Vol.116-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは2022年のテレビ動向。日本における需要と、今年の傾向を解説する。
日本のテレビ市場における大手メーカーといえば、ソニー・パナソニック・シャープ・REGZA。いまは低価格製品も増え、そこで海外メーカーの進捗も著しいのだが、ことトレンドを作っているのは、この4社にLGエレクトロニクスを加えた5社である、と言って差し支えない。
LGエレクトロニクスは世界的な大手であり、日本でもハイエンド機種を積極的に販売。そして、世界中のテレビで使われる有機ELディスプレイパネルは、同じグループであるLGディスプレイが生産している。
そんなことから、自社パネルでリードするLGに対し、パネルの供給を受けて製品を製造する国内4社が「画質・音質」面でのトレンドを作り、そこに価格という軸を武器に海外メーカーが追ってくる……という図式になっている。
では今年のトレンドはなにか?
やはり重要なのはディスプレイパネルの変化だ。詳細はまた次回に述べるが、ディスプレイパネルの変化とは画質の変化にほかならず、ハイエンドのテレビに関しては購買意欲をそそる最も重要な要素と言える。
「テレビ離れ」というキーワードで語られがちだが、テレビは売れていないわけではない。2021年は600万台程度の販売だった模様だ。内閣府の「消費動向調査」でも、テレビの普及率は96%前後で変化がない。1990年代以前の「1部屋1台」の時代には戻りそうにないが、「リビングにひとつあるテレビ」の買い替えは進んでいるし、一家に1台のテレビなら購買意欲もある、ということだろう。
リビングにひとつということは、長く使う前提で良いものを買う場合が多い、ということでもある。同じく内閣府の「消費動向調査」によれば、テレビの平均買い替え間隔は「10年」。75%の家庭が「故障」を買い替えの理由に挙げており、「故障しない限り買い替えないものだから、できるだけ良いものを」という発想になる。
一方で「良いものを」と考えるときに、画質と同時に出てくるのが「サイズ」だ。これは都会と地方で考え方が大きく違う。都会の場合「サイズはそこそこで良いから、より画質が良いものを」という選択をする人が多いが、家のスペースに余裕がある地方の場合、「これまで持っていたテレビよりもサイズが大きいモノを」と考える人が多い。
結果として、「小さめで有機EL」は都市部、「大きめで液晶」は地方で選択されることが多くなっている。
今年の場合には、どちらでも同じように画質面での変化が起きており、見た目での判断がしやすい年かと思う。ただ、今後数年でさらに画質は成熟していくので、「今年が買い時」かはまた別の話。要は「熟したものを数年後に買う」のか、「変化がわかりやすいのでそのタイミングで買い替える」のかの違い、というところだろうか。
では、その「画質面での変化」とはどのような部分になるのか? そこは次回解説していく。
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