よしもとといえば、お笑い芸人、漫才、新喜劇、劇場などというイメージだが、2022年3月、新たにBS放送でテレビ局を始めることとなった。「地方創生」をコンセプトとしたその局の名前はBSよしもと。編成制作局局長の松本幹景氏が今後の展望、新番組について語ってくれた。
(構成・撮影:丸山剛史/執筆:松本祐貴)
新番組では、各地域の「住みます芸人」たちが躍動
ーーBSよしもとが3月21日に開局しました。コンセプト、開局の意図を教えてください。
松本 吉本興業グループでは、10年ほど前から全国各地の自治体、地域企業とネットワークを築き、地方創生に取り組んできました。
そのひとつが、2011年からスタートした「あなたの街に住みますプロジェクト」です。これは、47都道府県を元気にしたいとう思いを持つ芸人が「住みます芸人」として移住して、笑いの力で地域を活性化させるという地方創生のプロジェクトです。この延長線上に、BSよしもとのコンセプト「地方創生」があります。地方の情報、取り組みを全国の視聴者の方々に紹介していきたいです。
ーーテレビ局を作るというのはよしもと初ですか?
松本 CS 局ではヨシモトファンダンゴTVやKawaiian TV(カワイイアン・ティービー)などの放送事業を手掛けていましたが、BS局はよしもととして初めてですね。
ーー社員の意気、またレギュラーを持つ芸人さんたちの心持ちは、放送が始まってどうでしょうか?
松本 開局はスタートだと考えています。地方創生をコンセプトに番組をより充実させ、多くの方にさらに楽しんでいただけるよう、パワーアップしていきたいと考えております。
ーー住みます芸人でイチオシの方はいますか?
松本 芸人みなさんがそれぞれの地方で活躍しています。観光大使を務めていたり、地方局で番組を持っていたりする芸人もいます。
ーーBSよしもとには、どんな新しい番組があるんでしょうか?
松本 まず、平日は一日10時間以上の生放送です。生放送の番組では、朝8時から2時間『チーキーズ キャスト 1』、10時から2時間『チーキーズ キャスト 2』などがあります。
これは、全国各地の「ワクワク」、「お得」、「生活」などをテーマにした情報を、視聴者の皆様とSNSで連携しながら、47都道府県に移住している住みます芸人をはじめとする全国各地の方々とパーソナリティを務めるよしもと芸人がお伝えします。
番組では、地域での起業に関することもお届けできると思います。住みます芸人たちも、いままではその地域でしか知られていなかった存在でしたが、BS放送により全国で知られると思います。
次に昼の13時〜17時の生放送『チーキーズ a GoGo!』もメインの番組です。住みます芸人が出演し、各地域と東京のスタジオを結び、ローカルのホットな話をお届けする番組です。その中で、古民家の再生や、社会問題となっている耕作放棄地の畑で野菜を作り販売する、などの地域課題の解決を実践しながら番組で紹介をしています。
平日夜の19時から21時は生放送『ワシんとこ・ポスト』です。これはわが町のニュースのようなシャレを効かせた意味ですね。元日本テレビアナの小倉淳さんがメインキャスターを務め、コメンテーターをお迎えしてニュースを掘り下げます。ほかに日替わりでヒデ(ペナルティ)、福田充徳(チュートリアル)、岩尾望(フットボールアワー)などが、番組を盛り上げます。最新の政治問題、国際情勢だけでなく、地域の重大ニュースなどもお伝えしていきます。飲食やアパレルなどの業界新聞の記事も取り上げます。
これらが平日のメインコンテンツですね。
地元密着で、番組内でも起業を目指す
ーー全国向けのBS放送とはいえ、47都道府県とは大変ですね。
松本 『チーキーズ a GoGo!』では、月曜日は「東海・関西」、火曜日は「中国・四国」のように地域をわけて、出演者もそれぞれの地元を担当しています。
MCは、静岡県出身のトータルテンボス、岡山県出身の次長課長、福岡県と大分県出身のパンクブーブー、関東地方担当のトレンディエンジェル、北海道出身のとにかく明るい安村、富山県と新潟県出身のハイキングウォーキングなどです。
『チーキーズ a GoGo!』では、全国各地と中継をつなぎ、地域の魅力をPRする「となりマッチ」など、地元の方々にご出演いただき、地域に根差した住みます芸人が話題をお届けしています。出演者・スタッフ一丸となって、ローカルの魅力をお届けしていますので、ぜひご覧いただきたいと思います。
ーー編成全体を見ると、地元に密着し、盛り上げていきたいというのを感じます。
松本 そうですね。それぞれの地域の地方創生を全国の方に知っていただけると思います。そこから起業、雇用、ビジネスが生まれるとベストです。
ーー地方の視聴者が「こんなニュースがある」「こんな取り組みがある」と番組に提案することもできますね。
松本 はい、番組を見ていただいて、反応があるのはうれしいことです。もちろん住みます芸人もそういった情報にはアンテナを張っています。
ーー一番組一起業は今からですか。
松本 耕作放棄地や移住のほかにも手掛けている事業がありますし、番組を継続するとさらにいろんなテーマが見つかってくると思います。
ーー住みます芸人は海外にも応用できますね。
松本 すでに海外にも住みます芸人はいます。台湾、タイ、インドネシアなどですね。今後は出演の可能性もあります。
インターネット同時配信はいつでもどこでもスマホで見られる
ーーほかに特色はありますか?
松本 よしもとならではの番組でいえば、劇場ですね。土曜日と日曜日の朝9時から12時までは、『よしもとプレミアムアワー』と題して『よしもと新喜劇』もしくは『花王名人劇場』のアーカイブを放送します。
1980年代の『花王名人劇場』では、横山やすし・西川きよしの黄金時代を見ることができます。懐かしい映像で、高年齢層の方からするとテレビの中での昭和へのタイムトリップになるかもしれません。
ーー若い世代では、ネット放送の期待もあると思いますが。
松本 はい。BSよしもとの視聴者はオールターゲットです。インターネット同時配信、見逃し配信も実施します。BS放送は高齢者の方々がよく見ている媒体と言われていますが、ネットと見逃し配信も実施することで、若い世代にもリーチが広がり、メディアミックスが実現でき、全年齢層に放送をお届けできると考えています。
ーーお笑い好きとしては、放送のレギュレーションも気になるのですが、いかがですか? BS放送とネット配信限定だと、どこまで笑いを追求できるかが違いますよね?
松本 基本的にBS放送をしているものを同時配信、見逃し配信するので、BS放送のレギュレーションとなります。
ーーこれらはすべて無料放送ですよね。そもそもBSはどんなふうに収益を求めていくのですか?
松本 現在BSを見られている方なら誰でも無料でBSよしもとを見ることができます。チャンネルは265チャンネル。テレビの番組表に出てくるので、一度見てみてください。もちろん、ネット配信は無料、見逃し配信も無料会員登録すれば同じく無料でご覧いただけます。ちなみにBSよしもとのロゴはスマートフォンをイメージしていまして、ネット配信にも注力している企業メッセージを込めています。
『伝説の一日』のような特別番組にも期待!
ーー4月2日と3日に放送された『伝説の一日』では、ダウンタウンが31年ぶりに漫才を披露して話題になりました。でもBSよしもとでは『伝説の(裏)一日』と題した裏番組を放送していましたが、このような特別なコンテンツは、まだまだ続くのでしょうか?
松本 4月17日午前11時30分~午後2時に、『沖縄国際映画祭』のレッドカーペットの模様を沖縄から生中継でお届けしました。以降も折に触れて、BSよしもとならではの特別番組をお送りする予定です。
ーー元フジテレビの久代萌美アナウンサーの入社が報道されています。今までは、バラエティ番組の担当が多かった久代アナはどのような番組を受け持つことになるのでしょうか?
松本 毎週日曜日正午~午後1時『別冊!CHEF-1グランプリ』にナレーターとして、また4月22日に『ワシんとこ・ポスト』にはコメンテーターとしての出演が決まっております。今後BSよしもとでお目にかけられる機会はあると思います。
ーーBSよしもとの今後の目標を教えてください。
松本 今はコンセプトを広げていく段階です。開局し、起動に乗せていくところがミッションですね。より多くの方に観ていただくこと、よい番組を作り続けていくことです。
番組表を見ても、生放送をふくんだ新番組、特別番組がめじろ押しなところに、BSよしもとの本気さを感じる。しかも、テレビの前にいなくても、スマホで検索するだけで、見られるのはお手軽でいい。手元で見られる放送局・BSよしもとはこれからの時代に合ったお笑いを届けてくれるだろう。気になった方は、スマホで検索してみてはどうだろうか。