前回の記事 自動調理鍋は「王道・シンプル・割り切り…」どれがいい? 人気5モデル「操作性」の調査でベクトルが明らかに違うと判明に引き続き、今回はそれぞれの調理鍋がもつ独自機能について検証します。というのも、自動調理鍋はメーカーによってできることに大きな差が出る家電のひとつ。
自動で調理してくれる点は一緒ですが、時短したいのか、ラクしたいのか、健康に気を遣いたいのか、新しい料理にチャレンジしたいのか、実現したいことが変わってきます。つまり、独自機能を押さえれば、あなたに合った自動調理鍋が見えてくるということ。
そこで、GetNavi webの家電担当とフードジャーナリストの中山が集結して、ユーザー目線で調査。実際の使い勝手を含めて調べてみました。
【今回テストした5機種はコチラ】
アイリスオーヤマ
「電気圧力鍋ヘルシープラス KPC-MA3」
実売価格2万1780円(税込・以下同)
圧力調理や無水調理などの6種類の調理方法が可能な電気圧力鍋。「低糖質」「塩分控えめ」「高たんぱく質」「食物繊維」「低カロリー」「発酵」「糖質カット」などのヘルシーメニュー52種類を搭載し、カロリー別にレシピを逆検索できるのが特徴。
シャープ
水なし自動調理鍋ヘルシオ ホットクック KN-HW24G
実売価格7万7000円
食材の水分のみで調理し、栄養素を多く残す「無水調理」が可能なほか、加熱の進行に合わせてかき混ぜを行う「まぜ技ユニット」を搭載。「まぜ技ユニット」は最大回転スピードを約2倍にアップさせ、クリームの泡立てができるほか、かき混ぜのプログラムが進化したことで、食材のつぶしや卵の溶きほぐしなども可能になりました。
象印マホービン
STAN. 自動調理なべ EL-KA23
実売価格3万3000円
シンプルな操作性と生活に溶け込むデザインを目指した家電シリーズ「STAN.」の自動調理鍋。内鍋には蓄熱性が高く、素材のおいしさを引き出す「ホーローなべ」を採用しています。食材の水分のみで調理する「無水調理」や、ジッパーつき食品保存袋を活用して同時に最大2品まで簡単調理ができる「パック調理」も特徴的です。
ティファール
クックフォーミーホワイト 3L CY8701JP
実売価格3万9700円
内蔵レシピ210種類を誇る電気圧力鍋。圧力調理後は自動で排気してくれるので、減圧時間を短縮できサクッと次の調理に移れます。内蔵レシピから作りたい料理を選ぶと、本体の液晶画面に食材・分量・調理手順を表示してくれるのが便利です。
パナソニック
IHジャー炊飯器 「ライス&クッカー」SR-UNX101
実売価格4万2900円
調理機能も備えた IoT対応の炊飯器。「キッチンポケット」アプリからレシピを送信すれば、食材をセットするだけでほったらかしでスープや煮込み料理、ケーキなど多様なメニューを調理できます。調理レシピは発売時の10種類に加え、食のセレクトショップ「DEAN & DELUCA」監修メニューを含む新レシピを随時配信。
【エントリーその1】アイリスオーヤマ 電気圧力鍋ヘルシープラス KPC-MA3
ナイスな着眼点!「カロリー選択機能」
本機の代表的な独自機能は、レシピをカロリーで選べる「カロリー選択機能」です。これが商品名「ヘルシープラス」の由来ともいえるでしょう。あると便利そうな機能ですが、編集部では「確かに珍しいけど使うかな?」という意見も。
実際に使ってみれば、その利便性を体感できるはず。ということで、今回は「カロリー選択機能」を介してセレクト。1人前100kcal以下のメニューから、92kcalの「りんごコンポート」にトライしました。
「りんごコンポート」以外の100kcal以下メニューには、「ふろふき大根」「ひじきの煮物」「とりハム」「玉こんにゃく煮」などがありました。「このリスト眺めるだけでも勉強になりますね。意外に低カロリーな料理があったりして、面白い」という声も。
味は、りんごとレモンの酸味が調和したあっさり系の甘酸っぱさ。やわらかさと、サクッとした歯触りが共存し、上品さを演出します。
改めて、編集部に「カロリー選択機能」の感想を聞きました。
「レシピの出合い方としては新しくて着眼点がナイスですね。ただ、ダイエットとなるとカロリーだけじゃなく糖質も気になるご時世なので、糖質で検索できるともっとうれしいと思います」(山田)
「『野菜シュウマイ』は1個39kcalで100kcal以下のメニューなんですけど、1人で4個食べたら116kcalですよね。食べる量でも変わってくるので、そのへんもカバーできたらいいなと思いました」(小山)
【エントリーその2】シャープ 水なし自動調理鍋ヘルシオ ホットクック KN-HW24G
料理好きな人には特に便利な「まぜ技ユニット」
「ホットクック」最大の独自機能は、メニューに合わせて最適なタイミングで具材をかきまぜる「まぜ技ユニット」です。旧モデルでは加熱の進行に合わせてかきまぜることまでしかできませんでしたが、新モデルでは、調理の下準備の段階から活躍します。
また「まぜ技ユニット」の回転数がアップしたことで、アイスやホイップクリームの泡立てにも活用できるように。今回は、下ごしらえの段階で活躍するメニュー「ポテトサラダ」で実力を検証します。
かき混ぜながら加熱することで、人力では手間のかかるポテトサラダの茹でる、潰すといった工程を省いて時間短縮できることが「まぜ技ユニット」の大きな魅力。なお、かき混ぜる動作中でも音は静かで気になりませんでした。本機での調理は25分で完了。仕上がりはどうでしょうか。
肝心の食感は、生のような硬さはなくて適度にホクッとしたやわらかさ。ムラも感じません。ポテトサラダの粒の状態は好みがわかれるところだと思いますが、個人的にはつまむのに適した食べごたえのサイズになっていると感じました。「まぜ技ユニット」全体としての編集部員の感想を聞くと、様々な意見が飛び交う結果に。
「かき混ぜで作れる料理は、鍋を振って炒めるというよりも潰して混ぜるメニューのほうが多いですよね。ホイコーローはメニュー搭載されてますけど、野菜炒めとかチャーハンとかがあると、もっと身近なのかなと。あとは、餃子やハンバーグのタネなど、加熱せずに捏ねるだけの機能があるとより便利だと思います」(小林)
「お菓子作りで一番手間がかかると言える生クリームの泡立てを代行してくれるのはうれしいですね。コロッケの具も作れるので、自家製というハードルが高い料理にも挑戦するモチベーションになりそうです。料理好きな人が時短の手助けのために活用するという視点では、『ホットクック』はすごく便利な一台だと思います」(松永)
【エントリーその3】象印マホービン STAN. 自動調理なべ EL-KA23
「パック調理」が重宝するかはユーザー次第
「STAN.」は、「パック調理」で2品同時に作れるのが独自機能。これは、市販のジッパー付き食料保存袋に食材や調味料を入れ、「STAN.」付属の「パックホルダー」を使えば2袋まで固定して調理できるというものです。今回は設定温度と調理時間が同じである「小松菜のあさり煮」と「鶏ささみときゅうりのマスタード和え」を同時に作って実力を検証しました。
「パック調理」はマニュアルコースで行いますが、操作は簡単。温度と時間を選んで「スタート/再加熱」ボタンを押すだけです。今回はともに、温度は90℃、調理時間15分で完成するコースでした。
「小松菜のあさり煮」は、だしの香りが豊かなやさしい味わい。あさりはプリッと、小松菜はしんなりして熱の入り方も十分でした。一方の「鶏ささみときゅうりのマスタード和え」は、ほどよくむっちりした鶏肉とシャキシャキきゅうりのメリハリが絶妙。粒マスタードの効いた味でお酒が進みそうなおいしさです。
このように「パック調理」は同時に2品作れるメリットがあるものの、重宝するかどうかはユーザー次第という声が上がりました。
「惜しいのは、あまり大量に作れないところ。市販のジッパー袋っていくつかサイズがありますが、Lには対応してないんですよね。用途としては、作り置きして冷凍ストックを頻繁にするような人にはありがたいはず」(小山)
「今回は温度も時間も同じ設定でできましたが、組み合わせによっては同時調理できないパターンもあるから、使いづらさは否めないですね。ただ、鍋が汚れないというメリットもあるので、日常的にジッパー袋をよく使う人なら、抵抗なくやってみようという気になるのかも」(松永)
【エントリーその4】ティファール クックフォーミー ホワイト 3L CY8701JP
時短を叶える高性能な「圧力調理」は大きなメリット
「クックフォーミー」の独自機能は「圧力調理」。前述のアイリスオーヤマ「ヘルシープラス KPC-MA3」も電気圧力鍋ですが、「クックフォーミー」は消費電力が900Wでパワーが強く(「ヘルシープラス」は800W)、消費電力が高いほうが予熱時間も短くなるので、より時間短縮できるといえるでしょう。
前回の検証記事で調理したカレーと豚の角煮の調理時間は、どちらも約30分で完成。「ヘルシープラス」ではともに60~65分かかりました。前者のほうが高価なぶんハイパワーということかもしれませんが、いずれにせよ「クックフォーミー」は本機ならではの「圧力調理」に着目して検証していきます。
圧力調理がなぜ時短につながるのか。それは、密閉して圧力を上げることで水の沸点温度が高くなり、具材への火の通りが早くなるためです。「クックフォーミー」は114℃の高温調理が可能に(普通の鍋は最高100℃)。編集部では販売元であるティファールの知見にも関係しているのでは?という意見も出ました。
「ティファールはコンロ用の圧力鍋でも有名で、フライパンもトップブランドですよね。内鍋の熱効率にも、これまで培ってきた様々なノウハウが注ぎ込まれている気がします」(小山)
「時短が求められる世の中において、やっぱり速く調理できるのは大きなメリット。起きてすぐ朝食や弁当の準備、帰宅してすぐに夕食といった、家事で大忙しなパパママの味方になってくれる一台って気がします」(山田)
【エントリーその5】パナソニック IHジャー炊飯器「ライス&クッカー」SR-UNX101
時代にマッチしたお洒落さもナイスな「個性派レシピ」
IoT色が強い「ライス&クッカー」の独自機能として挙げたいのが、随時アップデートされるレシピを独自の「キッチンポケット」アプリを通じて本機にダウンロードできること。なかでも、米国発のフードセレクトショップ「DEAN & DELUCA」監修の「個性派レシピ」は異彩を放つお洒落さです。今回は「アボカドのライムスープ」を作って味わい、機能の独自性を検証しました。
その後、予熱を経て約20分で加熱は完了。ふたを開けて塩こしょうとライムで味を整えます。そしてボウルに移し、塩やタバスコで味を付けたアボカドをペーストにして盛り付ければ完成です。
ルックスからして洗練された印象。食べてみると、うまみ、酸味、辛みが程よく調和した新感覚のおいしさです。未知なる料理との出合いが楽しめるのは、確かに本機ならではの独自性といえるでしょう。編集部では「これまでの自動調理鍋にはなかった新発想」など、高い評価の声が上がりました。
「多くの自動調理鍋は、ベーシックな料理を作るイメージ。でも『ライス&クッカー』のユニークなレシピは新体験を提案するという価値もありますよね。『DEAN & DELUCA』監修だから、より作ってみたくなるというのもポイント。レシピが随時追加されていくワクワク感も、本機の醍醐味だと思います」(山田)
「ここ数年でおうち時間が増えたなか、外食でトレンドメニューに触れる機会が減った人は多いはず。そういった層にもアプローチできるし、お洒落な料理はホームパーティーメニューとしても活躍してくれるので、この機能はいまの時代にすごくマッチしていると感じました」(小林)
【独自機能の調査のまとめ】各モデルの独自機能はどんなユーザーにオススメ?
●「電気圧力鍋ヘルシープラス」はカロリーを意識している人にオススメ
●「ホットクック」は、忙しいけど自分で料理を作りたい人に。また料理が好きで、下ごしらえが要る凝ったメニューやスイーツもよく作る人には特に重宝する
●「STAN.」は、休日などにまとめて冷凍常備菜を作ることが多い人にぴったり。
●「クックフォーミー」は、料理が好きで手作りしたいけどあまり時間がかけられない多忙な人にイチオシ
●「ライス&クッカー」は、定番から海外メニューまで、様々な料理を自動調理鍋で作りたいという人向け。
次回は「設置性・お手入れ」を調査していきます。
撮影/中田 悟