にも劣る存在ということだ。いわば小学4年生レベルの大人だ。たとえ社会的地位が高くても、異なる分母の分数計算ができなければ、小学4年生レベルの部長であり、小学4年生レベルの常務であり、小学4年生レベルの社長ということになる。
社内でどれだけ偉そうにしていても、異なる分母の分数計算すらできない人間は、陰で社員たちに「小学生レベルの上司www」などと笑われている可能性がある。たとえ業績が好調であっても、経営陣のなかに小学生4年生レベルの役員がいることを株主に知られてしまえば、時価総額に悪い影響を与えかねない。成人後におけるドリル学習の重要性をおわかり頂けただろうか。
■大人向けドリルの効能
わたしの場合、子どものときは「覚えるため」に使っていたが、いまは「忘れないため」に学習ドリルを活用している。はじめは、小学2年生か3年生の算数ドリルでいい。習慣づくりのためだ。1冊500円くらいで買える。内容は、2ケタや3ケタの足し算・引き算など。ひたすら解いていく。答え合わせはしない。ほとんど正解に決まっているからだ。数日間で1冊を終えられる。暗算のトレーニングになる。お手軽に達成感を味わえる。
算数ドリルの単純作業に疲れてきたら、国語ドリルがオススメだ。漢字の読み書き、四字熟語や慣用句(ことわざ)の意味など、ふだんの生活でも役立つ知識を得られる。国語ドリルに関しては、小学生用ドリルよりも、大人向けドリルのほうが実用的かもしれない。『脳が活性化する 大人の国語力 脳ドリル』(川島隆太・監修/学研プラス・刊)を紹介しよう。
実験は、本書と同じタイプの「四字熟語」問題と「ことわざ・慣用句」問題を解く作業を、光トポグラフィという装置を用いて、脳の血流の変化を調べていきました。
(中略)
安静時に比べて問題を解いているときは、脳の血流が増え、活性化していることが最新の脳科学によって判明したのです。(『脳が活性化する 大人の国語力 脳ドリル』から引用)
「すらすら読みたい&書きたい日本語」「大人の慣用句&言い回し」「日常生活でよく使う言葉&漢字」「品格が身につくことわざ&故事成語」「四季の言葉&美しい日本語」など、140日分(2100問)を収録している。
1ぺージあたり15問程度、5分くらいで解ける。漢字検定ほど難しくはないが、テレビのクイズ番組よりは歯ごたえがあった。血流量が増えたかどうかはわからないが、問題を解いているときに、おでこのあたりに熱を感じた。風邪かもしれないが。(文:忌川タツヤ)
【参考文献】
脳が活性化する 大人の国語力 脳ドリル
著者:川島隆太(監修)
出版社:学研プラス
脳の活性化に効果がある漢字や日本語の書き取り問題を140日分掲載。すらすら読みたい&書きたい日本語。大人の慣用句&言い回し。品格が上がることわざ&故事成語。四季のことば&美しい日本語。面白い問題を解きながら脳の健康を守ります。