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2022/8/24 10:30

「おまけ付き菓子」の金字塔カルビープロ野球チップス50年の歩み

日本を代表するカード付きスナック菓子「プロ野球チップス」が発売50年目を迎えた。時代を超えて野球ファンを虜にしてきた“プロチ”の足跡を辿るとともに、担当者だけが知るエピソードや裏話をガッツリお届けする。

※こちらは「GetNavi」 2022年8月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

↑50年目を迎えた2022年の第1弾。1973年のプロ野球スナックで人気だった長嶋茂雄、王 貞治のカードがキラで復刻された

カードは2枚入り!

 

1973 → 2022

↑1971年に発売された「仮面ライダースナック」の後を継いで登場。当時のお菓子はチップスではなくサッポロポテトだった

 

【ミスタープロ野球チップス スペシャルインタビュー】

カードの種類と同じ2万通りのドラマがありました

半世紀に及ぶプロ野球チップスの歴史の、4分の1以上にわたって同製品を手掛けているカルビーの三井 剛さんを直撃。同氏は、これまでに発行された約2万種類のカードそれぞれの制作過程にドラマが存在していると言う。

 

カルビーマーケティング本部ポテトチップスチーム

三井 剛さん

1995年にカルビー入社後、グループ会社勤務を経て2009年より現職。配属されて以来、13年間ひとりで「プロ野球チップス」を担当。“ミスタープロ野球チップス”として社内外で認知されている。

 

「“その選手らしさ”が伝わるカードを作りたいです」(三井さん)

 

「プロ野球チップス」は、カード付きスナック菓子ブームの火付け役となった「仮面ライダースナック」(1971年発売)を引き継ぐ形で、73年7月に販売をスタート。今年で50年目を迎えたロングセラー商品です。当時、カルビーはまだポテトチップス事業に参入していなかったので、スナックは前年に発表したサッポロポテトで、これに人気のプロ野球選手のカードをおまけにして「プロ野球スナック(※1)」という商品名で発売を開始しました。その後、スナックをポテトチップスに変更したり、パッケージデザインやフレーバーを変えたりしながら今日に至っています。

 

私がプロ野球チップスの担当になったのは2009年。ある日、人事担当者から「三井くんはプロ野球とかJリーグとか好きで興味ある?」と声をかけられました。野球観戦が好きで、そのころよく球場へ足を運んでいたので、「はい」と答えたところ、すぐに配属が決まりました。

 

あれから13年、これまでに発行したカードは累計約2万種類、発行枚数は約18億枚に上りますが、そのうち私は約4000枚に携わっています。毎年3回の発売(第1弾3月、第2弾6月、第3弾9月)で、それぞれ120〜130種類(※2)制作するので、年間400種類近く。前年12月〜翌年2月に第1弾を、3〜5月に第2弾を、そして6月からは第3弾を、制作会社と相談しながら作ります。これらの制作課程で、苦労しながらも楽しいのが、カードにする選手のラインナップを決める作業です。

 

第1弾は前年の成績に期待度を加味しますが、商品の発売をシーズン開幕に合わせるため、前年の写真が中心となります。第2弾のラインナップは遅くとも3月下旬から検討する必要があり、オープン戦などの成績だけで活躍しそうな選手を選び出さなければなりません。話題のルーキーの台頭など、正直この第2弾が一番悩みます。今年でいえば、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手。第2弾の制作を進めていた4月10日に完全試合を達成し、そのシーンや最新の情報を使いたかったので急遽写真と紹介文を差し替えて、なんとか間に合わせました。第3弾の制作時は、すでにシーズン半ばに差し掛かっているので、各選手の成績を見ながらじっくり選びます。

 

特に思い出深いのが、現在メジャーリーグで大活躍中の大谷翔平選手。投打二刀流の彼が北海道日本ハムファイターズ在籍中は、絵柄をピッチングのシーンにするかバッティングのシーンにするか非常に悩みました。結局、カード1枚に投打2枚の写真を使用し、データ表記も従来とは異なる形式(投打の成績を列記)にするなどして対応しました。

 

私が担当する前は、「巨人が強い年はプロ野球チップスも売れる」というのが通例で、一番売れたのは長嶋茂雄監督初優勝の76年、次いで王 貞治監督初優勝の87年です。近年では選手やチームの好みは多様化し、ファンは各球団に分散しているので、カードを作る私たちとしては好きな選手やチームを“読みにくい”時代になっています。コロナ禍の影響でこの2年は売り上げが多少落ち込んでいましたが、今年は好調。佐々木朗希投手の活躍や、BIG BOSSのパフォーマンスなど、球界に明るいニュースが増えたことが影響しているのかもしれません。

 

発売50年目を迎えた今年は、これまで以上にカード制作も気合を入れています。第1弾(3月28日発売)では、73年当時に人気絶頂だったON(王 貞治、長嶋茂雄)カードをキラで復刻。第2弾(6月27日発売)では、現12球団監督の現役時代の復刻カード(※3)など、スペシャルなアイテムを用意しました。シーズンが佳境を迎える9月発売予定の第3弾はまだ制作中ですが、新旧のプロ野球ファンが楽しめる企画を考えていますので、ぜひご期待ください。

 

50年前も、現在も、そして未来も野球の魅力は不変だと思っています。ファインプレーのシーンだけでなく、“その選手らしさ”が最大限伝わるようなカードを、これからも作っていきたいです。

※1:発売当初の商品名。後に「ポテトチップス」「野球チームチップス」「野球チームスナック」などの名称を経て現在の「プロ野球チップス」に
※2:スペシャルボックスバージョンを入れると130〜140枚
※3:BIG BOSS(新庄剛志)は現在の写真を使用

 

【プロ野球チップスクロニクル】

パッケージも味も変わり続ける50年

50年の歴史のなかでも特にエポックメイキングなアイテムにフォーカス。パッケージデザインとともに、当時のエピソードを振り返る!

 

1973

パッケージに一本足打法のスラッガーのイラストが描かれた初代製品。中身はサッポロポテトで、商品名は「プロ野球スナック」だった。

 

1980

中身がコンソメパンチ味のポテトチップスになり、商品名も「ポテトチップス」に変更。イラストは美しいフォローが特徴的な関西のミスター風だ。

 

1985

これまでのリアル志向なイラストではなく、コミカルなキャラクターが描かれたパッケージ。商品名も「野球チームチップス」に変わった。

 

1986

ピッチャーだった前年から、バッティングするキャラクターのイラストになった。味は前年と同様「コンソメ」で、価格も30円をキープ。

 

1993

Jリーグの発足に伴い発売された「Jリーグチップス」が大ヒット。この年は中身を焼きもろこしとなり、商品名も「野球チームスナック」に。

 

1997

商品名を現在の「プロ野球チップス」に変更。球団のマスコットキャラクターがそれぞれ1体パッケージにデザインされた(全12種類)。

 

2005

「プロチ」となって以降、味は「うすしお味」に定着。パッケージデザインは12球団のマスコットキャラクターが均等に並ぶスタイルとなった。

 

2009

2007年に2枚付きとなったカードは08年に1枚へ戻り、09年にまた2枚になった。この年から現在までカード2枚付きが標準化している。

 

2013

前年のドラフト会議で1位指名された大谷翔平選手のカードが初めて作られた年。史上初めて投打両シーンを1枚に収めたカードが話題に。